マーチャント・バンカーズは調整一巡、積極的な事業展開で収益拡大基調

 マーチャント・バンカーズ<3121>(東2、新市場区分スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連を展開し、成長ドライバーとしてNFT(非代替可能性トークン)などブロックチェーン・テック関連ビジネスの拡大に注力している。さらに2月21日には中小型の上場株式を対象とする投資事業を強化するとリリースしている。22年3月期はマーチャント・バンキング事業が牽引して大幅増収増益予想としている。第3四半期累計は大幅増収増益と順調だった。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏でモミ合う展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

 マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。21年3月期の営業利益構成比(調整前)はマーチャント・バンキング事業が127%、オペレーション事業が▲27%だった。オペレーション事業は新型コロナウイルスの影響を受けた。

■不動産・企業投資関連

 マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。

 不動産投資関連は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有(21年3月期末時点で全国に25棟の不動産賃貸ビルを保有)し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。さらに年間賃料収入10億円を目標に掲げて、大都市部の居住用不動産取得を強化している。22年1月には大阪府八尾市の賃貸マンションを取得した。また、賃貸用不動産取得・入替によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保にも取り組む方針だ。

 20年8月には柏舟投資(香港の柏舟国際諮詢の子会社)と日本での不動産開発や不動産投資に関して業務提携、20年10月には香港の中港日有効發展有限公司と日本における中国・香港・ベトナムの富裕層向け投資用分譲マンションの開発・販売で業務提携、20年12月には特別目的会社MBK医療投資を設立、21年4月には香港証券取引所上場会社のL&A社と業務提携した。

 21年10月には、不動産ファンド組成・運営に取り組むととともに、案件ごとに共同事業者とSPC(特別目的会社)を組成する取り組みを開始すると発表した。第三者の資金を活用して規模の大きい案件も積極的に手掛ける方針としている。また金融機関と連携して不動産バイアウト&リース事業を開始すると発表した。22年1月には在日中国人向け不動産事業(販売・賃貸仲介サービス)を開始すると発表した。

 企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

 22年1月には国立大学法人滋賀医科大学と、産学連携プロジェクトとして糖尿病治療薬開発に取り組むために、共同研究講座の設置に係る検討開始で基本合意した。そして事業推進主体となる創薬ベンチャーとしてバイオジップコードを設立した。

 2月7日には、セナードと業務提携して販売しているコンプライアンスチェックシステム「minuku(ミヌク)」を大幅バージョンアップし、ロボット検索機能を搭載して販売開始すると発表している。さらに2月21日には、中小型の上場株式を対象とする投資事業を強化するとリリースしている。第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。

■成長ドライバーとしてブロックチェーン・テック関連を強化

 成長ドライバーとして子会社MBKブロックチェーンのブロックチェーン・テック関連の拡大に注力している。STO(Security Token Offering)によって決済・送金等の金融サービス、不動産流動化、資金調達などを展開する。不動産などの資産に裏付けされたMBKトークンによって安心・安全・透明な取引が可能になる。

 具体的には、エストニア暗号資産交換所のANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)プラットフォーム関連を強化する。

 19年5月エストニアで仮想通貨交換所CRYPTOFEX運営のCR社を買収、19年7月仮想通貨交換所のブランド名をANGOO FinTechに変更、20年2月ANGOO FinTechサービス開始、20年5月MBKブロックチェーンがANGOO FinTech運営業務を受託、20年10月バルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)にANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。

 21年3月にはMBKブロックチェーンがブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。また香港の子会社MBK ASIA LIMITEDにおいてトークン「MBK COIN」を発行するとともに、不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」の海外投資家専用不動産取引プラットフォームを構築した。21年4月にはMBKブロックチェーンが、お宝グッズのNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営を開始した。21年5月には暗号資産ハッキングに対するセキュリティ技術を手掛けるStudioMakyuと業務提携した。

 21年8月にはエストニアの子会社EJTC社と連携し、エストニアの企業に対して、日本企業を対象とした投資やM&Aに関するアドバイザリーを開始した。第1号案件として、遠隔医療システム開発のVIVEO Health社の日本市場進出ための日本企業との資本提携に取り組む。また第2号案件として、医療関連アプリ開発のCognuse社の日本企業への投資に取り組む。

 21年9月には不動産バイアウト&リースの開始を発表した。幅広い物件を対象に金融機関と協力し、取得する物件は安全で比較的小さいロットの投資案件として不動産テックを通じて紹介していく。また不動産NFTに本格的に取り組むため、NFTプラットフォーム開発の世界と業務提携した。第1号案件として山中湖山荘をNFT化する。

