マーケットエンタープライズは底固め完了、22年6月期2Q累計赤字だが中期経営計画の進捗順調

 マーケットエンタープライズ<3135>(東1、新市場区分プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指してネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。22年6月期は成長戦略再構築のステージと位置付けて赤字予想としているため第2四半期累計は赤字だった。ただし中期経営計画の進捗は順調としている。第1四半期がボトムとなった可能性もあり、23年6月期の収益回復を期待したい。なお4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。株価は地合い悪化も影響して軟調展開だが底固め完了感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 21年6月期のセグメント別(連結調整前)の売上構成比はネット型リユース事業60%、メディア事業5%、モバイル通信事業35%、営業利益構成比はネット型リユース事業59%、メディア事業26%、モバイル通信事業15%だった。

 20年5月には、グループ全事業に関するITシステムのオフショア開発拠点として、ベトナムに子会社を設立した。21年6月には内閣府が運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画した。21年8月には出資先であるミナオシが法人リードジェネレーションサービスの本格運用を開始した。

 21年12月には、大和インベスター・リレーションズの2021年インターネットIR表彰において3年連続3度目の優良賞を受賞、日興アイ・アールの2021年度全上場企業ホームページ充実度ランキングで優秀サイトに3年連続で選出、ブロードバンドセキュリティのGomez IRサイトランキング2021で小売業部門総合第15位に選出されたと発表している。

■ネット型リユース事業は30カテゴリーに対応

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

 20年7月には「高く売れるドットコム」と、19年2月に事業を譲り受けた日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」のシステム連携・送客を開始した。21年7月には「おいくら」がスマホ向け買取一括査定アプリをリリースした。

 地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、21年6月には北海道絵恵庭市と「おいくら」を活用した持続可能な循環型社会に関する連携協定を締結、21年7月には三重県いなべ市と持続可能な循環型社会に関する包括協定を締結した。21年10月には川崎市と「おいくら」を活用した粗大ごみの削減を目指す実証実験を開始した。22年1月には東京都墨田区と「おいくら」を活用した粗大ごみの削減を目指す実証実験を開始した。

 M&Aを積極活用して、中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材にも取扱商品カテゴリーを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

 21年10月にはマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設し、グループ全体のリユースセンターは12拠点となった。そして21年11月には北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始した。中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進する。

 なお21年10月には「高く売れるドットコム」が、特定非営利法人・一般社団法人ハウスキーピング協会主催「シンプルスタイル大賞2021」のサービス・空間部門で特別賞を受賞している。

■事業領域拡大してメディア事業とモバイル通信事業も展開

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。

 なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

■26年6月期までにプライム市場上場基準適合目指す

 4月4日移行予定の新市場区分については、21年12月24日付でプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。21年8月公表の中期経営計画に掲げる積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 21年8月公表の中期経営計画では目標として24年6月期売上高200億円、営業利益12億円を掲げている。主力の個人向けリユースの成長回帰、マシナリー(農機具・建機)および「おいくら」の成長加速などの売上成長により、まずは中期経営計画の達成を目指し、さらに25年6月期も含めて2期合計営業利益25億円を稼ぐ収益構造を構築する。

 24年6月期売上高計画の内訳は、ネット型リユース事業137億44百万円(個人向けリユース100億円、マシナリー30億円、「おいくら」7億44百万円)、メディア事業8億円、モバイル通信事業55億円としている。さらに25年6月期以降は、リユースの継続的成長に加えて、「おいくら」およびモバイルのストック収益を中心に持続的な収益拡大を目指すとしている。

■22年6月期は成長戦略再構築ステージ、2Q累計赤字だが進捗順調

 22年6月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年6月期比10.3%増の120億円、営業利益が4億円の赤字(21年6月期は54百万円の黒字)、経常利益が4億05百万円の赤字(同32百万円の黒字)、親会社株主帰属当期純利益が4億40百万円の赤字(同40百万円の赤字)としている。

 赤字予想だが、中期経営計画の最終年度24年6月期目標値(売上高200億円、営業利益12億円)達成に向けて、22年6月期は成長戦略再構築ステージと位置付けている。個人向けリユースの買取能力増強、マシナリー(農機具・建機)の買取および出荷機能強化、「おいくら」の顧客基盤強化やシステムリニューアル、メディア事業の既存戦略深堀、モバイル通信事業のストック型収益へのシフトなどを推進する方針だ。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比2.4%減の54億92百万円、営業利益が2億04百万円の赤字(前年同期は2億06百万円の黒字)、経常利益が2億21百万円の赤字(同1億95百万円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億77百万円の赤字(同93百万円の黒字)だった。在庫積み増しに伴って売上総利益が減少し、広告宣伝投資や人員投資の積極化に伴う販管費の増加も影響して営業赤字だった。

 ネット型リユース事業は売上高が7.4%減の31億08百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が93.8%減の21百万円だった。買取依頼数・金額は高水準に推移したが、マーケティング投資の積極化、マシナリーの新拠点開設費用、積極的な採用活動やシステム投資など先行投資の影響で赤字だった。

 メディア事業は売上高が14.3%減の2億61百万円で、利益が8.5%減の1億43百万円だった。第1四半期の落ち込みをカバーできず減収減益だが、第2四半期には収益性の高いキーワードにおける検索ランキングが回復傾向となり、モバイル通信に関するメディアへの送客収入も回復傾向となった。

 モバイル通信事業は売上高が5.9%増の21億61百万円で、利益が55.5%減の50百万円だった。新商材のWiMAX 5Gを中心に新規回線獲得数は増加傾向だが、ストック収益基盤構築に向けた新たな料金プラン設定によって新規契約回線獲得時に計上される一時的収益が低下した。新規回線獲得に向けたマーケティング投資積極化も影響して減益だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が26億07百万円で営業利益が1億65百万円の赤字、第2四半期は売上高が28億85百万円で営業利益が39百万円の赤字だった。第2四半期は第1四半期比で売上高、営業利益とも改善し、業績底打ち感を強めている。

 通期予想は据え置いている。中期経営計画の最終年度24年6月期目標値(売上高200億円、営業利益12億円)達成に向けて、22年6月期は成長戦略再構築のステージと位置付けて、期初時点で赤字予想としている。第2四半期累計は赤字だったが、中期経営計画の進捗は順調としている。四半期別に見ると第1四半期の業績がボトムとなった可能性もあり、積極的な事業展開で23年6月期の収益回復を期待したい。

■株価は底固め完了

 株価は地合い悪化も影響して軟調展開だが底固め完了感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。2月22日の終値は686円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS271円50銭で算出)は約2.4倍、そして時価総額は約36億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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