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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】メディカル・データ・ビジョンはビッグデータ関連の中期成長力を評価して反発期待
- 2015/7/13 06:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
メディカル・データ・ビジョン<3902>(東マ)は医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開している。株価は全般地合い悪化の影響を受けて水準を切り下げたが売られ過ぎ感も強めている。中期成長力を評価して反発展開だろう。
■医療情報のネットワーク化を推進する企業
03年8月設立、14年12月東証マザーズに新規上場した。医療情報のネットワーク化を推進する企業で、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツールを販売するデータ利活用サービスを展開している。
データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報をビッグデータとして活用するためのデータ分析ツール・サービスを、製薬会社向けに販売するビジネスモデルだ。医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、および製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)が収益源である。
■医療機関向けデータネットワークスサービス
医療機関向けのデータネットワークサービスでは、DPC制度導入対象病院向けのDPC分析ベンチマークシステム「EVE」「EVE-ASP」および病院経営支援システム「Medical Code」を主力としている。
DPC制度とは、急性期病院における入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。医療費の適正化、診療データ(DPCデータ)開示による透明性の向上、医療の質向上などを目的として厚生労働省が03年に導入した。DPC対象病院には厚生労働省への診療データ提出が義務付けられているが、より効果的な診療を実施すれば従来に比べて収入が増えるというメリットがある。14年4月1日時点でDPC制度導入病院数は全国で1585病院に達している。
DPC制度導入対象病院向けのDPC分析システム「EVE」(06年8月リリース)は、自院の診療内容や状況を他院と比較しながら分析できるベンチマークシステムである。14年12月期の販売数は58病院で累計導入病院数は705病院、14年12月末現在のDPC対象病院の42.4%という圧倒的シェアを獲得している。DPC詳細分析ベンチマークシステム「EVE-ASP」(07年11月リリース)は、実名を公開した自院と他院を比較できるシステムだ。
病院向けの経営支援システム「Medical Code」(09年9月リリース)は、原価管理など病院経営全般に関わる事項を分析できるシステムである。14年12月期の販売数は32病院、累計導入病院数は131病院となった。
なお15年3月末時点におけるDPC分析システム「EVE」導入病院数は14年12月末比2病院増加の707病院、DPC対象病院1585病院における「EVE」のシェアは42.3%、病院向け経営支援システム「Medical Code」導入病院数は同8病院増加の139病院となった。
14年5月には診療所向け電子カルテソリューション「カルテビジョン」をリリースした。2次利用の許諾を得た個人データをさらに集積するため、治験会社などとのアライアンスも積極活用して、電子カルテソリューション「カルテビジョン」の拡販を強化する。
15年5月には、病院向け経営支援システム「Medical Code」の新機能「地域包括ケア病棟収益シミュレーション」の提供を開始した。厚生労働省が14年の薬価改定において新設した「地域包括ケア病棟」制度に対応し、収益差額分析により転棟後の経営予測が可能になる機能などを搭載した。
15年6月には、患者が自分自身の診療情報の一部を保管・閲覧することを目的とした病院向けデジタル健康ソリューション「エースビジョン」の本格導入を開始した。診察記録モジュール、医療情報統合IDカード「CADA」および診療情報保管・閲覧サービス「カルテコ」を付帯したトータルソリューションである。そして6月22日から全国に先駆けて、医療法人浜田病院(福岡県北九州市)にて「カルテコ」のWEBサービス提供を開始した。
またエースビジョン」の本格導入開始に伴い、医療情報統合IDカード「CADA」の発行・管理・運用受託などを行うことを目的に15年4月設立した子会社CADAが本格稼働する。今後は「CADA」を活用した新サービス開発や運用代行などを行っていく予定としている。
なお診療データベースの規模は15年6月末時点で実患者数が1071万人(14年12月末比206万人増加)となり、2次利用の許諾を得たデータ提供病院数が196病院(がん拠点病院84病院を含む)となった。民間企業では最大規模のデータベースであり、規模と質において製薬会社などから高い評価を受けている。そして実患者数が1000万人を超えたことで、より多角的で精度の高い分析が可能となる。
■製薬会社向けデータ利活用サービス
製薬会社向けのデータ利活用サービスは、データネットワークサービスで集積した医療情報などの各種データをビッグデータとして活用し、処方数分析、処方日数分析、処方診療科分析、併用薬分析、副作用発生リスク分析などの分析ツール・サービスを提供する。
