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パイプドHDは上値試す、22年2月期は再上振れ余地
- 2022/2/24 09:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1、新市場区分スタンダード)は、ローコード開発プラットフォームSPIRAL(スパイラル)を基盤としてソリューション事業などを展開している。22年2月期は受注が好調に推移して営業・経常増益予想としている。第3四半期累計が順調であり、さらに再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なおMBOの一環として実施していたTOBが不成立となったため、今後のグループ経営方針全般について再検討する。株価は地合いが悪化する中でも1月の直近安値圏から反発の動きを強めて戻り歩調の展開だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■情報資産プラットフォーム事業などを展開
ローコード開発プラットフォームSPIRAL(スパイラル)を基盤としてソリューション事業などを展開している。スパイラルは官公庁、金融、医療、不動産、教育機関など幅広い業種・業態において延べ1万1000社以上(2021年6月時点)に利用されている。有効アカウント数(有期契約含む)は22年2月期第3四半期末時点で4008件となった。
21年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業68%、販促CRMソリューション事業15%、広告事業12%、xTech事業3%、社会イノベーション事業1%、営業利益構成比(調整前)は情報資産プラットフォーム事業82%、販促CRMソリューション事業2%、広告事業17%、xTech事業0%、社会イノベーション事業▲1%だった。
情報資産プラットフォーム事業は、契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。広告事業の売上高は、広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)としている。
22年2月期からセグメント区分を変更し、新セグメント区分はホリゾンタルDXのクラウド(スパイラル、スパイラルEC、BizBase)およびソリューション(Webシステム開発請負、ECサイト・アプリ構築)、バーティカルDXのxTech(ArchiSymphony:BIM事業、BeauTech:美歴)および社会イノベーション(マイ広報紙、ネット投票・政治山、I Love 下北沢、シモキタコイン)、カスタマーエンゲージメントの広告(スパイラルアフィリエイト、ネット広告代理販売)およびCRMソリューション(デジタルCRM)、グループ共通(持株会社管理費用、グループ採用・育成費用、投資損益)としている。
電子地域通貨プラットフォームを提供するエルコインの子会社シモキタコインは、エルコインの電子地域通貨プラットフォーム発行事業者第1号として、下北沢で行われるイベントや商業施設等で利用される電子地域通貨を発行している。政治・選挙情報サイト「政治山」を運営するVOTE FORは、自治体向けオープンデータ化・活用サービス「マイ広報紙」を展開するパブリカと合併し、収益性向上を推進している。さらにwithコロナ・afterコロナで役立つソリューションとして、体調報告アプリ、バーチャル株主総会ソリューション、美容室向け前売りチケット販売管理「チケット管理サービス」などの開発・提供を開始している。
なお20年3月にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)として投資事業を行う新会社ダブルシャープ・パートナーズを設立している。21年2月期の投資実績としては、店舗マネジメントツール「はたLuck」のナレッジ・マーチャントワークス、地方企業と大都市の副業・兼業人材マッチングサービス「JOINS」のJOINS、家具のサブスクリプション型サービスのsubsclife、建物メンテナンス業務管理SaaSのBPM、BtoB受発注システム「CO―NECT」のCO―NECTに出資し、5社合計約1億30百万円を実行している。
■TOB不成立で経営方針全般を再検討
マネジメント・バイアウト(MBO)の一環としてミライサイテキグループが21年10月1日~11月15日に実施していた同社株式に対する公開買付け(TOB)が不成立となったため、今後のグループ経営方針全般について再検討する。
なお中期経営計画2023(21年2月期~23年2月期)では、目標値に23年2月期売上高75億円、営業利益17億円を掲げている。21年4月にはカレンの全株式を譲渡して連結から除外した。
重点戦略として、ホリゾンタルDXの強化と拡充(スパイラルを中心とするローコード開発クラウドの更なる充実、新たなクラウドサービスの開発など)、バーティカルDXの積極的な挑戦(既存の建設・美容・政治・行政・タウンマネジメントの各分野からの成功事例の創出、特定分野のDXをトータルで支援するバーティカルDXの新たな創出)、カスタマーエンゲージメントの新たな挑戦(従来のアフィリエイト広告による集客支援と集客後のCRMのシームレスな連携)、脱炭素社会への貢献、採用・育成の通例化を推進する。
主力のホリゾンタルDXの強化と拡充では、21年8月に従業員情報管理プラットフォーム「SPIRAL HRクラウド」の提供を開始した。
■22年2月期営業・経常増益予想、さらに再上振れの可能性
22年2月期連結業績予想(6月30日に上方修正)は、売上高が21年2月期比11.9%増の73億円、営業利益が5.1%増の15億円、経常利益が3.1%増の15億円、親会社株主帰属当期純利益が26.6%減の9億円としている。配当予想は2円増配の25円(第2四半期末11円、期末14円)としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比23.4%増の56億39百万円、営業利益が42.9%増の11億73百万円、経常利益が47.2%増の12億02百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.9%減の7億53百万円だった。
主力のホリゾンタルDX事業のクラウドにおけるコロナ禍関連の受注が牽引し、カスタマーエンゲージメント事業における広告関連や、CRMソリューションの大型案件なども寄与して大幅増収だった。コスト面では外注費、人件費、研究開発費が増加し、MBO関連費用も発生したが、増収効果で吸収して大幅営業・経常増益だった。なお親会社株主帰属四半期純利益は前期の特別利益に計上した投資有価証券売却益2億93百万円が剥落して小幅減益だった。
ホリゾンタルDX事業のクラウドは売上高が26.7%増の39億97百万円で営業利益が48.6%増の14億57百万円、ソリューションは売上高が5.5%増の2億73百万円で営業利益が18.3%減の72百万円だった。クラウドにおけるコロナ禍関連の好調な受注が牽引した。
バーティカルDX事業のxTechは売上高が12.7%増の1億47百万円で営業利益が11.9%減の12百万円、社会イノベーションは売上高が14.1%増の75百万円で営業利益が15百万円の損失(前年同期は16百万円の損失)だった。社会イノベーションのマイ広報紙は21年11月の掲載自治体数が969となった。国内の自治体数の5割を超えている。
カスタマーエンゲージメント事業の広告は売上高が22.4%増の6億62百万円で営業利益が17.0%増の2億54百万円だった。なお広告枠の仕入高控除前の総額でグロス表示した場合の売上高は43億円だった。CRMソリューションは売上高が16.1%増の4億83百万円で営業利益が69百万円の損失(同70百万円の損失)だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が19億35百万円で営業利益が5億49百万円、第2四半期は売上高が18億60百万円で営業利益が2億75百万円、第3四半期は売上高が18億44百万円で営業利益が3億49百万円だった。
通期予想は据え置いて小幅営業・経常増益予想としている。コロナ禍に伴うワクチン関連が一過性の性質であることを踏まえると、第4四半期は第3四半期以上の業績を見込みにくいとしている。ただし通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が77.3%、営業利益が78.2%、経常利益が80.2%、親会社株主帰属当期純利益が83.7%と順調である。通期予想はさらに再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は地合いが悪化する中でも1月の直近安値圏から反発の動きを強めて戻り歩調の展開だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。2月22日の終値は2604円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS115円23銭で算出)は約23倍、今期予想配当利回り(会社予想25円で算出)は約1.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS574円38銭で算出)は約4.5倍、時価総額は約213億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)