【編集長の視点】ギリシャ問題合意先送りは織り込み済みか?まず東エレクを先駆株に急落銘柄の「リターン・リバーサル」にトライ=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

どうもスンナリと予定調和のハッピーエンドとはならないらしい。ギリシャへの金融支援問題である。緊縮策を受け入れるかどうか奇策の国民投票を実施した同国のチプラス首相が、一転してEU(欧州連合)の求める構造改革策を提出、7月12日開催予定のEU首脳会議で合意され、金融支援が再開されるはずだった。それが、11日のEU財務相会合で話し合いがまとまらず、12日のEU首脳会議でもさらに厳しい要求がつきつけられ、合意できるかどうかは7月15日まで先送りとなった。

問題は、この先送りが株価にすでに織り込み済みとなっているかどうかである。前週末の欧米市場では、同問題は、ギリシャの構造改革策提出で大きな峠を越したとして、株価が、急落から持ち直していた。前週末10日のニューヨークダウ工業株30種平均は、211ドル高と続伸する全面高となり、為替相場も、1ドル=122円台後半、1ユーロ=136円台後半と対ドル、対ユーロとも円安となっていた。これが、今週も継続するかどうかである。

もちろんここでのベストシナリオは、ギリシャの債務問題の急転直下の解決だが、これになお時間を要し、なおかつ返済期限の迫った債務の不履行(デフォルト)、ギリシャのユーロ圏離脱などにつながったりすれば、ベストシナリオがワーストシナリオに急変することになる。前週7月第2週は雲行きが怪しくなった。6日の急反落のあと7日の火曜日に急反発したところまでは、想定シナリオ通りだったが、そのあとの8日水曜日は、日経平均株価が、638円安と急反落して2万円台を割れ、続く9日は117円高と反発したものの、週末金曜日の10日は75円安と反落、週足は、長大下ヒゲを伸ばして3週間ぶりの陰線となった。

ギリシャへの金融支援協議の難航に加えて、中国の株価急落という難題が重なったことが追い討ちとなったためだ。今週は、この「二大トラブル」の動向がカギとなる。ギリシャ問題は、チプラス首相が、EU(欧州連合)に対して求められた財政改革案を議会承認を受けて提出したが、さらにドイツなどが迫った厳しい改革案に譲歩しEU各国の信頼感を取り戻すことができるかどうかがカギとなる。一方、中国株は、なお上場企業のおよそ半数が売買停止となり、売買再開後の株価急落を懸念する見方があるものの、中国政府のなりふり構わない株価維持政策で当面は「官製相場」の小康状態が続くとの観測が有力である。

ベストシナリオは、世界の金融市場を動揺させた「二大トラブル」が、大きな峠を越えることで、そうなれば、月曜日安・火曜日反発の株価パターンに変化が出てくることは容易に想定される。月曜日安が転じて月曜日高で、今週週初は、まず買い先行でスタートして株価がどの程度戻せるかトライするはずだ。前週末の欧米株高、為替相場の円安進行は続くことになる。

東京市場も、この余勢を駆ってポジティブに反応するとすれば、問題は週初に買い物が集まる中心銘柄は何かということになるが、これもほぼ間違いなく、下げた銘柄ほどよく戻るとするセオリー通りに「リターン・リバーサル」になるはずだ。この2週間は、「月曜急落・火曜反発」の相場パターンに合わせて、主力株が軒並み急落・急反発の「高速エレベーター相場」が続いたが、今週週初は、上りのエレベーター待ちとなるはずである。

有力なリード株の出現も予想される。東京エレクトロン<8035>(東1)である。同社株は、前週末10日大引け後に、中期経営計画と新株主還元策を発表、株主還元策では、連結当期純利益に対する配当性向を従来の35%から50%に引き上げ、つれて今3月期配当を期初予想の155円から222円(前期実績143円)に大幅に増配したからだ。これを受けて前週末の米国市場では、同社ADR(預託証券)が、約260円高、3.3%高し、全面高となったADRのなかでも値上がりトップとなっている。東京市場でも、「家貧しくして孝子顕る」の期待が高まる。このADRでは、今8月期第3四半期業績が市場コンセンサスを下回ったとして10日に3450円安と急反落したファーストリテイリング<9983>(東1)が、920円高で返ってきたこともサポートし、週初のエレベーター乗り場には、上りエレベーターを待つ投資家の行列ができそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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