神鋼商事は上値試す、22年3月期大幅増益予想

 神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼製品・原料や非鉄金属関連などを扱う商社である。KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社として、グローバルビジネスの深化やSDGsを意識した環境リサイクルビジネスの拡大を追求している。22年3月期は需要が回復基調で大幅増益予想としている。さらに3回目の上振れの可能性がありそうだ。収益拡大基調を期待したい。株価は21年10月の昨年来高値圏から一旦反落したが、大きく下押すことなく調整一巡して切り返しの動きを強めている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社

 神戸製鋼所<5406>系で、鉄鋼製品(鋼板製品、線材製品など)、鉄鋼原料(輸入鉄鋼原料、合金鉄、コークスブリーズなど)、非鉄金属(銅製品、アルミ製品、非鉄金属地金・スクラップなど)、機械・情報(ゴム・タイヤ機械、製鉄・非鉄機械、化学機械、環境関連機器、電池用材料、液晶用材料、PC部品など)、溶接材料・機器(溶接材料、溶接関連機器、溶接ロボットシステムなど)を扱う商社である。

 M&Aも積極活用し、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社として、グローバルビジネスの深化、SDGsを意識した環境リサイクルビジネスの拡大、海外拠点主導のビジネス開拓、DX時代に適したビジネスモデルの創出・提案、北米・アジアでのサプライチェーンの深化と創造、事業投融資の加速、製造拠点の設備投資などの戦略を推進している。

 21年3月期のセグメント別経常利益構成比は鉄鋼が15%、鉄鋼原料が8%、非鉄金属が46%、機械・情報が30%、溶材が4%、その他が▲2%だった。鉄鋼、鉄鋼原料、非鉄金属は、取扱数量と市況の影響を受けて収益が変動しやすい特性がある。

■重点分野はEV・自動車軽量化と資源循環型ビジネス

 新中期経営計画(22年3月期~24年3月期)では、EV・自動車軽量化と資源循環型ビジネスを重点分野として「明日のものづくりを支え社会に貢献する商社」を目指し、目標数値には最終年度24年3月期の経常利益95億円(鉄鋼41億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属23億円、機械・情報13億円、溶材5億円)以上、ROE9%以上を掲げている。

 投資額は3年合計200億円としている。内訳は自動車向け鋼材加工事業(中国、北米)に20億円、環境リサイクル事業(日本、東南アジア)に30億円、アルミ加工事業(北米、中国、東南アジア)に80億円、M&Aによる流通再編(日本、東南アジア)に20億円、その他・海外チャンネル拡大・サプライチェーン強化に50億円としている。

 鉄鋼は海外(中国、米国など)拡販や海外現地需要取り込み、鉄鋼原料は鉄スクラップとバイオマス燃料の取り扱い拡大、非鉄金属は半導体・自動車向け部材やエアコン用銅管の取り扱い拡大、機械・情報は建設機械部品の海外取り扱い拡大、溶材はM&Aによる流通再編や販売機能の強化を推進する。

 なお日新イオン機器(NIC)から、半導体・FPD用イオン注入装置の製造を手掛ける中国・NIHY(揚州)の株式を買い取り、社名を神商精密器材(揚州)に変更(社名登録21年9月)して子会社化した。

 21年11月には、子会社の神鋼商事メタルズがベトナムにアルミ切断加工販売会社を設立(22年4月稼働予定)すると発表した。また子会社のSCWが21年12月31日付で、日本エア・リキード合同会社から大半の溶接関連資機材事業を譲り受けた。

 株主還元の基本方針は、財務体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、連結配当性向30%を目標に安定的な配当を維持するとしている。

 またサステナビリティ戦略として、リサイクル事業(鉄スクラップのグローバル拡販)、バイオマス事業(バイオマス燃料の安定供給、供給事業化)、雑電線屑の再資源化などを推進している。

■22年3月期大幅増益予想、さらに3回目の上振れの可能性

 22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用のため売上高の前期比増減率は非記載、利益への影響なし、7月30日に売上高、利益とも上方修正、10月29日に売上高を下方修正、利益を2回目の上方修正)は、売上高が4590億円、営業利益が21年3月期比93.1%増の86億円、経常利益が2.0倍の82億円、親会社株主帰属当期純利益が2.9倍の64億円としている。配当予想(7月30日に第2四半期末35円および期末35円の合計70円上方修正)は、21年3月期比120円増配の170円(第2四半期末85円、期末85円)としている。

 第2四半期累計は売上高が2241億76百万円、営業利益が前年同期比3.0倍の40億86百万円、経常利益が2.8倍の45億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益が7.9倍の38億58百万円だった。特別利益には負ののれん発生益1億83百万円を計上し、特別損失では投資有価証券評価損が4億57百万円減少した。

 取扱量増加や価格上昇などで従来予想を上回る大幅増益だった。従来予想に対して売上高は138億23百万円下回ったが、営業利益は1億86百万円、経常利益は4億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益は9億58百万円、それぞれ上回った。

 セグメント別の経常利益は、鉄鋼が鋼板製品および線材製品の国内向けの取扱量増加や価格上昇などで5.8倍の24億67百万円、鉄鋼原料が海外子会社の収益悪化などで92.9%減の7百万円、非鉄金属が銅製品・アルミ製品・非鉄原料の数量増加で3.5倍の16億92百万円、機械・情報が圧延設備や半導体関連装置などの減少で47.4%減の3億24百万円、溶材が自動車・建設機械向け溶接材料の取扱量増加などで3.5倍の1億07百万円だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1139億44百万円で経常利益が23億26百万円、第2四半期は売上高が1102億32百万円で経常利益が24億80百万円だった。

 第2四半期累計の利益が従来予想を上回ったことを受けて、通期利益予想を上方修正(売上高を240億円下方修正、営業利益を8億円、経常利益を9億円、親会社株主帰属当期純利益を13億円それぞれ上方修正)し、修正後のセグメント別経常利益計画は、鉄鋼が21年3月期比30億円増加の36億円、鉄鋼原料が1億円増加の4億円、非鉄金属が9億円増加の28億円、機械・情報が1億円減少の11億円、溶材が2億円増加の3億円としている。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.8%、営業利益が47.5%、経常利益が55.6%、純利益が60.3%である。世界的に経済活動再開に伴って需要が回復基調であり、価格上昇なども勘案すれば、通期利益予想は3回目の上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株価は上値試す

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でプライム市場への適合を確認し、21年10月29日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議した。

 株価は21年10月の昨年来高値圏から一旦反落したが、大きく下押すことなく調整一巡して切り返しの動きを強めている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。1月20日の終値は3275円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS722円77銭で算出)は約5倍、今期予想配当利回り(会社予想170円で算出)は約5.2%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS6295円46銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約290億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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