ODKソリューションズは急反発、積極的な事業展開で23年3月期は新たな成長ステージ

 ODKソリューションズ<3839>(東証プライム)は機密性の高い大量データの処理に強みを持つ独立系ITサービス企業である。日本初の大学横断型受験ポータルサイト「UCARO(ウカロ)」を主力として、カスタマーサクセスオートメーションツール「pottos(ポトス)」など新たな領域への展開も推進し、データプラットフォーマーとしての成長を目指している。22年3月期は減益予想だが、23年3月期は積極的な事業展開で、新たな成長ステージに入って収益拡大が期待できるだろう。4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、売り一巡して急反発している。出直りを期待したい。なお4月28日に22年3月期決算発表を予定している。

■機密性の高い大量データ処理に強みを持つ独立系ITサービス企業

 機密性の高い大量データの処理(システム運用)に強みを持つ独立系ITサービス企業である。日本初の大学横断型受験ポータルサイト「UCARO」をベースとする大学入試関連の教育業務を主力としている。

 13年6月に学研ホールディングス<9470>と業務・資本提携し、筆頭株主が大阪証券金融(現日本証券金融)から学研ホールディングスへ移行した。そして19年3月期に大阪証券金融向け運用業務が終了したため、20年3月期以降は大学入試関連の教育業務、及び金融関連の証券・ほふり業務を主力としている。さらに、ファルコホールディングス<4671>と業務・資本提携(16年8月)して進出した医療分野や、カスタマーサクセスオートメーションツール「pottos」といった、新たな領域の一般業務を第3の成長ドライバーと位置付けて事業拡大を図っている。

 子会社のエフプラスは、スマートフォン・タブレット端末向けアプリケーション開発や金融関連システムソリューションを展開している。21年8月には、カスタマーサクセスオートメーションツール「pottos」事業の分社化に向けて、子会社ポトスを設立した。また21年9月には、システム開発・保守管理およびIT技術者派遣のECSを子会社化した。

■事業別にはシステム運用、サービス別には教育業務が主力

 情報処理アウトソーシングサービスの単一セグメントだが、21年3月期の事業別売上高構成比(単体ベース)は、システム運用が96.5%、システム開発・保守が3.2%、機械販売が0.3%だった。収益安定性の高いシステム運用を主力とする長期的・安定的なビジネスモデルである。

 業務(サービス)別売上区分は、教育業務(教育関連サービス)、証券・ほふり業務(金融関連サービス)、一般業務(医療関連サービス、カスタマーサクセス関連サービス)としている。21年3月期の業務別売上高構成比(単体ベース)は、教育業務が67.5%、証券・ほふり業務が19.3%、一般業務が13.2%だった。大阪証券金融向け運用業務が終了した一方で、教育業務が既存顧客との取引深耕や新規受託などで大幅伸長しているため、教育業務の構成比が上昇している。

 なお教育業務は大学入試の運用受託が主力であり、売上高の多くが大学入試業務の終了する3月に計上される。このため全社の売上高及び利益も第4四半期(1月~3月)に偏重する収益特性がある。

■教育関連は大学横断型受験ポータルサイト「UCARO」をベースに展開

 主力の教育関連サービスは、大学入試に関わる全ての業務(入試広報、Web・郵送出願、受験票発送、入試実施、成績処理、合否判定・発表、入学手続、入試統計資料作成などの支援)を一括受託している。1960年代から学校法人の入試センターとして入試関連システムを提供してノウハウを蓄積し、入試広報支援から入学後のリメディアル教育支援まで一貫して担当している強みがある。

 現在は日本初の大学横断型受験ポータルサイト「UCARO」をベースとして事業展開している。大学間の垣根を越えて入試関連のWebシステムサービスを集約し、大学と学生をつなぐ大学受験の共通プラットフォームである。

 「UCARO」は大学の公式ホームページなどで出願時に登録するように紹介されているサービスであり、16年のリリースから約5年で国内総受験者の半数以上が利用するポータルサイトに成長した。同社の収益モデルは大学から業務を受託して年間利用料や従量制のオプション料金などを得るため、受験生はサービスの利用にあたって登録料や利用料を支払う必要はない。大学側はこのサービスを利用することで受験の各プロセスを大学間で共通化することができ、受験生の負荷軽減・利便性向上、大学の業務効率化・コスト削減を実現する。

 「UCARO」の受託校数は18年3月期に40校を突破し、21年12月末時点では86校まで拡大した。Web出願システム受託校数は21年3月期末時点で69校となった。入試関連業務は学内で処理することが一般的だが、DXの流れも背景としてアウトソーシングの動きが活発化している。

 大学入試アウトソーシング業務における志願者データ処理件数は、概ね100万人~110万人で推移(4月1日付の会社リリースで22年3月期の速報値は21年3月期比0.6%増の105.9万人)している。13期連続で大学入学共通テストの志望者数(独立行政法人大学入試センター公表値、21年3月期53.5万人、22年3月期53.0万人)を上回る水準であり、処理件数シェアは民間企業トップである。

