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インフォマートは売り一巡、22年12月期は先行投資で減益予想だが中期成長期待
- 2022/2/24 09:17
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1、新市場区分プライム)はBtoBビジネスを革新するリーディングカンパニーを目指し、国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。22年12月期は積極的な先行投資を継続するため減益予想としているが、23年開始のインボイス制度などのDXニーズも背景として、先行投資の成果で中期成長を期待したい。株価はほぼ一本調子に水準を切り下げた。さらに22年12月期減益予想も嫌気して昨年来安値圏だ。ただし売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム
企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームを運営している。受発注は従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム、規格書は食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール、請求書は請求書発行・受取業務を電子化したシステム、商談は全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト、契約書は契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステムである。
21年12月期の売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注、規格書)が71%、BtoB-PF ES事業(商談、請求書、契約書)が29%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業が210%、BtoB-PF ES事業が▲110%だった。
飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。21年6月にはBtoB請求書が公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電子取引ソフト法的要件認証制度第1号認証を取得した。21年7月には全業界向け受発注のBtoB TRADEをリリースした。
■26年12月期営業利益50億円目標
中期業績目標に26年12月期売上高200億円、営業利益50億円を掲げ、成長に向けた積極投資と収益源多角化を推進している。
将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組んでいる。なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資している。
20年8月には、電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。21年4月には、DX推進プロジェクト「Less is More.Project」を始動し、本プロジェクトの理念に賛同して共に活動する参画企業の募集を開始した。
■アライアンスを推進
21年1月にはダイワボウ情報システムとディストリビューター契約を締結、21年2月には食品卸企業向け受発注・販促サービスを提供するタノムと資本業務提携、自治体向けクラウドシステムを手掛けるGcomホールディングスと協業した。21年3月には、三井物産と共同出資の特別目的会社I&Mを設立して中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、NTT東日本とセールスパートナー契約を締結、三井物産グループの東神倉庫と業務提携した。
21年8月には一般社団法人日本フードサービス協会と連携し、国産ジビエの外食産業向けの販路開拓・拡大を支援すると発表した。BtoBプラットフォーム商談でオンライン商談・展示会の積極活用の場を提供する。
21年7月には外食産業向け専門の総合食品商社である岩田産業グループホールディングス(福岡市)との代理店契約を締結した。共同で外食産業のDXを推進する。21年9月にはBtoBプラットフォーム請求書と、ミロク情報システム<9928>の中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX 財務大将」のオプション機能AI仕訳とのAPI連携を開始した。
21年10月には串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携し、合弁会社Restartz(リスターツ)設立を発表した。外食産業の店舗運営の生産性向上を目指し、共同で店舗運営プラットフォームアプリ(仮称)等を開発する。
21年12月には、BtoBプラットフォーム請求書と三谷産業<8285>のChalaza(カラザ)とのサービス連携を開始、食品関連事業者とフードバンク活動団体をBtoBプラットフォーム商談でつなぐフードバンクコーナーをオープン、請求書処理の業務プロセス改革を目的として鹿児島県奄美市と電子請求書(BtoBプラットフォーム請求書)の実証実験を開始した。
■利用企業数は増加基調
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調である。21年12月期末時点の全体の利用企業数は67万9684社、事業所数は130万9477事業所となった。21年1月~12月の流通金額は18兆5006億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