 21年11月には、エストニアの子会社EJTC社がNasdaq Baltic上場会社(21年3月上場)としての信用力を活かして日本の金融機関の協力体制を確保したため、不動産事業として日本国内のマンション取得を進めると発表した。第1号案件として21年10月に兵庫県神戸市内のマンションを購入した。さらに21年12月にはEJTC社がエストニアの不動産ファンドと提携し、エストニアでの不動産事業を本格的に展開すると発表した。

 また21年11月にはMBKブロックチェーンが「NFTバンカーズ」をリニューアルオープンした。世界的に人気のあるジャパニーズキャラクターを取り揃えるなどコンテンツを強化して、世界マーケットに向けた展開を本格化させる。子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナーも「NFT LaFan」としてリニューアルオープンした。

 22年1月には、障がい者アーティストを発掘・育成・支援するパラリンアートに取り組む一般社団法人障がい者自立推進機構とオフシャルパートナー契約を締結し、「NFT LaFan」においてパラリンアート作品の販売を開始した。

■オペレーション事業は活性化を推進

 オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。ホテル運営は撤退した。

 連結子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化している。持分法適用関連会社のアビスジャパンはLED照明・節水装置の製造・販売・設置工事を主力として、空き家対策事業、電力小売事業、非接触式AI検温システムの販売も展開している。

 20年7月には人工知能分野のiFLYTEKの日本法人AISと日本市場でのマーケティングで業務提携、20年11月にはアスミ建設と業務提携、21年3月には反社会的勢力データベース「minuku」のセナードと業務提携して企業のリスクマネジメントやコンプライアンスをサポートするシステムの企画・販売を開始、21年5月には邦徳建設(千葉県松戸市)と業務提携した。

 22年1月にはアビスジャパンと業務提携して太陽光発電事業への取り組みを開始すると発表した。太陽光発電事業の売電収入によって収益基盤強化を推進する。

■新中期経営計画で24年3月期営業利益10億円目標

 新中期経営計画「Develop the New Market」では、最終年度24年3月期の目標値(21年8月に売上高を上方修正)として、売上高30億円(マーチャント・バンキング事業の不動産関連15億円、海外投資・エストニア関連6億50百万円、ネット販売関連1億50百万円、オペレーション事業7億円)、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益5億80百万円、EPS20円80銭、1株当たり配当金7円、配当性向33.7%を掲げている。

 不動産関連およびオペレーション事業で得られる安定収益をベースとして、企業投資関連やブロックチェーン・テック関連(不動産テックプラットフォーム、メディテックプラットフォーム、NFTプラットフォーム)の拡大に注力する方針だ。

■22年3月期3Q累計大幅増収増益、通期も大幅増収増益予想

 22年3月期連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし、21年6月28日に上方修正)は、売上高が21年3月期比62.0%増の26億50百万円、営業利益が2.0倍の4億50百万円、経常利益が2.6倍の3億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億30百万円(21年3月期は44百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の2円(期末一括)である。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比2.2倍の22億88百万円、営業利益が3億08百万円(前年同期は3百万円)、経常利益が2億17百万円(同61百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億49百万円(同1億97百万円の赤字)だった。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、販管費の抑制も寄与して大幅増収増益だった。

 マーチャント・バンキング事業は売上高が4.1倍の23億11百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が2.4倍の5億20百万円だった。賃貸用不動産から得られる賃貸収入が安定的に推移したことに加えて、営業投資有価証券として保有するCN Innovations Holdings Limitedの売却、収益不動産2物件(北海道函館市の福祉施設、大阪市天王寺区の収益用マンション)の売却など、国内外から得られる投資収益も寄与して大幅増収増益だった。なおブロックチェーン事業においては、第2四半期にNFT売買プラットフォームを正式オープンした。

 オペレーション事業は売上高が2.5%増の5億05百万円で利益が45百万円の赤字(前年同期は85百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響が徐々に和らいで収益回復傾向である。子会社で催事販売・通信販売を展開するケンテンも堅調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が12億28百万円で営業利益が3億01百万円、第2四半期は売上高が7億56百万円で営業利益が28百万円、第3四半期は売上高が3億04百万円で営業利益が21百万円の赤字だった。第1四半期と第2四半期に投資収益を計上した。

 通期予想は据え置いている。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引して大幅増収増益予想としている。マーチャント・バンキング事業では、回収した資金によって収益不動産の取得や連結貢献できる企業M&Aを積極推進する方針だ。ブロックチェーン・テック関連では、NFT売買プラットフォームが正式オープンして展開が本格化する見込みだ。オペレーション事業はコロナ禍の影響が和らいで収益回復が見込まれるとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は安値圏でモミ合う展開だが、調整一巡して出直りを期待したい。2月25日の終値は281円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円24銭で算出)は約34倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS123円80銭で算出)は約2.3倍、時価総額は約83億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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