 周辺サービスとして19年に開始した保護者向け「UCARO family」は「UCARO」と連携して、保護者が子どものお気に入り大学、受験スケジュール、出願・受験情報、合否結果、手続状況など受験に関する様々な情報を把握できるサービスである。21年3月期末時点の登録者数は20年3月期末比2.5倍超と順調に増加している。

 さらに、教育業界における社会的環境変化に対応するため、筆頭株主である学研グループとの連携やアライアンスも活用して「UCARO」のサービス拡充を推進している。21年4月には学研教育みらいと協業して、入試・リメディアルソリューションサービスを開始した。作問リソース確保や主体性・思考力測定など大学入試領域の課題を解決するとともに、総合型選抜入学者の学力差縮小や学生の文章力向上を図る新サービスである。この他にも、学研メディカル秀潤社と協業の模擬試験向けシステムサービス、リクルートホールディングス<6098>と協業の私立大学向けWeb出願システムなど、各種周辺サービスを提供している。

■金融関連は証券・ほふり業務が主力

 金融関連サービスは、証券・ほふり業務を主力として展開している。大阪証券金融(現日本証券金融)と、だいこう証券ビジネスのシステム開発・運用を約半世紀にわたり手掛けて蓄積した証券バックオフィス業務・証券代行事務のノウハウを活用し、高セキュリティ環境下で大規模かつ長期的なシステム運用や大量データ処理を行っていること、ユーザーニーズに迅速に対応できる機動性と事務代行(BPO)サービス支援できることなどを強みとしている。

 現在は証券会社・金融機関向けに投資家情報管理、注文約定管理、取引結果管理、代金精算に至る業務などに関連して、独自開発の証券総合システム「SENS21」、不公正売買監視システム「WATCH21」、ほふり接続システム、マイナンバー関連サービスなどを提供している。

 証券総合システム「SENS21」は、創業以来培ってきた証券業務に係る知識と技術ノウハウを駆使して独自開発したシステムである。注文から決済に至る証券取引のデータ処理を行い、証券会社のバックオフィス業務をトータルにサポートする。

 不公正売買監視システム「WATCH21」は商品先物取引にも対応している。日本証券業協会及び取引所が定める売買監視基準のほか、各証券会社が定めた任意の抽出基準を設定可能であり、抽出基準に基づく該当事案を自動抽出・継続監視して業務負荷軽減や再発防止につなげる。

 ほふり接続システムは、証券会社等と証券保管振替機構(ほふり)との接続業務等に関するシステムである。約定データを受けて残高更新管理・ほふり向け指図・ほふり向け報告を代行している。マイナンバー関連サービスはSBI―BSと協業して、マイナンバー収集・管理に関する事務代行BPOサービス、マイナンバー管理システム、マイナンバーネット収集システムなどによってトータルにサポートしている。

 なお21年3月期末時点の受託数は、証券総合システム「SENS21」が4社、不公正売買監視システム「WATCH21」が2社、ほふり接続システムが21社、周辺システムが10社、マイナンバー関連サービスが26社となっている。

■一般業務(医療関連、カスタマーサクセス関連)が第3の成長ドライバー

 一般業務は、これまで培ってきたデータ処理ノウハウを活かした新規分野のサービスで、第3の成長ドライバーと位置付けて事業拡大を図っている。

 医療関連サービスでは、ファルコバイオシステムズ(16年8月に業務・資本提携したファルコホールディングスの事業会社)の臨床検査関連システム運用業務、医療システム用タブレット製品の販売やアプリ開発などを展開している。

 カスタマーサクセス関連サービスでは、SaaS事業者向けのカスタマーサクセスオートメーションツール「pottos」を展開している。既存ユーザのヘルス状況(サービス利用状況)を通して解約予兆の把握が可能になるほか、カスタマーサクセス担当者の業務進捗を管理する機能や、ヘルス状況に応じて既存ユーザにポップアップ通知を配信して自動アプローチできるなどの機能がある。SaaS市場は拡大基調であり、早期のポジション獲得に向けて拡販に注力している。

■「UCARO」をハブとして事業横断サービスの開発・拡張を推進

 中期経営計画(22年3月期~24年3月期、経営環境変化に適切に対応するため毎年度改定するローリング方式)では、目標値として24年3月期連結売上高80億円、経常利益8億円を掲げている、売上高、経常利益とも過去最高を目指す。配当については年10円の安定配当を堅持する方針としている。

 基本方針にはデータビジネスによる新たな価値の創造、基本戦略には保有するデータ量・種類の拡大を掲げ、重点施策はアライアンス・M&Aの推進、各事業領域における提供サービスの拡充、事業横断サービスの開発としている。

