マルマエは利益確定売り一巡、22年8月期大幅増収増益予想、さらに上振れの可能性

マルマエ<6264>(東1、新市場区分プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開している。受注残高は過去最高を更新して拡大基調である。22年8月期大幅増収増益予想としている。さらに上振れの可能性が高く収益拡大基調だろう。なお1月17日に22年8月期の設備投資計画の増額を発表している。急増する受注に対応するため生産能力を増強する。また4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場に移行する。株価は地合い悪化の影響で上場来高値圏から急反落の形となったが、利益確定売りが一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工およびEBWを展開

半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開している。

作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。

■ESG経営を推進

中期事業計画の数値目標は22年8月期売上高70億円、営業利益20億円、資産ベースROIC18%、負債ベースROIC14%、配当性向30%以上、年間最低配当額10円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。設備投資の計画(CFベース)は増産投資および自社使用目的の太陽光発電投資を中心に、20年8月期3.4億円、21年8月期9.1億円、22年8月期10億円としている。

売上拡大戦略として半導体分野では、市場成長も背景として既存顧客からの受注品種拡大、デバイスメーカーの稼働向上に伴う消耗品の受注拡大を見込み、新規顧客獲得も推進する。既存顧客の売上に関しては20年8月期から22年8月期で約26%成長を目指す。新規顧客の売上に関しては2社からの受注を獲得(1社目は20年8月期量産開始、2社目は試作品提供開始)しており、20年8月期の1.2億円から22年8月期には12億円(1社目8億円、2社目4億円)を目標とする。

FPD分野の売上は20年8月期の10.6億円から、22年8月期に16億円を目指す。市場環境として21年8月期は市場縮小、22年8月期に高精細化投資で再拡大を想定し、EBWを活用した新規顧客獲得や、同業他社の撤退などによる市場シェア拡大を見込んでいる。

その他分野ではEBWに続く新技術習得による新分野開拓、リハビリ機器の研究開発などを推進する。

また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。再生可能エネルギー活用によるCO2削減を推進するため、30年8月期に年間使用量50%以上を太陽光で自社発電する計画(30年8月期までに合計424百万円を設備投資)としている。さらに、職場環境向上の取り組みではワークライフバランスを整え、女性が継続して働ける職場づくりを目指す方針だ。

21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明した。本提言に沿った情報開示・発信を行うことで気候関連への取り組みを強化する。

■21年12月度の受注残高は前年比193.4%増で過去最高

月次受注残高(速報値ベース)を見ると、21年12月度は、半導体分野が17億32百万円(前月比6.5%増、前年同月比164.8%増)、FPD分野が7億40百万円(前月比4.7%減、前年同月比259.6%増)、その他分野が1億19百万円、合計が25億91百万円(前月比7.5%増、前年同月比193.4%増)となった。

合計ベースの受注残高は27ヶ月連続で前年同月比プラスだった。出荷検収が好調に推移するなか、受注が出荷検収を大幅に上回り、受注残高は過去最高を更新する形で推移している。その他分野では新たに太陽電池製造装置向けを受注した。

今後の動向として、半導体分野はロジック向けを中心に好調な受注が継続し、FPD分野も中小型OLED向けを中心に受注好調が継続する見込みとしている。その他分野では太陽電池製造装置向けの引き合いが継続している。

■22年8月期大幅増収増益予想、さらに上振れの可能性

22年8月期の業績(非連結、収益認識基準適用だが影響軽微)予想は、売上高が21年8月期比34.1%増の72億円、営業利益が49.1%増の18億円、経常利益が48.3%増の17億80百万円、当期純利益が38.0%増の12億45百万円としている。配当予想は21年8月期比12円増配の36円(第2四半期末18円、期末18円)としている。

受注が好調に推移して大幅増収増益・過去最高更新予想としている。分野別売上高の計画は半導体分野が40.0%増の59億08百万円、FPD分野が27.7%増の10億70百万円、その他分野が32.1%増の2億22百万円としている。

第1四半期は、売上高が前年同期比76.1%増の19億38百万円、営業利益が3.0倍の5億95百万円、経常利益が3.0倍の5億92百万円、四半期純利益が3.1倍の4億22百万円だった。受注が好調に推移して大幅増収増益だった。収益認識基準適用の影響額として、売上高と売上原価がそれぞれ12百万円減少したが影響軽微である。

全体の受注高は24.8%増の24億96百万円(半導体分野が2.1倍の18億73百万円、FPD分野が4.0倍の6億19百万円、その他分野が3百万円)で、売上高は半導体分野が61.6%増の14億44百万円、FPD分野が2.3倍の3億70百万円、その他分野が63百万円だった。半導体分野はメモリ向け需要に加えてロジック向け需要も急拡大した。FPD分野は大型真空チャンバー(真空容器)の受注拡大が牽引した。

コスト面では材料費、外注加工費、労務費などが増加したが、増収効果・稼働率上昇効果で吸収し、受注損失引当金やたな卸資産評価減の減少も寄与した。売上総利益率は40.7%で10.4ポイント上昇した。販管費は44.9%増加したが、販管費比率は10.0%で2.1ポイント低下した。

通期予想は据え置いている。市場シェア拡大に向けた設備投資(合計月産7億円を超える生産キャパシティの実現)や、採用投資(採用増に加えて労働分配率も向上方針)を積極的に実行するため、中期経営計画の22年8月期営業利益目標値20億円に対して若干未達の予想としている。なお1月17日に22年8月期の設備投資計画の増額を発表している。急増する受注に対応するため生産能力を増強する。

ただし保守的だろう。通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高26.9%、営業利益33.1%、経常利益33.3%、当期純利益33.9%と高水準である。受注残高は過去最高を更新して拡大基調である。通期予想は上振れの可能性が高く収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上保有株主対象

株主優待制度は、毎年8月末日現在6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象として、クオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は利益確定売り一巡

株価は地合い悪化の影響で上場来高値圏から急反落の形となったが、利益確定売りが一巡して戻りを試す展開を期待したい。1月28日の終値は2332円、今期予想PER(会社予想のEPS97円30銭で算出)は約24倍、今期予想配当利回り(会社予想の36円で算出)は約1.5%、前期実績PBR(前期実績のBPS494円20銭で算出)は約4.7倍、時価総額は約304億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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