医療機関における処方実態が把握可能な診療データ分析ツール「MDV analyzer」(12年8月リリース)は、利用製薬会社数が14年12月期に10社、15年3月末時点では11社となった。また「MDV analyzer」の分析メニューでは対応できない製薬会社個別ニーズに対するサービスとして「アドホック調査サービス」も提供している。
さらに15年3月には薬剤安全性分析をはじめとした疫学調査支援を目的とした分析システム「MDV analyzer for Academia」を、15年4月には薬剤処方実態に関する基礎分析が簡便に行えるWEB分析ツール「MDV analyzer Light」をリリースした。
現在は先発薬メーカー向けが主力だが、15年2月にはOTC(一般用医薬品)およびH&BC(ヘルス&ビューティケア)分野を対象とした調査分析サービスも開始した。15年4月にはクロス・マーケティンググループ<3675>と共同で、OTC・H&BCメーカー向けに診療統計データと定性データをリンクさせたワンストップ分析サービス「ヘルスオプティマイザー」の提供を開始した。
今後はDPCデータにとどまらず、DPCデータを含めた個人データをさらに集積し、カルテ情報を永続的に取得できるように、電子カルテ・オーダリングシステム・レセプトコンピュータなど基幹システム分野への進出も計画している。病院・診療所への事業展開加速、永続的に取得するインフラおよびデータベース作りを通じて、事業基盤安定化とともに中期成長を目指す方針だ。
15年6月には、診療統計データ分析レポート「Medical Trend Report for 食品・機能性食品」の提供を開始した。15年4月から機能性表示食品制度がスタートしたことに対応して、機能性表示食品群において未整備のカテゴリー体系を当社が独自に26カテゴリー・83セグメントに定義構築し、食品・機能性食品向けの疾病市場分析などを提供する。
また15年6月には医師専門転職サイト「メディリア」をオープンした。厚生労働省が04年に「新臨床研修医制度」を導入して以来、大学医局へ入局するのではなく、自ら情報を集めて勤務先病院を選択する医師が増加していることに対応し、勤務地・病床数・報酬といった基本情報だけでなく、当社が独自に保有している大規模診療データベースなどを活用して患者特性や診療実績などの情報も提供する。
■15年12月期は先行投資費用で営業利益横ばいだが、大幅増収予想
今期(15年12月期)の非連結業績予想(2月9日公表)は売上高が前期比34.4%増の26億22百万円、営業利益が同0.6%増の2億62百万円、経常利益が同5.5%増の2億62百万円、純利益が同7.8%増の1億46百万円としている。配当予想は無配継続としている。
システム開発、データ蓄積セキュリティ強化、電子カルテソリューション拡販、さらに新規事業に関する人件費や費用の増加などで、通期の営業利益はほぼ横ばい見通しだ。
ただし主力製品・サービスの好調が牽引して大幅増収見通しだ。新サービス投入も寄与してシステム導入数が順調に増加する。事業別売上高の計画はデータネットワークサービスが同43.9%増の17億46百万円、データ利活用サービスが同18.8%増の8億76百万円としている。
データネットワークサービスでは「EVE」および「Medical Code」の導入病院数が増加し、診療所向け電子カルテソリューション「カルテビジョン」の本格化も寄与する。データ利活用サービスでは「MDV analyzer」「MDV analyzer for Academia」「アドホック調査サービス」の拡販に加えて、OTC・H&BC分野の寄与も期待される。
第1四半期(1月~3月)は売上高が4億77百万円、営業利益が21百万円、経常利益が21百万円、純利益が10百万円だった。通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高18.2%、営業利益8.0%、経常利益8.0%、純利益6.9%と低水準だが、外資系製薬メーカーは12月の決算期末に予算を消化する傾向が強いため、利益は第4四半期(10月~12月)に集中しやすい収益構造である。
■17年12月期から成長の第4フェーズ(投資回収期)
中期成長イメージでは、15年12月期および16年12月期を成長の第3フェーズ(投資フェーズ)として、売上高は毎年30%前後の増加、売上高経常利益率は10%前後の維持としている。電子カルテソリューションを介して個人から同意を得た診療データを蓄積し、個人が診療情報を管理できる仕組みを構築する。さらに蓄積された多様なデータを活用して、利活用サービス領域の成長を加速させる。
そして17年12月期からは成長の第4フェーズ(投資回収期)としている。蓄積データを活用して利活用サービスのビジネス領域が拡大し、売上高の拡大とともに投資回収を開始する方針だ。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は売られ過ぎ感
なお医療関連企業との資本業務提携により、富士フイルムが第1位株主、メディパルホールディングスが第2位株主、シミックホールディングスが第4位株主となっている。
株価の動き(15年7月1日付で株式4分割)を見ると、2000円近辺でのモミ合いから下放れの展開となり、7月9日には1450円まで調整する場面があった。全般地合い悪化の影響を受けた形だが、15年3月の上場来安値1287円まで下押すことなく、10日には1600円台まで戻している。影響は一時的だろう。
7月10日の終値1613円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想に株式4分割を考慮したEPS31円67銭で算出)は51倍近辺で、前期実績PBR(前期実績に株式4分割を考慮したBPS492円62銭で算出)は3.3倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が15%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。中期成長力を評価して反発展開だろう。