川崎近海汽船は上値試す、22年3月期大幅増収増益予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 川崎近海汽船<9179>(東2、新市場区分スタンダード)は近海輸送と内航輸送を主力として、再生可能エネルギー分野の洋上風力発電向け作業船やバイオマス関連輸送の取り組みも強化している。22年3月期は近海部門の市況上昇効果などで大幅増収増益予想(2月9日に親会社株主帰属当期純利益予想および期末配当予想を上方修正)としている。更なる上振れの可能性もありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は急反発して1月の昨年来高値に接近している。指標面は依然として割安感が強い。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■近海輸送と内航輸送が主力

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、日本近海における海洋資源開発・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船事業(OSV部門)を展開している。

 21年3月期売上高構成比は近海部門が26%、内航部門が71%、OSV部門が4%、その他が0%、営業利益構成比は近海部門が▲72%、内航部門が283%、OSV部門が▲111%、その他が0%だった。

 収益面では輸送量、運賃市況、為替、燃料油価格、および燃料油価格変動に伴う燃料調整金などが影響する特性がある。また季節要因として第1四半期は入渠費用が増える傾向がある。

 なお20年12月には全社的なDX推進に向けてDX委員会を設置、21年1月には環境への対応に向けて次世代環境対応ワーキンググループを設置、21年4月には安全運航推進員会を環境・安全運航推進委員会に改称した。

■24年3月期経常利益36億円目指す

 21年12月に策定した2021年度中期経営計画(コロナ禍や市況の動向を考慮し、20年10月策定の2020年度中期経営計画を更新して策定)では、目標値に24年3月期売上高416億円(近海部門128億円、その他含む内航部門270億円、OSV部門18億円)、営業利益36億50百万円(近海部門9億円、その他含む内航部門27億円、OSV部門50百万円)、経常利益36億円、親会社株主帰属当期純利益25億円を掲げている。

 前提は為替が1米ドル=110円、燃料油価格が7万5000円/KLで、投資計画は、24年4月以降竣工予定の新造船建造資金を含めて、21年度から23年度の3年間で合計88億18百万円(22年3月期41億53百万円、23年3月期33億53百万円、24年3月期12億67百万円)としている。

 近海部門は前回予想を上回る運賃や貸船料の水準となっている。計画の最終年度に向けて徐々に市況が軟化するが、ここ暫くは現行市況が継続すると想定し、市況にあった船隊整備の継続、商権の維持、コストの削減をなどで収支の安定を目指す。

 内航部門のフェリー輸送では、22年2月1日付で宮古(八戸)~室蘭航路を休止して八戸~苫小牧航路に集中し、効率的な航路運営に取り組む。定期船輸送では、紙製品などの太宗貨物が減少するなか、新規貨物の獲得やコストの削減に取り組む。不定期船輸送では、石灰石および石炭の各専用船の安全運航によって商権の維持に努めるとともに、新規案件の獲得にも取り組む。

 OSV部門は、これまでのSEP船(自己昇降式作業台船)支援および資源探査などに取り組むとともに、23年度から本格化する洋上風力事業の支援についても積極的に参画する。21年6月には川崎汽船と共同で設立した洋上風力発電向け作業船事業会社ケイライン・ウインド・サービスが営業開始した。

 さらに再生可能エネルギー産業を重要な事業分野の一つに位置付けて、バイオマス関連輸送などへの取り組みも強化している。21年9月には山口県下関市における長府バイオマス発電所プロジェクトに参画(石油資源開発、MOT総合研究所、東京エネシス、長府製作所、および同社の5社)すると発表した。本発電所向け燃料輸送を受託する。22年6月着工、25年1月運転開始予定である。

 22年1月には川崎汽船との合弁会社であるケイライン・ウインド・サービスが、ジャパンマリンユナイテッド、日本シップヤード、東亜建設工業の3社とともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募したグリーンイノベーション基金事業「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」に共同で応募して採択された。

■22年3月期大幅増収増益予想

 22年3月期の連結業績予想(21年7月30日に上方修正、21年10月29日に2回目の上方修正、21年12月24日に3回目の上方修正、22年1月31日に4回目の上方修正)は、2月9日に特別利益計上に伴って親会社株主帰属当期純利益を5億円上方修正して、売上高が21年3月期比15.8%増の429億円、営業利益が6.8倍の27億50百万円、経常利益が14.4倍の27億円、親会社株主帰属当期純利益が24億円(21年3月期は1億12百万円の赤字)としている。特別利益に固定資産譲渡益(旅客フェリー船1隻売却)7億20百万円を計上する。

 配当予想(21年12月24日に期末50円上方修正)も、2月9日に期末50円上方修正して、21年3月期比100円増配の200円(第2四半期末50円、期末150円)とした。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比15.5%増の321億24百万円、営業利益が2.5倍の24億46百万円、経常利益が3.3倍の24億60百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.5倍の17億06百万円だった。特別利益では前年計上の固定資産売却益4億06百万円と違約金収入1億30百万円が剥落し、特別損失では前期計上の用船契約解約金3億83百万円と投資有価証券評価損43百万円が剥落している。

 近海部門の市況上昇などで大幅増収増益だった。収益認識基準適用の影響額として売上高が1億42百万円減少、売上原価が55百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ87百万円減少している。影響は軽微である。

 近海部門は売上高が37.4%増の91億95百万円で営業利益が10億78百万円(前年同期は1億円の赤字)、内航部門は売上高が9.2%増の217億24百万円で営業利益が14.1%増の15億26百万円、OSV部門は売上高が1.9%減の12億01百万円で営業利益が1億58百万円の赤字(同2億71百万円の赤字)だった。

 近海部門は、バルク輸送がロシアにおける滞船の影響を受けたため全体としても貨物輸送量が減少したが、市況上昇が継続して運賃収入や貸船料が大幅に増加した。内航部門は輸送量が増加し、入渠費や減価償却費の減少も寄与した。コロナ禍でも定期船輸送・不定期船輸送とも荷動きが堅調に推移し、フェリー輸送の旅客数や乗用車数も増加した。OSV部門は海洋調査業務が減少したため減収だが、運航費の減少などで赤字縮小した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が95億15百万円で営業利益が1億24百万円の赤字、第2四半期は売上高が106億15百万円で営業利益が8億52百万円、第3四半期は売上高が119億94百万円で営業利益が17億18百万円だった。季節要因として第1四半期は入渠費用が増える傾向がある。

 通期の売上高、営業利益、経常利益は前回予想(22年1月31日に4回目の上方修正)を据え置き、近海部門の市況上昇などで大幅増収増益予想としている。第4四半期以降の前提は、為替が1ドル=115円、燃料油価格が7万8200円K/Lとしている。通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75%、営業利益が89%、経常利益が91%であり、通期予想は更なる上振れの可能性がありそうだ。収益拡大を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は急反発して1月の昨年来高値に接近している。指標面は依然として割安感が強い。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。3月2日の終値は4135円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS817円58銭で算出)は約5倍、今期予想配当利回り(会社予想の200円で算出)は約4.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS8987円27銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約122億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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