- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- ゼリア新薬工業は急反発の動き、22年3月期大幅増益予想で再上振れの可能性
ゼリア新薬工業は急反発の動き、22年3月期大幅増益予想で再上振れの可能性
- 2022/3/11 09:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1、新市場区分プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。22年3月期は大幅増益予想としている。海外市場における潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの好調が牽引し、欧州主要国での製造販売権の承継が完了したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアも寄与して利益は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお3月4日に株主優待品コース内容変更をリリース(22年3月末基準日から実施、詳細は会社HP参照)している。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して急反発の動きとなった。戻りを試す展開を期待したい。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
21年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業54%、コンシューマーヘルスケア事業46%、その他0%、営業利益構成比(調整前)は医療用医薬品事業42%、コンシューマーヘルスケア事業55%、その他3%だった。地域別売上比率は日本66%、欧州27%、その他7%だった。
■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコール(協和キリンとの販売提携を終了して20年4月から単独販売)を主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども拡大している。20年9月には鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト(開発コードZ-213、ビフォーファーマ社から導入、静注鉄剤)の販売を開始した。
21年3月期の売上高はアサコールが165億42百万円、エントコートが48億17百万円、アコファイドが16億67百万円、その他が69億95百万円だった。
アサコールの海外展開は、欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中(21年9月時点でドイツ、フランスをはじめとする18ヶ国で販売中)である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。また21年7月にはMenariniを通じて中国での販売を開始した。
アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。なおアステラス製薬<4503>と日本で行っている共同販促を21年3月で終了し、21年4月以降は単独で販促活動を行っている。
子会社のティロッツ社(スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。
また20年11月に、アステラス製薬の英国子会社が欧州を中心に販売しているクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)について、欧州、中東、アフリカ、および独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継する資産譲渡契約(取得額109百万ユーロ)を締結し、21年6月には欧州テリトリーでの製造販売権承継をほぼ完了した。残る地域についても順次承継予定である。
■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力
コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
21年3月期の売上高は、ヘパリーゼ群が75億46百万円、コンドロイチン群が60億79百万円、ウィズワン群が16億35百万円、その他が100億円だった。
事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。
20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。
西洋ハーブ関連では21年12月に、軽度の静脈還流障害による足のむくみを改善する内服薬「ベルフェミン」(OTC医薬品)を発売した。欧州において下肢の静脈疾患(慢性静脈不全症)の治療に伝統的に使用されてきたセイヨウトチノキ種子の乾燥エキスを主成分としている。また過敏性腸症候群を適応症とするコルペルミンの発売も予定している。
22年3月には11種類の美容液成分を配合した高機能オールインワンジェル「イオナ スパ&ミネラル エッセンス ジェルEX」を発売した。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(21年11月4日現在)は以下の通りである。
潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループ品、アサコール)は中国で21年7月販売開始(開発主体であるTillotts Pharma AGが、イタリアのMenariniグループの中国現地法人に独占的販売権供与)した。
Z-338(自社品、アコファイド)は、日本では小児機能性ディスペプシア患者を対象として第3相段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。
高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第3相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。
■アサコールやエントコートの拡大などを推進
収益拡大に向けた重点施策として、医療用医薬品事業ではアサコール高用量製剤の海外販売国拡大、フェインジェクトやエントコートの市場浸透、ティロッツ社の営業体制強化、コンシューマーヘルスケア事業では主力製品に次ぐ製品群の育成、西洋ハーブ剤など特徴ある製品群の市場認知度向上による事業拡大を推進している。
また持続的成長に向けて、消化器領域および既存事業との親和性の高い領域の薬剤導入、M&A、自社製品の海外導出を推進する方針としている。
■22年3月期大幅増益予想で再上振れの可能性
22年3月期の連結業績予想(21年11月1日に利益を上方修正、収益認識会計基準適用のため増減率は収益認識会計基準を遡及適用した21年3月期実績値との比較)は、売上高が21年3月期比13.7%増の600億円、営業利益が52.5%増の53億円、経常利益が62.1%増の52億円、そして親会社株主帰属当期純利益が17.7%増の37億円としている。配当予想は、21年3月期と同額の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。
第3四半期累計は収益認識基準を遡及適用した前年同期実績との比較で、売上高が11.7%増の451億04百万円、営業利益が41.6%増の54億95百万円、経常利益が57.6%増の56億13百万円、そして親会社株主帰属四半期純利益が9.2%増の40億43百万円だった。
医療用医薬品事業が牽引して大幅増収増益だった。なお営業外では為替差損益が好転(前期は為替差損4億25百万円、今期は為替差益1億31百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期は3億75百万円、今期は14百万円)し、前期計上の債務取崩益6億78百万円が剥落した。
医療用医薬品事業は売上高が22.6%増の275億29百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が62.6%増の55億43百万円だった。炎症性腸疾患(IBD)治療剤エントコートはカナダやスペインなど一部地域で苦戦したため減収だったが、主力の潰瘍性大腸炎治療剤アサコールが海外市場で好調に推移し、欧州主要国での製造販売権の承継が完了したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアも増収に貢献した。
コンシューマーヘルスケア事業は売上高が1.9%減の174億55百万円で、利益が13.2%減の35億09百万円だった。ヘパリーゼ群が増収だったが、コンドロイチン群、ウィズワン群、および殺菌消毒薬などの衛生用品が競合の影響などで減収だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高135億48百万円、営業利益12億51百万円、経常利益20億81百万円、第2四半期は売上高150億58百万円、営業利益14億21百万円、経常利益10億35百万円、第3四半期は売上高164億98百万円、営業利益28億23百万円、経常利益24億97百万円だった。
第3四半期累計の進捗率は、売上高が75.2%、営業利益が103.7%、経常利益が107.9%、親会社株主帰属当期純利益が109.3%となり、各利益は通期予想を超過達成している。新型コロナウイルス感染再拡大の影響や為替相場など不透明感を考慮して通期予想を据え置いたが、海外市場における潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの好調が牽引し、欧州主要国での製造販売権の承継が完了したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアも寄与して利益は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈している。なお3月4日に株主優待品コース内容変更をリリース(22年3月末基準日から実施、旧Dコースのコンドロイチン配合夜間集中美容液を、新Dコースとしてスパ発想のオールインワン化粧品に変更、詳細は会社HP参照)している。
■株価は急反発の動き
なお21年11月4日に自己株式取得(上限80万株・18億円、取得期間21年11月5日~22年5月13日)を発表している。
株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して急反発の動きとなった。戻りを試す展開を期待したい。3月10日の終値は2013円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS81円84銭で算出)は約25倍、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1225円69銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約1069億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)