ミロク情報サービスは売られ過ぎ感、クラウドサービス・サブスクモデルに変革して収益拡大基調

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売・サービスを展開し、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォームの構築を目指している。22年3月期は先行投資などで営業・経常減益予想としているが上振れの可能性が高いだろう。クラウドサービス・サブスクモデルへの変革を推進して収益拡大基調を期待したい。なお4月4日移行予定の新市場区分については、1月11日付で東京証券取引所より公表された選択結果のとおりプライム市場に移行する。株価は地合い悪化の影響で昨年来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。指標面の割安感も強めている。売り一巡して出直りを期待したい。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 21年3月期の売上高構成比は、システム導入契約売上高57%(システム導入契約時のハードウェア11%、ソフトウェア33%、システム導入支援サービスなどのユースウェア13%)、サービス収入36%(会計事務所向け総合保守サービスTVS7%、ソフト使用料7%、企業向けソフトウェア運用支援サービス16%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入4%、サプライ・オフィス用品など継続的な役務の対価2%)、その他8%だった。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。なお21年11月には、中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」が、矢野経済研究所「2021ERP市場の実態と展望」で09年から12年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得したと発表している。

 収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、21年3月期の新規企業向け売上高比率は5.2ポイント上昇して34.0%となった。

 またAPI契約またはスクレイピング契約により、同社の製品・サービスから連携可能な金融機関は、21年2月時点で国内金融機関1270のうち1118(カバー率88.0%)に達している。

■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進

 中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期の売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。

 既存のERP事業では、デジタルマーケティングを取り込み、サブスクモデル比率を高めて安定収益源確保・継続的成長を実現する。新規事業では、デジタル・非対面時代に誰もが簡単にDXを実現できる統合型DXプラットフォームの国内NO.1を目指す。

 基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。

 クラウドサービス・サブスクリプションモデルへの変革を推進するとともに、企業の売上拡大・企業価値向上を支援するため、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月には中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」の販売を開始した。AI機能を拡充し、業務のDX推進をサポートする。

 21年9月にはクラウド型ワークフローサービス「MJS DX Workflow」の提供を開始した。中堅企業向けERPシステム「Galileopt NX―Plus」とリアルタイムでデータ連携し、中堅企業の業務効率化を支援する。

 21年12月には、連結納税制度から移行されるグループ通算制度(令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用)に対応したシステムを、22年10月から提供開始すると発表している。グループ通算制度に対応した申告書の作成業務効率化を支援する。

■M&A・アライアンスを積極活用

 20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化、21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。

 21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月には、税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携した。

 21年9月にはアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。AIを軸としたDX分野の新製品・サービスの開発を目指す。またインフォマート<2492>の電子請求システム「BtoBプラットフォーム請求書」とAPI連携した。

■社会全体のDXを推進

 なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。

 20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。

■22年3月期営業・経常減益予想だが上振れの可能性

 22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用だが影響軽微、増減率は適用前の前期実績との比較、pring社株式売却益計上に伴って7月13日に親会社株主帰属当期純利益を14億30百万円上方修正)は、売上高が21年3月期比9.8%増の374億円、営業利益が11.0%減の40億30百万円、経常利益が11.3%減の40億円、親会社株主帰属当期純利益が43.5%増の38億10百万円としている。配当予想は21年3月期と同額の38円(期末一括)である。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.6%増の177億81百万円、営業利益が5.1%減の23億62百万円、経常利益が5.2%減の23億73百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.2倍の30億27百万円だった。特別利益に関係会社株式売却益20億87百万円を計上した。

 従来予想との比較では、複数の子会社の事業がコロナ禍による需要減退の影響を受けたため売上高が従来予想を4億18百万円下回ったが、主力のERP製品の販売やサービス収入が好調に推移して営業利益は5億32百万円、経常利益は6億03百万円、親会社株主帰属四半期純利益は5億87百万円、それぞれ従来予想を上回った。

 前年同期との比較では、新規顧客開拓が進展し、主力ERP製品の販売やサービス収入が好調に推移して増収だが、新製品リリースに伴うソフトウェア資産償却負担の増加や、人員増に伴う人件費の増加など、先行投資の影響で営業・経常減益だった。ただし従来予想を上回り小幅営業・経常減益で着地した。

 収益認識基準適用による影響額は、売上高が1億48百万円減少、売上原価が1億52百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益が3百万円減少だった。影響は軽微である。

 システム導入契約売上高は前年同期比3.2%増の99億30百万円(ハードウェアが10.0%減の16億48百万円、ソフトウェアが5.1%増の59億82百万円、ユースウェアが9.6%増の22億99百万円)だった。中堅・中小企業向けERP製品(Galileopt、MJSLINK)の販売が好調だった。新規企業向けの売上高は5.8%増で、売上高比率は30.1%だった。

 サービス収入は6.6%増の63億24百万円(会計事務所向けTVSが2.2%増の12億55百万円、ソフト使用料収入が16.5%増の12億60百万円、企業向けソフトウェア運用サービスが6.7%増の27億61百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービスが3.7%増の7億52百万円、サプライ・オフィス用品が4.6%減の2億94百万円)だった。企業向け統合フロントクラウドサービスや小規模事業者向け会計クラウドが伸長し、ERP製品のサブスクリプションモデルの推進も寄与した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が87億47百万円で営業利益が9億39百万円、第2四半期は売上高が90億34百万円で営業利益が14億23百万円だった。

 通期予想は据え置いた。第2四半期累計の利益が従来予想を上回り、通期予想に対する進捗率も売上高が47.5%、営業利益が58.6%、経常利益が59.3%、親会社株主帰属当期純利益が79.5%と順調だったが、コロナ禍の影響の不透明感などを考慮した。

 売上高の計画は、システム導入契約売上高が21年3月期比5.8%増の204億50百万円、サービス収入が1.3%増の123億28百万円、その他がM&Aも寄与して80.4%増の46億21百万円としている。中堅・中小企業向け新ERPシステム「MJSLINK DX」を中心に売上増を見込むが、ソフトウェア提供形態のシフトや先行投資による販管費の増加などで営業・経常減益予想としている。

 ただし保守的だろう。第2四半期累計の利益が計画を上回り、進捗率も順調であることを勘案すれば、通期も上振れの可能性が高いだろう。クラウドサービス・サブスクモデルへの変革を推進して収益拡大基調を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 なお22年4月4日移行予定の新市場区分については、22年1月11日付で東京証券取引所より公表された選択結果のとおりプライム市場に移行する。

 株価は地合い悪化の影響で昨年来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。指標面の割安感も強めている。売り一巡して出直りを期待したい。1月19日の終値は1243円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS125円65銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の38円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS655円66銭で算出)は約1.9倍、時価総額は約433億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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