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星光PMCは売られ過ぎ感、22年12月期減益予想だが中期成長期待
- 2022/2/24 09:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
星光PMC<4963>(東1、新市場区分プライム)は製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)の拡販も推進している。2月14日には新中期経営計画「OPEN 2024」を発表した。22年12月期は需要堅調で増収だが、原燃料価格高騰や成長投資費用増加などで減益予想としている。一時的に利益成長が減速する形だが積極的な事業展開で中期成長を期待したい。4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。株価は減益予想を嫌気し、地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。
■製紙用薬品、印刷インキ用・記録材料用樹脂、化成品を展開
DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、樹脂事業(印刷インキ用樹脂、記録材料用樹脂、CNF、19年1月に連結子会社化した台湾・新綜工業の粘着剤)、化成品事業(子会社KJケミカルズの機能性モノマー)を展開している。
19年12月には東南アジアにおける製紙用薬品の生産拠点として、ベトナムにSEIKO PMC VIETNAMを設立(21年末完工予定)した。樹脂事業では台湾・新綜工業において新工場を建設し、台湾2工場体制(平鎮、観音)を構築して生産能力を倍増させている。22年1月には台湾・新綜工業の株式を追加取得して出資比率を92.80%に引き上げた。先進精密産業において需要拡大基調の粘着剤事業の海外展開を推進し、連結経営の強化を図る。
21年12月期のセグメント別売上高構成比は製紙用薬品事業が57%、樹脂事業が26%、化成品事業が17%で、セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)構成比は製紙用薬品事業が36%、樹脂事業が24%、化成品事業が40%だった。
■新中期経営計画「OPEN 2024」を策定
2月14日に、長期ビジョン「VISION 2030」を達成するためのアクションプランとして、新中期経営計画「OPEN 2024」を発表した。
目標数値として、最終年度24年12月期売上高390億円、営業利益37.5億円、営業利益率9.6%、EBITDA(営業利益+減価償却費)57.5億円、ROE8.4%、海外売上高比率40%以上、New Green Index130以上を掲げた。
セグメント別は、製紙用薬品事業の売上高が210億円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が15億円、樹脂事業の売上高が110億円で利益が17.5億円、化成品事業の売上高が70億円で利益が9億円としている。
基本方針として、製品/事業地域/事業領域の全てにおけるポートフォリオ変革推進による稼ぐ力の強化、ESG経営(GHG排出量削減、環境戦略製品の拡販)、人財育成・組織づくり、DXを推進する。22年2月にはサステナビリティ委員会を設置するとともに、サステナビリティ基本方針を策定した。
製紙用薬品事業では国内シェア拡大、アジア地域での製造・販売拡大、バイオフィルムコントロール剤等の新事業、樹脂事業では製品ポートフォリオ変革、UV硬化型粘着剤拡販、アジア地域での市場拡大、CNFの用途拡大・採用拡大、AgNW(銀ナノワイヤインク)の新規採用、化成品事業では生産キャパ拡充、海外販路・市場開拓パートナーの拡充、機能性溶剤の拡販を推進する。
長期ビジョン「VISION 2030」における戦略投資枠としては、22年~30年の9年間合計300億円を設定している。内訳は成長投資枠150億円、協業やM&A等による事業規模拡大を図るための投資枠150億円としている。
なお4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。新中期経営計画「OPEN 2024」の着実な遂行による業績の向上、IR・ガバナンス機能の強化などで企業価値の向上に取り組むとともに、取引先等の事業会社との株式保有関係解消などを通じて流通株式比率の向上、流通株式時価総額の増大を図り、24年12月期末までにプライム市場の上場維持基準適合を目指すとしている。
■CNF複合材料の採用拡大
次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。
18年1月CNF複合材料「STARCEL」ブランドでの商業生産・製品出荷を開始した。18年6月には世界初のCNF強化樹脂応用製品の商品化として、アシックス<7936>の高機能ランニングシューズ製品のミッドソール部材の原材料に「STARCEL」が採用され、全世界で累計500万足以上販売されている。19年10月には環境省NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト製作のコンセプトカーに採用された。
20年8月にはNEDO助成事業の「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の助成先に採択された。事業期間は20年度~24年度である。さらに自動車用部材への採用を目指して検討を継続している。
この他の新製品・注目製品として、脱プラスチック・包装材料の紙化を推進する紙塗工用耐水・耐油オールアクリルエマルション、造水膜などに発生するバイオフィルムの形成を抑えるバイオフィルムコントロール剤などの拡販も推進する。
21年6月には耐環境特性を付与した透明導電膜向けAgNWおよびオーバーコート剤の開発をリリースしている。また21年8月には高バイオマス率で生分解性を有する紙用コート剤の開発をリリースしている。
■22年12月期は原燃料価格高騰や成長投資費用で一時的に減益予想
21年12月期の連結業績は、売上高が20年12月期比19.1%増の310億32百万円、営業利益が9.8%増の28億67百万円、経常利益が17.7%増の31億39百万円、親会社株主帰属当期純利益が23.6%増の20億82百万円だった。需要回復や差別化商品拡販などで増収増益だった。配当は20年12月期と同額の16円(第2四半期末8円、期末8円)とした。
製紙用薬品事業は、需要の回復や差別化商品の拡販などで売上高が17.0%増の175億56百万円と大幅伸長したが、原料価格高騰などでセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)は17.9%減の11億93百万円だった。
樹脂事業は、粘着剤、印刷インキ用樹脂・記録材料用樹脂が順調に伸長して、売上高が18.1%増の80億83百万円と大幅伸長したが、原料価格高騰などで利益は0.3%増の8億03百万円にとどまった。
化成品事業は、売上高が28.4%増の53億92百万円で、利益が83.2%増の13億12百万円だった。主力製品の輸出売上が伸長して大幅増収増益だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が75億11百万円で営業利益が9億63百万円、第2四半期は売上高が74億73百万円で営業利益が5億40百万円、第3四半期は売上高が80億32百万円で営業利益が7億69百万円、第4四半期は売上高が80億16百万円で営業利益が5億95百万円だった。
22年12月期の連結業績予想は、売上高が21年12月期比7.8%増の334億60百万円、営業利益が28.9%減の20億40百万円、経常利益が31.2%減の21億60百万円、親会社株主帰属当期純利益が29.4%減の14億70百万円としている。配当予想は21年12月期と同額の16円(第2四半期末8円、期末8円)としている。
需要堅調で増収だが、原燃料価格高騰や成長投資費用増加などで減益予想としている。セグメント別には、製紙用薬品事業が原燃料価格高騰、ベトナム新工場立ち上げ費用の発生などで一時的に減益、樹脂事業が高付加価値製品の販売拡大で原燃料価格高騰の影響を吸収して増益、化成品事業が原燃料価格高騰や設備投資増加に伴う償却費の増加で一時的に大幅減益の見込みとしている。
22年12月期は成長投資負担も影響して一時的に利益成長が減速する形だが、中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は22年12月期減益予想を嫌気し、地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。2月22日の終値は584円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS48円48銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想16円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS979円59銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約177億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)