ベステラは調整一巡、受注環境良好で収益拡大基調

 ベステラ<1433>(東1、新市場区分プライム)は鋼構造プラント設備解体工事を展開し、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。22年1月期は大型工事が順調に進捗して大幅増収増益予想(2月16日に上方修正)としている。脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想され、中期的に受注環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げたが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。なお3月11日に22年1月期決算発表を予定している。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。

 製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどである。

 21年1月期の完成工事高の構成比は、電力が18%、製鉄が37%、石油・石化が34%、ガスが2%、子会社3Dビジュアルが3%、その他が6%だった。構成比は大型案件によって変動する。また、顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、下期に完成工事高が増加する傾向が強い。

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。

 20年2月には、インターアクション<7725>から3Dスキャン・3Dモデリング事業およびプラント設計事業を譲り受け、新会社3Dビジュアルとして事業を開始した。

 21年12月には、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤(東京都渋谷区)を子会社化した。

 なお20年9月にリバーホールディングスを持分法適用関連会社化したが、リバーホールディングスがタケエイと21年10月1日付で共同持株会社TREホールディングス<9247>を設立して経営統合したため、リバーホールディングスは持分法適用関連会社から除外された。業務提携関係は継続するとしている。

■プラント解体需要は中期的に増加予想

 第5次エネルギー基本計画や、脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想されている。中期的に受注環境は良好である。

 中期経営計画2025(22年1月期~26年1月期、ローリング方式)では、目標値に26年1月期売上高100億円、営業利益10億円、経常利益10億72百万円、当期純利益7億52百万円、売上高営業利益率10.0%、ROE13.0%、EPS91円を掲げている。配当性向の目安は40%としている。

 重点戦略として、競争力のある特許工法による解体方法の提案・実用化、元請案件の受注拡大による収益力向上、コーポレートブランディングの強化、グループ企業との連携強化、協業先企業との連携強化、施工管理体制の強化、M&Aも活用した重要技術の内製化、DX(検査ロボット活用、設計・施工業務の変革)などを推進する。

 なお中期経営計画の達成に向けた資金調達として、第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行した。割当先の投資信託(Hayate Japan Unit Trust)は、企業への直接の資金提供(真の直接金融)を設立段階から謳った日本初の投資信託で、今回の案件が第1号となる。

 調達資金は、プラント解体技術と相乗効果が高い4分野(脱炭素化に向けた設備の廃止措置に関する分野、風力発電設備の解体に関連する分野、3D事業価値追求のためのデジタル関連分野、解体施工技術の高度化を目的とした専門工事分野)へのM&A投資、および規模拡大に対応した営業担当者・採用担当者等の増員や拠点拡充などに充当する。また事業成長のための財務基盤の強化を推進する。

 21年12月には指名・報酬委員会の設置、株主総会の議決権行使の電子化および機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームへの参加、サステナビリティ基本方針制定およびサステナビリティ委員会設置を発表している。コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実・強化を図るとともに、SDGsへの取り組みを強化する。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月4日移行予定の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 中期経営計画2025で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、更なる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により、流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

■22年1月期は工事進捗順調で大幅増収増益予想

 22年1月期の連結業績予想(21年10月1日に経常利益と親会社株主帰属当期純利益を上方修正、2月16日に売上高・利益とも上方修正)は、売上高が21年1月期比60.2%増の59億円、営業利益が4.8倍の5億90百万円、経常利益が3.9倍の8億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が10.3倍の14億58百万円としている。配当予想は21年1月期と同額の16円(第2四半期末6円、期末10円)としている。

 従来予想に対して、売上高が3億円、営業利益が1億40百万円、経常利益が1億66百万円、親会社株主帰属当期純利益が1億01百万円それぞれ上回り、大幅増収増益予想としている。21年1月期に受注した電力および化学関連の大型案件を中心に工事が順調に進捗し、矢澤(21年12月に子会社化)との事業シナジー効果も順調に推移している。コスト面では工事原材料価格の高騰、工事監督の積極採用による一過性採用費用の増加があったが、コスト管理の徹底などで吸収する。

 なお第3四半期累計は売上高が前年同期比41.5%増の36億55百万円、営業利益が3.8倍の2億43百万円、経常利益が2.8倍の4億46百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.0倍の12億02百万円だった。

 大型工事が順調に進捗し、工事原価率改善効果も寄与して大幅増収増益だった。期首繰越工事高は25億45百万円、受注高は9.8%減の30億84百万円、完成工事高は46.5%増の34億81百万円、期末繰越工事高(受注残高)は2.8%増の21億47百万円となった。営業外収益には持分法投資利益を計上した。またリバーホールディングスがタケエイと経営統合してTREホールディングスが<9247>が新規上場(21年10月1日付)したことに伴う株式移転で、第3四半期の特別利益に企業結合における交換利益12億75百万円を計上した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高13億18百万円で営業利益1億98百万円、第2四半期は売上高10億17百万円で営業利益37百万円の赤字、第3四半期は売上高13億20百万円で営業利益82百万円だった。第2四半期は従業員への特別賞与支給、風力発電設備解体工法開発費用の計上で赤字だったが、業績予想に織り込み済みだった。

 今後は需要拡大が予想される原子力発電所廃止措置関連解体、風車解体などの領域にも受注活動を展開・強化する方針だ。脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想されている。中期的に受注環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年1月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年1月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げたが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。3月3日の終値は1277円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS177円23銭で算出)は約7倍、前期推定配当利回り(会社予想の16円で算出)は約1.3%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS315円08銭で算出)は約4.1倍、時価総額は約112億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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