- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- トーセは下値固め完了、22年8月期大幅増益予想
トーセは下値固め完了、22年8月期大幅増益予想
- 2022/2/25 09:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
トーセ<4728>(東1、新市場区分スタンダード)は、家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手である。成長に向けた重点施策として、大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化、成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みなどを推進している。22年8月期は大幅増益予想としている。家庭用ゲームソフト開発が高水準に推移し、開発体制の充実・強化、原価低減、前期発生した一時費用の一巡なども寄与する見込みだ。クラウドゲームの普及本格化などでゲーム市場の拡大が予想されており、先行投資も奏功して収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響してやや軟調だが下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手
家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手で、デジタルエンタテインメント事業(ゲームソフト関連、モバイルコンテンツ関連、パチンコ・パチスロ関連などデジタルコンテンツの企画・開発・運営の受託)、その他事業(SI事業、家庭用カラオケ楽曲配信事業、新規事業の創出)を展開している。
21年8月期の売上高構成比はデジタルエンタテインメント事業が92%、その他事業が8%、営業利益構成比はデジタルエンタテインメント事業が84%、その他事業が16%だった。
収益は、開発業務の進行に合わせて受け取る開発売上、コンテンツ配信後の運営に伴う運営売上、コンテンツ販売数量に基づくロイヤリティ売上である。なお22年8月期から収益認識会計基準を適用するが、一部の大型案件に対しては21年8月期から工事進行基準を適用していたため、収益認識会計基準適用による22年8月期業績への影響は無いとしている。
複雑化・多様化するゲーム市場において、豊富なパイプライン展開を可能とする多彩な技術ポートフォリオ、長年の実績とノウハウに基づく信用力、開発売上とストック型の運営売上を持つ安定的なビジネスモデルを特徴としている。
21年11月には、バンダイナムコスタジオと共同開発した家庭用ゲームソフトの「SCARLET NEXUS」(21年6月発売)が、The Game Awards 2021のBest Role Playing部門にノミネートされた。
なお、こどもたちの命を守りたいと願う企業・団体が一体となり、京都のこどもの交通事故防止を目的に生まれた「京のこどもを守るプロジェクト」に協賛している。21年度も、交通安全グッズとしてスウェーデン生まれのリフレクター(反射板)「グリミス」を京都市交通対策協議会に寄付した上で、9月1日「こどもの交通事故防止推進日」を皮切りに、京都府内のさまざまな場所で配布した。21年1月には令和2年度京都市輝く地域企業表彰「地域企業輝き賞」および「地域企業輝き特別賞」を受賞している。
また22年1月には、同社ホームページが日興アイ・アールの「2021年度全上場企業ホームページ充実度ランキング調査」で優良サイト、ブロードバンドセキュリティの「Gomez IRサイト総合ランキング2021」で優秀企業:銅賞に選定されたと発表している。
■開発体制強化を推進
成長に向けた重点施策として、大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化、成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みを推進し、人事・教育・採用の改革を継続する方針だ。
大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化では、各スタジオが獲得した開発技術やノウハウの全社展開、プロジェクト運営の品質向上、データ分析チームの強化を推進する。
成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みでは、ゲーム開発とビジネス系SIの技術の連携を強化して、デジタル社会に対応した新規事業やゲームに限らないエンタテインメント事業に挑戦する。
人事・教育・採用の改革では、職場環境整備や人材教育など積極的な人材投資を継続して実行する。
■22年8月期大幅増益予想
22年8月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年8月期比4.7%増の62億42百万円、営業利益が80.3%増の4億80百万円、経常利益が71.7%増の4億88百万円、親会社株主帰属当期純利益が93.0%増の2億86百万円としている。配当予想は21年8月期と同額の25円(第2四半期末12円50銭、期末12円50銭)である。
第1四半期は、売上高が前年同期比77.0%増の13億70百万円、営業利益が1億20百万円の黒字(前年同期は1億11百万円の赤字)、経常利益が1億30百万円の黒字(同1億09百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が79百万円の黒字(同85百万円の赤字)だった。家庭用ゲームソフト開発需要が高水準に推移して大幅増収となり、原価低減による売上総利益率改善なども寄与して各利益は黒字転換した。
デジタルエンタテインメント事業は売上高が2.0倍の12億86百万円で営業利益が97百万円(同1億16百万円の赤字)だった。売上高の内訳はゲームソフト関連が家庭用ゲームソフトの複数の大型案件の進行で10.7倍の7億93百万円、モバイルコンテンツ関連が運営売上の減少で5.7%減の4億81百万円、パチンコ・パチスロ関連が79.7%減の11百万円だった。
その他事業は売上高が37.9%減の83百万円で営業利益が5.2倍の23百万円だった。SI事業の案件が減少して減収だが、家庭用カラオケ楽曲配信事業のロイヤリティ売上が高水準に推移して損益改善した。
通期予想は据え置いている。売上面は家庭用ゲームソフト開発案件の増加などで堅調に推移し、利益面は増収効果に加えて、前期に発生した開発改修対応費用や新型コロナ感染予防対策費用などが一巡し、さらに開発体制の充実・強化や原価低減効果なども寄与して大幅増益予想としている。
セグメント別の売上高は、デジタルエンタテインメント事業が7.2%増の58億70百万円(売上構成比はゲームソフト関連が70.0%、モバイルコンテンツ関連が29.7%、パチンコ・パチスロ関連が0.2%)で、その他事業が22.6%減の3億72百万円の計画としている。
デジタルエンタテインメント事業は家庭用ゲームソフト開発案件の需要が高水準に推移する見込みだ。開発金額が50百万円以上の大型プロジェクトは、21年8月期の合計9件(ゲームソフト関連が5件、モバイルコンテンツ関連が3件、パチンコ・パチスロ関連が1件)から、合計11件(ゲームソフト関連が8件、モバイルコンテンツ関連が3件)に増加する見込みである。その他事業は、家庭用カラオケ楽曲配信事業のロイヤリティ売上が堅調だが、新規事業模索の活動を進めるため減収見込みとしている。
通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高21.9%、営業利益25.0%、経常利益26.6%、親会社株主帰属当期純利益27.6%と概ね順調だった。クラウドゲームの普及本格化などでゲーム市場の拡大が予想されており、先行投資も奏功して収益拡大を期待したい。
■株価は下値固め完了
株価は地合い悪化も影響してやや軟調だが下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。2月24日の終値は711円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は約19倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS790円51銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約55億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)