クレスコは反発の動き、22年3月期は上方修正して増収増益・増配幅拡大

 クレスコ<4674>(東1、新市場区分プライム)は、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力として、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。22年3月期は2月28日に上方修正し、従来予想に比べて増収増益幅および増配幅が拡大する見込みとなった。顧客のIT投資が高水準で、生産性向上効果なども寄与する。積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調が期待できるだろう。株価は地合い悪化の影響で水準を切り下げたが、調整が一巡し、上方修正も好感して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

 ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力として、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。22年3月期からセグメント区分を、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)に変更した。

 なお21年3月期のセグメント別構成比は、売上高がソフトウェア開発事業83%(金融・保険分野30%、公共・サービス分野21%、流通・その他分野32%)、組込型ソフトウェア開発事業17%(通信システム分野1%、カーエレクトロニクス分野7%、情報家電等・その他分野8%)、その他事業(商品・製品販売等)0%、営業利益構成比(連結調整前)はソフトウェア開発事業76%、組込型ソフトウェア開発事業24%、その他▲0%だった。

 収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。配当方針は、連結経常利益をもとに特別損益を零とした場合に算出される親会社株主帰属当期純利益の30%相当を目途に、継続的に実現することを目指すとしている。

■働き方改革や健康経営を推進

 中期経営計画では24年3月期の目標値として売上高500億円、営業利益50億円、ROE15%以上を掲げている。新たなビジネスの柱を生み出すための重点戦略として、デジタルソリューションの強化、機動的経営の進化、人間中心経営の深化、コアビジネス領域をより強固なものにするための基本戦略として、ITサービスの拡大、品質の強化、技術の強化を推進している。

 20年9月には社内デジタル変革(DX)を加速させるため「ニューノーマルな働き方」に舵を切ると発表した。テレワーク体制を強化して社員の生産性向上を目指すとともに、本社や開発センターのオフィススペースの最適化、在宅勤務手当新設や通勤手当見直しなどにより、コスト削減も推進する。

 21年3月には、経済産業省の健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2021」に選定された。21年6月には、新型コロナウイルス感染症に係る支援(1億円の寄付)が評価されて日本赤十字社から「金色有功章」の楯を拝受した。また11月10日には、働き方改革を通じて生産性革命に挑む先進企業を選定する日本経済新聞社「第5回 日経スマートワーク経営調査」で3つ星の評価を獲得したと発表している。

 なお22年4月1日付で代表取締役の異動を予定している。根元浩幸・現代表取締役社長執行役員が代表取締役会長に、冨永宏・現取締役専務執行役員が代表取締役社長執行役員に就任する。長期ビジョンおよび中期経営計画を迅速に推し進めるべく経営体制の一層の強化を図り、さらなる成長と企業価値向上を目指す。

 さらに22年2月には、コーポレートブランドロゴの変更(22年4月1日変更予定)を発表した。第2創業期に向けた意気込みを示し、更なる企業価値の向上を目指すとしている。また子会社クリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更(22年5月1日予定)する。

■M&Aや自社オリジナル製品でデジタルソリューションを拡大

 デジタルソリューションの拡大に向けてM&Aも積極活用している。20年2月には北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にはシステムインテグレーターのエニシアスを子会社化、21年7月には組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化した。22年1月には子会社のアルス、エヌシステム、ネクサスの合併(日程・合併方法などは決定次第開示)を発表した。3社のノウハウおよびリソースを統合してビジネスの拡大を推進する。

 オリジナル製品・サービスでは、IoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。21年7月にはCreageをマイクロソフトのAzure対応にバージョンアップした。

 21年8月には、東京都教育委員会および一般財団法人東京学校支援機構(TEPRO)と協定を締結して、都内の公立小中学校のデジタル活用支援に参画(22年1月から開始)した。また、画像処理AI学習データ作成時のアノテーション(データに対して関連する情報を付加すること)作業負荷を軽減する手法の特許を取得した。

 21年9月には、子会社のクリエイティブジャパンが、大学・高専・研究所での研究・開発用として、低価格の「ELTRESアドオンIoT開発キット」の提供を開始した。コロナ過で厳しい研究・教育環境への貢献でIoT普及を推進する。

 なお21年12月には、日本眼科AI学会主催「第2回日本眼科AI学会総会」内のプログラム「眼科AIコンテスト」において、同社技術研究所に所属する社員2名が上位入賞したと発表している。

■22年3月期は上方修正して増収増益・増配幅拡大

 22年3月期の連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響なし)は、2月28日に上方修正し、従来予想に比べて増収増益幅および増配幅が拡大する見込みとなった。修正後の連結業績予想は、売上高が21年3月期比10.8%増の440億円、営業利益が27.4%増の44億40百万円、経常利益が12.2%増の46億円、親会社株主帰属当期純利益が20.7%増の31億80百万円とした。配当予想は期末4円上方修正して、21年3月期比6円増配の44円(第2四半期末20円、期末24円)とした。

 なお第3四半期累計は、売上高が前年同期比11.7%増の324億06百万円、営業利益が37.9%増の32億92百万円、経常利益が16.6%増の36億41百万円、親会社株主帰属四半期純利益が16.9%増の25億64百万円だった。

 受注が好調(受注高は15.7%増の334億53百万円)に推移し、生産性向上や不採算プロジェクト極小化なども寄与して大幅増益と順調だった。営業外収益ではデリバティブ評価益が減少(前期は3億95百万円計上、今期は22百万円)し、特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期は2億50百万円計上、今期は1億72百万円計上)した。

 ITサービス事業(22年3月期セグメント区分変更、前年比は組替後)は、売上高が10.3%増の309億72百万円(エンタープライズが6.9%増の134億25百万円、金融が10.1%増の100億03百万円、製造が17.3%増の75億42百万円)で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が29.4%増の41億92百万円だった。エンタープライズは人材紹介・派遣、運輸、旅行・ホテル、建設・不動産の受注が回復した。金融は保険の大型案件受注に加えて、証券・クレジットカード等も増加した。製造は機械・エレクトロニクスが増加し、子会社OECの連結も寄与した。

 デジタルソリューション事業は、売上高が51.7%増の14億34百万円で利益が42.0%増の1億07百万円だった。クラウドサービス「Creage」やRPAライセンス販売が増加し、子会社における大型ソリューション案件も寄与した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が98億70百万円で営業利益が7億99百万円、第2四半期は売上高が111億91百万円で営業利益が12億18百万円、第3四半期は売上高が113億45百万円で営業利益が12億75百万円だった。

 通期は従来予想に対して売上高が16億円、営業利益が5億90百万円、経常利益が4億円、親会社株主帰属当期純利益が3億30百万円、それぞれ上回る見込みとなった。顧客のIT投資が高水準に推移し、生産性向上効果や第2四半期に子会社化して新規連結したOECも寄与する見込みだ。積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調が期待できるだろう。

■株価は反発の動き

 株価は地合い悪化の影響で水準を切り下げたが、調整が一巡し、上方修正も好感して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。3月2日の終値は1876円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS151円14銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の44円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS926円96銭で算出)は約2.0倍、時価総額は約431億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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