JPホールディングスは売られ過ぎ感、22年3月期は再上振れの可能性

 JPホールディングス<2749>(東1)は総合子育て支援のリーディングカンパニーとして、子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進している。さらに新規領域への展開も推進する方針だ。22年3月期は一時的な特殊要因の影響で費用が増加するため小幅営業・経常減益予想としているが、効率化の進展も寄与して再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。なお2月10日に22年3月期第3四半期決算発表を予定している。

■総合子育て支援のリーディングカンパニー

 総合子育て支援のリーディングカンパニーである。保育園を中心に、子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進している。事業区分は、認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業を主力として、保育所向け給食請負事業、英語・体操・リトミック教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業なども展開している。

 21年3月期末の運営施設数は、保育園が212(認可保育園・公設民営が11、認可保育園・民設民営が177、認可外東京都認証保育所が19、認可外企業主導型保育事業が2、その他認可外保育園が4)、学童クラブが77、児童館が11、合計が301(20年3月期末は297)だった。首都圏を中心に展開している。また受入児童数は19年3月期末比258人増加の1万5581人だった。

 なお21年4月1日付で保育園5園(うち2園は東京都認証保育所から認可保育園に移行)、学童クラブ8施設、児童館1施設を新規開設している。

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。

■24年3月期経常利益35億円目標

 長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業500億円)に向けて、既存事業の改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。

 さらに中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、目標数値に24年3月期売上高352億円、経常利益35億円を掲げ、重点戦略として既存事業の収益改善、子育て支援の更なる質的向上、社会・事業環境の変化を捉えた新たな価値創造を推進している。

 既存事業の収益性・効率性向上では、デジタルを柱とした社会環境への対応、新たなプログラム(幼児学習プログラム、ダンス、アートなど)導入による受入児童数の拡大と競争優位性の確立、配置人数の適正化と運営オペレーションの効率化、小さな本部の実現、保育と学童の連携によるドミナント開設と学童・児童館の新規受託拡大などを推進する。

 なお収益性が悪化した施設については閉園(21年3月末に東京都認証保育所4園および企業主導型保育園1園を閉園、22年3月末に東京都認証保育所1園を閉園予定)を進めている。また経営資源の効率化を図るため、連結子会社の日本保育サービスが、同じく連結子会社のアメニティライフ(横浜市で保育所5園運営)を22年4月1日付(予定)で吸収合併する。

 新規領域への展開では、21年1月に資本業務提携して第1位株主となった学研ホールディングス<9470>との連携も強化し、新たな価値創造に向けたサービス・事業を開発・展開する。ノウハウを活用した外販ビジネスも強化する。

 21年6月には、保育園向け知育プログラムとして学研式指導システム「もじかずランド」の導入を開始した。21年7月にはアイフリークモバイル<3845>の連結子会社アイフリークスマイルズと、絵本アプリ「森のえほん館」のコンテンツを用いて家庭におけるデジタル絵本の受容性および利用動向に関する共同研究(期間21年8月1日~22年2月28日)に合意した。

 21年9月には子会社の日本保育総合研究所が神奈川県下を中心とした保育所等訪問支援事業を開始した。児童福祉法に基づいて、障害児が地域の中で差別されることなく、障害のない子どもたちとともに育ち、ともに学び合うことができるインクルーシブな社会の実現を目指す未来志向型の事業で、発達支援(療育)の専門知識のあるスタッフが、保育園・幼稚園・小学校など日常生活の場に定期的(月1~2回程度)訪問してサポートする。

 21年10月には、子会社ジェイキャストが新たな成長戦略を捉えた新規事業プログラム「保育園児向けダンスプログラム」を提供開始した。またガーデンライフスタイルメーカーのタカショー<7590>と協同で、こどもたちが「野菜を育てる楽しさ」と「野菜のおいしさ」を学べる食農・食育プログラム「VegTrug Kids」を開始した。

 会員制プラットフォームビジネスも強化する方針だ。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。21年11月には第1弾サービスとして、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始(22年4月予定)すると発表した。

■22年3月期小幅営業・経常減益予想だが再上振れの可能性

 22年3月期の連結業績予想は、保育事業において自治体から受け取る補助金収入(保育士の借上社宅に対する補助金など)の表示方法を従来の営業外収益から売上高に変更したため8月12日に売上高と営業利益をそれぞれ5億円上方修正、さらに第2四半期累計の好調を受けて11月11日に売上高を2億円、営業利益を4億30百万円、経常利益を4億60百万円、親会社株主帰属当期純利益を3億10百万円それぞれ上方修正した。

 修正後の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年3月期(補助金収入の表示方法変更組替後)比1.2%増の339億円で、営業利益が4.5%減の27億30百万円、経常利益が6.4%減の27億60百万円、親会社株主帰属当期純利益が園減損損失一巡で3.3倍の17億60百万円としている。配当予想は60銭増配の4円50銭(期末一括)である。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比3.4%増の168億14百万円、営業利益が16.7%増の10億95百万円、経常利益が16.3%増の11億11百万円、親会社株主帰属四半期純利益が園減損損失一巡も寄与して28.6%増の7億08百万円だった。

 売上面は、期初時点ではコロナ禍の影響で受入児童数が減少したが、新規施設開設(保育園3園、学童クラブ・児童館8施設)に加えて、デジタルを活用した園見学、オンラインプログラム(英語・体操・リトミック・ダンスなど)の実施、新たな幼児学習プログラムの導入など「選ばれる園・施設づくり」としての取り組み効果で、期中での受入児童数増加につながった。21年9月末時点の運営施設数は合計303施設(保育園211園、学童クラブ81施設、児童館11施設)となった。

 利益面は、新人事制度導入に伴う賞与支給期間変更による賞与引当金の増額、システム導入に伴う関連費用の増加など、一時的な特殊要因の影響で費用が増加したが、受入児童数増加による増収効果に加えて、効率的な施設運営への取り組みの効果も寄与して2桁増益だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が83億71百万円で営業利益が1億78百万円、第2四半期は売上高が84億43百万円で営業利益が9億17百万円だった。

 通期は、新人事制度導入やシステム導入など一時的特殊要因の影響で営業・経常減益予想としている。ただし受入児童数の増加などで従来予想に対して減益幅が縮小する見込みとなった。更なる収益改善に向けて、各施設の人員再配置などによる効率的な施設運営、採用活動の見直し、各種備品の発注体制の見直しなども推進する。効率化の進展も寄与して通期予想は再上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への状況に関する第一次判定結果としてプライム市場適合を確認し、21年10月25日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。

 株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。1月17日の終値は231円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS20円12銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想4円50銭で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS114円42銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約203億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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