- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- アルコニックスは調整一巡、収益拡大基調
アルコニックスは調整一巡、収益拡大基調
- 2022/1/28 08:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東1、新市場区分プライム)は、非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。22年3月期は需要回復して大幅増益予想としている。自動車等の一時的減産など不透明感があるものの、M&A効果も寄与して収益拡大基調だろう。4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場に移行する。株価は地合い悪化の影響で戻り一服の形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。なお2月9日に22年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」
非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
■製造が利益柱
報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。
21年3月期のセグメント別構成比は、売上高では商社流通が78%(電子機能材28%、アルミ銅50%)で製造が22%(装置材料12%、金属加工10%)だが、経常利益では商社流通が39%(電子機能材30%、アルミ銅9%)で製造が61%(装置材料6%、金属加工55%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略によって、利益面では製造、特に金属加工が柱に成長している。
■積極投資で「環境親和型ビジネス」の創出にも挑戦
中期経営計画(22年3月期~24年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、24年3月期の目標値に経常利益96億円超、当期純利益67億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0倍程度としている。3年間の投資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円としている。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する。さらに資源循環型・環境配慮型社会の発展に貢献し、新たな「環境親和型ビジネス」の創出にも挑戦するとしている。
18年12月摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。
20年3月子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。
21年12月には、精密コネクタ金属端子部品のプレス加工などを展開する電子部品材料メーカーのジュピター工業(岩手県宮古市)を子会社化すると発表した。株式取得および連結子会社化は22年4月20日予定である。
21年8月に発表したCVCファンド(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合)については、所定の手続が完了したため21年12月に投資事業を開始した。21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用する。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す。
なお21年11月に公募増資を発表した。調達資金(概算約76億円)はグループの設備投資、CVCファンドを通じた投資、過去のM&Aにおける買収資金借入の返済などに充当する。
■22年3月期は3回目の上振れの可能性
22年3月期連結業績予想(収益認識基準適用で前期比増減率非掲載だが利益に影響なし、8月6日に上方修正、11月5日に2回目の上方修正)は売上高が1520億円、営業利益が87億円、経常利益が90億円、親会社株主に帰属する当期純利益が62億円としている。
新基準へ組み替え後の21年3月期売上高実績(1056億87百万円)との比較で43.8%増収となり、営業利益は54.8%増益、経常利益は57.4%増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2.2倍増益となる。配当予想(9月28日に第2四半期末3円、期末3円、合計6円上方修正)は、21年3月期比6円増配の48円(第2四半期末24円、期末24円)としている。
第2四半期累計は、売上高が745億72百万円、営業利益が56億21百万円、経常利益が60億60百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が45億25百万円だった。新基準へ組み替え後の前年同期売上高(461億03百万円)との比較で61.8%増収となり、営業利益は2.3倍増益、経常利益は2.4倍増益、親会社株主に帰属する四半期純利益は3.7倍増益だった。半導体・IT関連が好調に推移し、自動車関連の需要も急回復した。営業外収益では受取配当金が増加し、特別利益では投資有価証券売却益が増加した。
セグメント別経常利益は、商社流通が3.0倍の34億04百万円(電子機能材が2.7倍の19億39百万円、アルミ銅が3.5倍の14億64百万円)で、製造が96.8%増の26億39百万円(装置材料が8億57百万円増加して7億38百万円に黒字転換、金属加工が30.2%増の19億円)だった。商社流通は半導体・IT・自動車関連を中心に取り扱いが増加した。製造は精密研削加工部品が顧客側の生産調整の影響で減少したが、全体として自動車関連を中心に需要回復した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高369億44百万円、営業利益30億46百万円、経常利益34億87百万円、第2四半期は売上高376億28百万円、営業利益は25億75百万円、経常利益25億73百万円だった。
通期セグメント別経常利益の計画は、商社流通が2.2倍の49億80百万円(電子機能材が68.3%増の28億60百万円、アルミ銅が4.0倍の21億20百万円)、製造が15.1%増の40億20百万円(装置材料が3.6倍の12億円、金属加工が10.7%減の28億20百万円)としている。金属加工は精密金属プレス部品が自動車向けに好調だが、半導体不足の影響で半導体実装機向け精密研削加工部品の出荷調整を見込んでいる。
半導体・部品不足による自動車・家電・産業機械等の各方面における一時的減産の動きが不透明として、2回目の上方修正は小幅にとどめたが、修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.1%、営業利益が64.6%、経常利益が67.3%、親会社株主に帰属する当期純利益が73.0%と高水準である。通期予想は3回目の上振れの可能性が高いだろう。収益拡大基調を期待したい。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は調整一巡
株価は公募増資発表を嫌気した21年12月の昨年来安値圏から切り返している。地合い悪化の影響で戻り一服の形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。1月27日の終値は1272円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS247円32銭で算出)は約5倍、今期予想配当利回り(会社予想の48円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1709円55銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約394億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)