 特に受験ポータルサイト「UCARO」をデータプラットフォームとして育成するとともに、各事業領域をつなぐハブと位置付けて新たな事業横断サービスの開発・拡張を推進する方針としている。

 具体的な取り組みとしては、教育関連サービスの拡大に向けて、プロダクト中心の推進体制構築、「UCARO」の全大学・全社共通プラットフォーム化(データ収集の最大化・データドリブンへのシフト)、新規事業開発のスピードアップ、先端テクノロジー人材の育成・登用を推進している。

 22年3月には、充実した大学生活を実現し、なりたい自分に近づけるキッカケを提供する、大学生のための「ガクチカ」充実SNSとして「cataro(カタロ)」β版の提供を開始した。学生間の気軽なコミュニケーションの機会を創出することを目的としたサービスで「UCARO」とも連携している。将来的には行動履歴を可視化し、就職活動時にも活用できるような機能の追加を予定している。

 カスタマーサクセスオートメーションツール「pottos」事業については20年6月の本格提供開始以来、着実に顧客数を伸ばしており、今後もSaaS市場の拡大を背景に事業伸長が期待されている。このため分社化(21年8月設立の子会社ポトス)して事業推進体制を早期に確立し、更なる機能実装、サービス価値向上、ブランディング強化、新規顧客獲得を推進する。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月4日に移行した新市場区分についてはプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行、さらに10年後も見据えた成長戦略(将来の事業ポートフォリオと経営資源配分方針の策定、次世代サービスの創出、M&A・アライアンス推進など)によって継続的な業績向上を図る。

 投資戦略としては、利益剰余金+将来営業CF+外部資金を原資として、次世代サービス創出やM&A等に100億円規模の投資枠を設定している。将来の事業ポートフォリオ実現に向けて、財務基盤の健全性を最低限維持しつつ、成長に必要な戦略的投資を実行する方針だ。

 さらに、コーポレート・ガバナンスの充実、法定開示にとどまらないIR活動の強化や適切な情報発信(英文開示の充実、海外投資家向けIRの強化、メディアリレーションの強化、ESG・SDGs関連施策の開示・推進、コーポレート・ガバナンスコードへの対応など)も推進して、幅広い投資家からの認知度向上を図る。また、流通株式数の増大・株式流動性の向上に向けて、成長戦略に応じたエクイティ施策の実施など、必要に応じてテクニカルな取組みも検討する。

 これらの取組みによって、企業価値の向上・適正な市場評価の獲得(時価総額の上昇)に努め、計画期間を32年3月末までとして、流通株式時価総額のプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 なお22年3月には、取締役会の諮問機関として任意の指名・報酬委員会の設置を決議(設置日22年3月30日)している。コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実を図る方針だ。

■22年3月期減益予想だが23年3月期は新たな成長ステージ

 22年3月期の連結業績予想(2月24日に下方修正、収益認識会計基準適用だが利益への影響軽微)は、売上高が21年3月期比1.6%増の55億円、営業利益が34.2%減の4億40百万円、経常利益が26.6%減の5億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が28.3%減の3億40百万円としている。配当予想は21年3月期と同額の10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

 学校法人向け業務において既存顧客校の受託範囲拡大が計画未達となり、一般業務において医療システム用タブレット製品の販売及びシステム開発が剥落したことも影響して、売上高が従来予想を5億円下回る見込みとなった。これに伴って営業利益は2億円、経常利益は1億60百万円、親会社株主帰属当期純利益は1億20百万円、それぞれ従来予想を下回る見込みとなった。

 22年3月期は従来予想に比べて減益幅が拡大する見込みとなったが、同社は証券金融グループ主体の事業モデルから脱却して、教育関連サービスを中核とする独立系IT企業として業容を拡大している。23年3月期は積極的な事業展開で、新たな成長ステージに入って収益拡大が期待できるだろう。

 さらに同社は10年後も見据えた成長戦略として、大学入試のマストハブとなった受験ポータルサイト「UCARO」を軸に、新たな事業横断サービスの開発・拡張を推進している。データプラットフォーマーとしてグループ成長を目指す方針だ。中長期的に成長ポテンシャルが大きいと言えるだろう。

■株主優待制度は年2回(9月末と3月末対象)および議決権行使株主優待

 株主優待制度(21年1月に拡充を発表、詳細は会社HP参照)については、毎年9月末及び3月末時点の年2回、1単元(100株)以上保有株主を対象として、継続保有期間に応じてクオカード(継続保有3年未満は500円相当、継続保有3年以上は1000円相当)を贈呈する。また議決権行使優待として、議案の賛否に関わらず議決権を行使した株主に500円相当のクオカードを贈呈する。

■株価は急反発

 株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、売り一巡して3月の年初来安値圏から急反発している。出直りを期待したい。4月1日の終値は630円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS41円48銭で算出)は約15倍、前期推定配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS715円66銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約52億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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