- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 建設技術研究所は調整一巡、22年12月期減益予想だが保守的
建設技術研究所は調整一巡、22年12月期減益予想だが保守的
- 2022/2/28 09:13
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東1、新市場区分プライム)は総合建設コンサルタント大手である。グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、グループ協業による事業拡大などの重点施策に取り組んでいる。21年12月期は受注が好調に推移して大幅増収増益だった。22年12月期は事業拡大に向けた積極投資で減益予想としている。ただし保守的だろう。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境が良好であり、上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値更新の展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■総合建設コンサルタント大手
総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。20年8月には連結子会社の建設技研インターナショナルの株式を追加取得して完全子会社化した。海外では英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)を連結子会社としている。
21年12月期のセグメント別構成比は、売上高が国内建設コンサルティング事業72%、海外建設コンサルティング事業28%、利益(調整前営業利益)が国内建設コンサルティング事業86%、海外建設コンサルティング事業14%だった。収益面では公共事業への依存度が高い。
■グローバルインフラソリューショングループ目指す
グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、21年6月にCTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」を策定した。目標数値には、30年度売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。
中長期ビジョンの目標達成に向けた第1ステップとして、21年12月に中期経営計画2024を策定した。目標数値には24年12月期の受注高850億円、売上高850億円、営業利益68億円、営業利益率8%、ROE10%以上、および建設技術研究所単体ベースの売上高550億円、営業利益率10%、社員数2300人を掲げた。
セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が630億円、売上高が630億円、営業利益が60億円、営業利益率が9.5%、海外建設コンサルティング事業の受注高が220億円、売上高が220億円、営業利益が8億円、営業利益率が3.6%の計画としている。
CTIグループ船隊の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。
21年12月にはサステナビリティ委員会を設置した。さらに、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員の成長と自律を縫合した「CTIウェルビーイング」に取り組むため、社内宣言ならびにCTIウェルビーイング基本方針を策定した。また22年1月には、企業活動を通じて次世代育成に貢献するため一般事業主行動計画を策定した。
■新分野・新事業への展開を加速
21年9月には、グループ会社の日総建、およびファインコラボレート研究所との3社間で業務提携した。既存業務での連携、新分野の創出、相互の人材交流を行う。
22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。また、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー<4667>および埼玉工業大学との5者共同で、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された。22年2月には陸地コンサルタント(広島県東広島市)と業務提携した。
2月24日には、東京都豊島区が実施するPPP事業(公民連携事業)である旧第十中学校跡地への野外スポーツ施設整備・管理運営事業において、地域企業を含むコンソーシアムの代表企業として事業を実施すると発表した。
■22年12月期減益予想だが保守的
21年12月期の連結業績は、売上高が20年12月期比14.1%増の744億09百万円、営業利益が37.5%増の69億91百万円、経常利益が36.4%増の71億18百万円、親会社株主帰属当期純利益が22.5%増の44億71百万円だった。配当は20年12月期比15円増配の60円(期末一括)とした。
国内、海外とも受注が好調に推移して大幅増収増益だった。グループ全体の受注高は22.2%増の844億48百万円だった。受注高、売上高、各利益とも過去最高を更新した。
国内建設コンサルティング事業は受注高が15.1%増の586億60百万円、完成業務収入が9.6%増の536億96百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が19.9%増の60億32百万円だった。防災・減災、国土強靭化、維持管理をはじめとする5つの重点分野の受注が拡大した。技術者単価の引き上げや契約ロットの大型化が進展して採算性も向上した。
海外建設コンサルティング事業は受注高が42.1%増の257億87百万円、完成業務収入が27.8%増の207億13百万円で、利益が9億51百万円(20年12月期は45百万円)だった。英国Waterman Groupの英国公共部門の業績回復が牽引した。なお建設技研インターナショナルは東南アジアで大型案件を受注したが、渡航制限の影響を受けている。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が127億41百万円で営業利益が4億41百万円、第2四半期は売上高が224億81百万円で営業利益が31億24百万円、第3四半期は売上高が163億80百万円で営業利益が14億38百万円、第4四半期は売上高が228億07百万円で営業利益が19億88百万円だった。
22年12月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載)は、売上高が780億円、営業利益が64億円、経常利益が65億円、親会社株主帰属当期純利益が43億円としている。配当予想は21年12月期と同額の60円(期末一括)としている。
収益認識会計基準適用前の21年12月期との単純比較で、売上高は4.8%増、営業利益は8.5%減、経常利益は8.7%減、そして親会社株主帰属当期純利益は3.8%減となり、増収減益の形だ。グループ合計の受注高は6.5%減の790億円の計画としている。なお環境総合リサーチを新規連結する。
セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が3.9%減の564億円、売上高が3.9%増の558億円、営業利益が3.9%減の58億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が12.4%減の226億円、売上高が7.2%増の222億円、営業利益が37.0%減の6億円の計画としている。
22年12月期の受注環境としては、海外におけるコロナ禍を含む不安定な情勢が継続し、事業の中断・遅延や新規業務発注の見送り・延期などの不透明感があり、さらにグループ全体としてのエネルギー分野など新事業・分野への展開の注力、労働時間削減などを考慮して、受注を抑制する方針としている。
売上高については増収を見込んでいる。収益認識会計基準適用の影響として、従来方法(完成基準)に比べて第1四半期(1~3月)の売上構成比が高まる見込みとしている。営業利益については、事業拡大に向けた積極投資で研究開発費や人件費が増加するため減益予想としている。
ただし保守的だろう。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境が良好であり、上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して昨年来安値更新の展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。2月25日の終値は2245円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS304円11銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の60円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2734円99銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約318億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)