ヤマシタヘルスケアホールディングスは調整一巡、22年5月期減益予想だが上振れ濃厚

 ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東1、新市場区分スタンダード)は、九州を地盤とする医療機器専門商社を中心にヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。22年5月期はコロナ禍の影響などで減益予想としているが、第2四半期累計が大幅増益となり、各利益は通期予想を超過達成している。通期予想は上振れが濃厚だろう。収益拡大を期待したい。4月4日移行予定の新市場区分についてはスタンダード市場に移行する。株価は地合い悪化も影響して反落したが調整一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

 事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。トムスは透析分野を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、イーピーメディックは整形外科領域における体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・販売、アシスト・メディコは医療機関の経営支援・病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングを展開している。

 21年11月には、病院向け予約ソリューションなどを展開しているイーディライト(従来は山下医科器械の持分法適用関連会社)の株式取得を完了し、連結子会社化(山下医科器械が保有していた全株式34%、およびEPARKが保有している株式のうち32%を取得して株式所有割合66%)した。また22年2月17日にはITやRPAなどの新技術を駆使して新たな製品・サービスを開発する子会社エムディーエックスを設立する。

 21年5月期のセグメント別売上構成比は医療機器販売業が99%、医療機器製造・販売業が1%、医療モール事業が0%、営業利益構成比(調整前)は医療機器販売業が96%、医療機器製造・販売業が4%、医療モール事業が0%だった。医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い特性がある。

 なお21年6月にはSDGsへの取り組みの一環として、独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。また21年8月にはESG基本方針をリリースした。地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。

■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進

 新中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値に最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。

 主要施策としてグループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を推進する。

 医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。

 また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始した。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始した。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。

■22年5月期減益予想だが上振れ濃厚

 22年5月期連結業績予想(収益認識基準適用のため売上高増減率は非掲載、利益への影響はなし)は、売上高が498億38百万円(収益認識基準換算後で比較した場合は21年5月期比約8.0%減)、営業利益が44.0%減の5億42百万円、経常利益が43.0%減の5億84百万円、親会社株主帰属当期純利益が48.9%減の3億46百万円としている。配当予想は49円減配の41円(期末一括)としている。

 第2四半期累計は売上高が273億35百万円、営業利益が前年同期比55.2%増の6億63百万円、経常利益が52.3%増の7億01百万円、親会社株主帰属四半期純利益が52.9%増の4億71百万円だった。

 コロナ禍の影響が和らいで実質的に増収(従来基準によった場合の売上高は前年同期比10.7%増の359億92百万円)となり、人件費、販売促進費、物流費などの増加を吸収して各利益は大幅増益だった。なお収益認識基準適用で売上高と売上原価がそれぞれ86億56百万円減少している。

 医療機器販売業は売上高が272億43百万円(従来基準によった場合の売上高は前年同期比11.2%増の358億98百万円)で、営業利益(全社費用等調整前)が39.7%増の10億73百万円だった。コロナ禍の影響が和らいで医療需要が回復傾向となり、主力商品の販売が好調だった。従来基準によった場合の分野別売上高は一般機器分野が26.9%増の62億55百万円、一般消耗品分野が6.6%増の119億47百万円、低侵襲治療分野が11.9%増の86億95百万円、専門分野が1.6%増の57億55百万円、情報・サービス分野が19.6%増の32億43百万円だった。

 医療機器製造・販売業は売上高が1億36百万円で営業利益が90.6%減の3百万円、医療モール事業は売上高が34百万円で営業利益が0百万円だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が128億85百万円で営業利益が2億02百万円、第2四半期は売上高が144億50百万円で営業利益が4億61百万円だった。医療機関の設備投資関連で第2四半期と第4四半期の構成比が高くなる傾向がある。

 通期連結業績予想は据え置いている。コロナ禍の影響(取引先医療機関における手術や検査・処置症例の減少に伴う消耗品の販売減少)が継続し、前期に発生したコロナ対策補助金による一時的なコロナ関連商品の需要継続が見込めないため減収減益予想としている。

 ただし第2四半期累計の進捗率は売上高54.8%、営業利益122.3%、経常利益120.0%、親会社株主帰属当期純利益136.1%で、各利益は通期予想を超過達成している。通期予想は上振れが濃厚だろう。収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は5月末の株主対象

 株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化も影響して反落したが調整一巡感を強めている。戻りを試す展開を期待したい。2月1日の終値は1964円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS135円69銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の41円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2969円03銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約50億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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