【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ヒューマンウェブは中期成長力を評価してモミ合い上放れ期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

ヒューマンウェブ<3224>(東マ)は国内最大のオイスターバー(牡蠣を主体とするレストラン)チェーンを展開し、陸上養殖によるウイルスフリー牡蠣の事業化も目指している。株価は15年3月IPO後の目先的な売り買いが一巡し、6月以降は3000円~3500円近辺でモミ合う展開だ。16年3月期減益予想は織り込み済みであり、中期成長力を評価して上放れの展開が期待される。

■牡蠣ビジネスの六次産業化を目指す

00年4月設立で、15年3月東証マザーズに新規上場した。オイスターバー(牡蠣を主体とするレストラン)を経営する直営店舗事業を主力として、安全性の高い牡蠣を安定供給する卸売事業を子会社の日本かきセンター、牡蠣の種苗生産・養殖事業を子会社の中尾水産テクノロジーが展開している。

牡蠣の種苗・生産・加工から卸売・小売までのバリューチェーンを構築し、牡蠣ビジネスの六次産業化を目指している。安全で高品質の牡蠣「スペシャリティ・オイスター」を提供していることが強みで、海洋深層水の清浄性を活用した浄化システムも開発している。

主力の直営店舗事業では、百貨店や商業施設などを中心に「ガンボ&オイスターバー」「シュリンプ&オイスターバー」「フィッシュ&オイスターバー」など複数ブランドによる飲食店チェーンを運営している。

15年4月末時点で東京、神奈川、千葉、茨城、愛知、大阪、兵庫、福岡に直営で11ブランド、合計28店舗を展開し、国内最大のオイスターバーチェーンである。なお15年3月期の既存店売上高は前年比5.0%増加(客数が同2.1%増加、客単価が同2.9%増加)で6期連続の増加となった。

子会社の日本かきセンター(07年9月設立)は、自社浄化施設である広島(呉)センターで、紫外線殺菌による牡蠣の浄化安全加工と卸売事業を行っている。卸売事業の取引先件数は15年3月期に1000店舗を突破した。

さらに海洋深層水の特徴である「清浄性」に着目し、14年7月に富山(入善)センターを設立して、海洋深層水による牡蠣の浄化安全加工を行う新たな試み(特許出願中)をスタートさせている。

子会社の中尾水産テクノロジー(愛媛県、14年3月設立)は、岩牡蠣の卵を人工的に生産して稚貝を育てる種苗生産、および海面養殖事業を展開している。さらに今後は真牡蠣の種苗および養殖も展開する予定としている。

■陸上養殖で「ウイルスフリー牡蠣」の事業化を目指す

中期経営計画では16年3月期~17年3月期を戦略的投資フェーズと位置付け、目標数値には18年3月期売上高78億円、営業利益5億円を掲げている。さらに参考値として20年3月期に売上高126億円、営業利益16億円を目指している。

成長加速に向けた事業戦略としては、既存の直営店舗事業と卸売事業の着実な成長・拡大に加えて、新規事業として、ウイルスフリー牡蠣の陸上養殖事業の早期事業化と、牡蠣加工工場の稼働およびコンシューマー市場への本格参入を掲げている。

沖縄久米島研究所の牡蠣陸上養殖実験施設では、海洋深層水と微細藻類を利用して陸上プラントで養殖する「ウイルスフリー牡蠣」の生産・事業化を目指し、東京大学と共同で海洋深層水を利用した微細藻類の連続大量培養技術の確立に取り組んでいる。

また岩手県大槌町に、紫外線殺菌による浄化安全加工を行う岩手牡蠣加工工場を新設して、牡蠣サプリメントなどの高付加価値商品を開発・販売する健康食品事業や牡蠣加工食品事業も推進する予定だ。東北大学と連携して牡蠣栄養食品の開発に取り組んでいる。

7月2日には、沖縄県の新産業研究開発支援事業に、当社が沖縄県島尻郡久米島町において進めている牡蠣の陸上養殖に係る培養研究が採択されたと発表した。研究内容は牡蠣の陸上養殖事業化に向けて欠かせない前工程の「微細藻類の高機能大量培養と凍結保存法の開発」である。補助金額は最大約24百万円、補助期間は16年3月15日までとしている。

■16年3月期は先行費用負担で減益予想

今期(16年3月期)連結業績予想(5月15日公表)は、売上高が前期比21.1%増の46億65百万円、営業利益が同52.7%減の1億円、経常利益が同51.0%減の90百万円、純利益が同61.6%減の58百万円としている。配当予想は無配継続としている。

直営店舗事業における新規出店や既存店の好調、さらに卸売事業の拡大などで大幅増収予想だが、利益面では中期成長に向けた戦略的投資フェーズと位置付けているため、先行費用負担で減益予想としている。

セグメント別売上高の計画は、直営店舗事業が同20.0%増の42億19百万円、卸売事業が同33.9%増の4億46百万円としている。

なお戦略投資は、16年3月期にウイルスフリー牡蠣の陸上養殖プラント第1期建築で3億円、17年3月期に岩手牡蠣加工工場の稼働およびコンシューマー市場参入拠点となる「大槌 牡蠣ノ星」開業(17年春予定)で6億円としている。また追加先行費用は、開発費や人件費の増加として16年3月期に1億60百万円、17年3月期に2億40百万円発生する計画だ。

■株価はモミ合い上放れ期待

株主優待制度については15年5月に新設を発表した。毎年9月末日、3月末日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施する。優待内容は所有株式数に応じて、当社グループの直営店舗で利用できるオイスター・ピース・クラブ(OPC)のポイント進呈、またはポイント相当額の当社厳選牡蠣商品を進呈(詳細はホームページ等で参照)する。15年9月末現在の株主から実施する。

たとえば1000株以上所有株主に対しては、OPC2万5000ポイント(2万5000円分)またはポイント相当額の牡蠣商品を進呈する。さらに3年以上継続1000株以上所有株主に対しては、当社グループで生産または厳選の産地で生産した牡蠣を進呈する。

株価の動きを見ると、15年3月IPO後の目先的な売り買いが一巡し、6月以降は3000円~3500円近辺でモミ合う展開だ。3月安値1854円と4月高値4875円との中間水準で、三角保ち合いの形となってきた。

7月10日の終値3245円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円09銭で算出)は81倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS754円09銭で算出)は4.3倍近辺である。

日足チャートで見ると25日移動平均線を挟んでモミ合う展開だ。ただし三角保ち合いの形で煮詰まり感も強めてきた。16年3月期の減益予想は織り込み済みであり、中期成長力を評価して上放れの展開が期待される。

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