ジャパンフーズは調整一巡、積極的な事業展開で収益拡大期待

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託製造の国内最大手である。持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、積極的な設備投資や低重心経営によるコスト削減などで競争力向上を推進している。22年3月期は受託製造数の増加、コスト削減効果、中国事業の好調などで黒字転換予想としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。22年4月移行予定の新市場区分については、21年12月20日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議している。また5年後をめどとする中長期の経営目標も発表している。株価は小動きで徐々に上値を切り下げる形だが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。

■飲料受託生産の国内最大手

 伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。

 新規ビジネス分野として、連結子会社のJFウォーターサービスが水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。

 収益面の特性として個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体において、夏場の上期(4~9月)は繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少する。このため同社も下期は生産量減少で営業損益が赤字となる収益構造だ。

 本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産体制が強みだ。飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。

■飲料受託生産の役割や存在感が高まる

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。

 また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まっている。

■「100年企業」目指して積極的設備投資

 中期経営計画「JUMP+プラス2021 次のステージへ」では、持続的成長を続ける「100年企業」実現に向けて、経営課題である「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」に対する取り組みを確実に進化させる方針としている。配当については、定額の安定配当(1株当たり27円)に加えて、期間業績に応じて配当性向20%を限度とする期末配当の増配を行う方針としている。

 なお21年12月に中長期の経営目標を発表し、5年後めどの定量目標値として、連結純利益10億円(単体ベースで7億円、子会社事業取込利益等で3億円)、1株当たり配当金52円、連結配当性向25.0%を掲げた。次期・中期経営計画は22年5月公表予定である。

 重点戦略としては、コアセグメント(国内飲料受託製造)における積極的設備投資による競争力向上、新規セグメント(東洋飲料、ウォーターネット、JFウォーターサービス)における既存事業拡充、新たなビジネスモデル創出(オペレーション・メンテナンス技術の活用・収益化など)を掲げている。また総合スクラップ&ビルド第2フェーズとして、工場建屋およびSOT缶ラインの新設を進めている。

■22年3月期黒字転換予想、23年3月期も収益拡大期待

 22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用、11月4日に営業利益と経常利益を下方修正)は、売上高が21年3月期比16.8%減の103億円で、営業利益が2億20百万円(21年3月期は7億50百万円の赤字)、経常利益が3億40百万円(同5億64百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が4億円(同4億98百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比26.0%減の56億90百万円、営業利益が11.6%増の7億24百万円、経常利益が18.2%増の8億27百万円、親会社株主帰属四半期純利益が21.3%増の6億22百万円だった。収益認識基準適用の影響額としては、売上高が20億32百万円減少、売上原価が20億39百万円減少、営業利益、経常利益および税金等調整前四半期純利益がそれぞれ6百万円増加した。

 国内飲料需要が第1四半期は回復基調だったが、第2四半期に新型コロナ第5波の影響で想定を下回ったため、全体として従来予想を下回ったが、前年比では2桁増益だった。収益認識基準適用の影響で売上高が大幅減収の形となり、コスト面では減価償却費が増加したが、国内飲料受託製造数が増加(前年比4.5%増の2151.9万ケース)し、低重心経営によるコスト削減や、中国事業の好調による事業取込利益の増加も寄与した。

 四半期純利益の前年比1億09百万円増益の要因別分析(概算)は、増益要因が低重心経営によるコスト削減で2億40百万円、事業取込利益の増加で70百万円、減益要因が受注低迷・償却費増加2億円としている。

 セグメント別利益(経常利益)は、国内飲料受託製造事業が9.7%増の6億85百万円、海外飲料受託製造事業(連結対象期間21年1月~6月)が98.2%増の1億25百万円、その他の事業が9.7%増の17百万円だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が31億13百万円で経常利益が5億77百万円、第2四半期は売上高が25億77百万円で経常利益が2億50百万円だった。季節要因で飲料の不需要期となる下期は赤字となる収益特性がある。

 通期予想は従来予想に対して営業利益を2億20百万円、経常利益を1億70百万円、それぞれ下方修正した。国内飲料需要の低迷で製造受託数の修正計画は3970万ケースとした。従来予想に対して160万ケース下方修正した。ただしコロナ禍の影響を強く受けた21年3月期実績の3280.4万ケースに対しては21.0%増加見込みとなる。

 従来予想を下方修正したが、前期比ではSOT缶ライン本格稼働による受注増加、コスト削減(低重心経営による変動費・固定費削減の更なる進捗)効果などで、大幅増益・黒字転換の見込みとしている。なお親会社株主帰属当期純利益は据え置いている。中国事業の好調による事業取込利益の増加に加えて、本社工場の総合スクラップ&ビルド計画に係る固定資産撤去費用引当金の一部取崩が計上される見込みだ。

 22年3月期は大幅増益・黒字転換予想である。さらに23年3月期は経済活動再開に伴う飲料需要の回復も予想される。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は調整一巡

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でスタンダード市場適合を確認し、21年12月20日開催の取締役会においてスタンダード市場選択申請を決議した。所定のスケジュールに従って手続を進める。

 株価は小動きで徐々に上値を切り下げる形だが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。1月14日の終値は1212円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS82円94銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の27円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1491円24銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約62億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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