21年12月期末時点の利用企業数の内訳を見ると、BtoB-PF FOOD事業の受発注買い手企業数は20年12月期末比316社増加の3439社、買い手店舗数は6310店舗増加の6万6010店舗、売り手企業数は2652社増加の4万120社となった。規格書の買い手機能は86社増加の892社、卸機能は12社増加の709社、メーカー機能は487社増加の8599社となった。
BtoB-PF ES事業の請求書は有料契約企業数が1192社増加の6528社(受取モデルが678社増加の4192社、発行モデルが514社増加の2336社)で、請求書ログインは15万7488社増加の67万528社となった。契約書ログインは1万3870社増加の2万7296社となった。電子帳簿保存法改正による請求書電子化や「脱ハンコ」による契約書電子化の流れで、請求書と契約書が急増している。商談は142社増加の9043社(買い手企業が138社増加の7615社、売り手企業が4社増加の1428社)となった。
21年11月にはNEC<6701>にBtoBプラットフォーム請求書が採用された。また東京商工リサーチが実施した調査でBtoBプラットフォーム請求書が請求書クラウドサービス市場において国内シェアNO.1を獲得した。
■22年12月期は先行投資を継続して減益予想だが中期成長期待
21年12月期連結業績は売上高が20年12月期比12.1%増の98億35百万円、営業利益が30.0%減の10億30百万円、経常利益が29.9%減の10億21百万円、親会社株主帰属当期純利益が46.9%減の5億38百万円だった。配当予想は期末33銭上方修正して、20年12月期比2円28銭減配の1円43銭(第2四半期末47銭、期末96銭)とした。
売上高、利益とも従来予想(21年10月29日に上方修正)を上回って着地したが、前期比で見ると、新規契約数増加などで2桁増収ながら、ユーザー数拡大に対応したサーバー体制増強に伴うデータセンター費の増加、ソフトウェア償却費の発生、事業拡大に向けた営業および営業サポート人員補強に伴う人件費の増加など、先行投資の影響で減益だった。
BtoB-PF FOOD事業は、売上高が4.7%増の70億円、セグメント利益(調整前営業利益)が19.5%減の21億63百万円だった。売上面は2桁増収だった。テイクアウト・デリバリー等の新業態、外食チェーン、ホテル等での業務効率化を目的とした新規契約企業数が増加した。さらにコロナ禍の影響が和らぎ、食材流通額が増加して売り手企業の従量制システム使用料が増加した。受発注の期末の買い手企業数は前期末比254社増加の3439社、売り手企業数は2188社増加の4万120社となった。規格書も利用企業数が増加した。
BtoB-PF ES事業は、売上高が36.0%増の28億35百万円、利益が11億37百万円の赤字(20年12月期は12億18百万円の赤字)だった。売上面は、業務効率化やDXへの関心の高まりなどにより、フード業界にとどまらず幅広い業界で新規有料契約企業数が増加したことに加えて、請求書電子データ化の推進でログイン社数が増加してシステム使用料およびセットアップ売上が増加した。請求書の期末企業数は15万7488社増加の67万528社(うち契約企業数は1192社増加の6528社)となった。契約書と商談も企業数が増加した。コスト面では事業拡大に向けて、営業人員増強やマーケティング施策など積極的な先行投資を継続した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が22億99百万円で営業利益が3億83百万円、第2四半期は売上高が23億94百万円で営業利益が3億23百万円、第3四半期は売上高が24億61百万円で営業利益が2億02百万円、第4四半期は売上高が26億81百万円で営業利益が1億21百万円だった。第3四半期はデータセンター費が増加、第4四半期は人件費と販促費が増加した。なお第4四半期の売上高は四半期ベースで過去最高だった。
22年12月期連結業績予想は、売上高が21年12月期比11.7%増の109億86百万円、営業利益が90.3%減の1億円、経常利益が96.0%減の41百万円、親会社株主帰属当期純利益が92.0%減の43百万円としている。配当予想は21年12月期比1円25銭減配の18銭(第2四半期末9銭、期末9銭)としている。
セグメント別計画は、BtoB-PF FOOD事業の売上高が8.8%増の76億19百万円でセグメント利益(調整前営業利益)が12.0%減の19億03百万円、BtoB-PF ES事業の売上高が18.8%増の33億67百万円で利益が17億96百万円の赤字(21年12月期は11億37百万円の赤字)としている。
22年12月期は新規契約企業数の増加や食材流通の回復などで2桁増収だが、売上成長の加速を優先して積極的な先行投資(データセンター費の増加、ソフトウェア償却費の増加、人件費の増加、販売促進費の増加など)を継続するため減益予想としている。そして23年12月期以降の売上成長拡大と利益の再上昇の実現を目指すとしている。
外食産業における受発注の電子化、企業における請求書の電子化、23年開始のインボイス制度などのDXニーズも背景として、先行投資の成果で中期成長を期待したい。
■株価は売り一巡
株価はほぼ一本調子に水準を切り下げた。さらに22年12月期減益予想も嫌気して昨年来安値圏だ。ただし売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。2月22日の終値は611円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS19銭で算出)は約3216倍、今期予想配当利回り(会社予想の18銭で算出)は約0.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円59銭で算出)は約13倍、時価総額は約1585億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)