ヤマシタヘルスケアホールディングスは上値試す、22年5月期は再上振れの可能性

 ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、九州を地盤とする医療機器専門商社を中心にヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。22年5月期第3四半期累計はコロナ禍の影響が和らぎ、営業強化も奏功して大幅増益だった。通期は業績・配当予想を上方修正し、前回予想に比べて減益幅・減配幅が縮小する見込みとした。第3四半期累計の各利益は修正後の通期予想を超過達成している。第4四半期の構成比が高くなる傾向なども考慮すれば通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■九州を地盤とする医療機器専門商社

 九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。

 事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。トムスは透析分野を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、イーピーメディックは整形外科領域における体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・販売、アシスト・メディコは医療機関の経営支援・病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングを展開している。

 21年11月には、病院向け予約ソリューションなどを展開しているイーディライト(従来は山下医科器械の持分法適用関連会社)の株式取得を完了し、連結子会社化(山下医科器械が保有していた全株式34%、およびEPARKが保有している株式のうち32%を取得して株式所有割合66%)した。

 22年2月には、医療・介護分野の業務環境改善、ならびにヘルスケア領域を支える人材の確保と適正化に貢献するため、ITやRPAなどの新技術を駆使して新たな製品・サービスを開発する子会社エムディーエックスを設立した。

 21年5月期のセグメント別売上構成比は医療機器販売業が99%、医療機器製造・販売業が1%、医療モール事業が0%、営業利益構成比(調整前)は医療機器販売業が96%、医療機器製造・販売業が4%、医療モール事業が0%だった。医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い特性がある。

 なお21年6月にはSDGsへの取り組みの一環として、独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。また21年8月にはESG基本方針をリリースした。地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。22年3月には山下医科器械が経済産業省の健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2022(大規模法人部門)の認定を受けた。

■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進

 新中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値に最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。

 主要施策としてグループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を推進する。

 医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。

 また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始した。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始した。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。

■22年5月期は再上振れの可能性

 22年5月期連結業績予想(収益認識会計基準適用のため売上高の前期比増減率は非掲載、利益への影響はなし、3月31日に売上高・利益とも上方修正)は、売上高が544億26百万円、営業利益が21年5月期比14.3%減の8億30百万円、経常利益が12.9%減の8億94百万円、親会社株主帰属当期純利益が20.5%減の5億39百万円としている。配当予想(3月31日に期末22円上方修正)は、21年5月期比27円減配の63円(期末一括)としている。

 前回予想に比べて売上高は45億87百万円、営業利益は2億87百万円、経常利益は3億09百万円、親会社株主帰属当期純利益は1億93百万円それぞれ上回り、減益幅が縮小する見込みとした。コロナ禍の影響が和らぎ、営業強化も奏功して売上高が想定以上に回復している。

 第3四半期累計は売上高が406億36百万円、営業利益が前年同期比26.0%増の8億52百万円、経常利益が25.3%増の9億07百万円、親会社株主帰属四半期純利益が19.2%増の5億92百万円だった。

 コロナ禍の影響が和らぎ、営業強化も奏功して実質的に増収となり、各利益は大幅増益だった。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価がそれぞれ132億35百万円減少している。

 医療機器販売業は売上高が404億79百万円(収益認識会計基準適用前ベースでは8.6%増の537億13百万円)で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が28.5%増の15億06百万円だった。コロナ禍の影響が和らいで医療需要が回復傾向となり、主力商品の販売が好調だった。収益認識会計基準適用前ベースの売上高の内訳は、一般機器分野が16.6%増の97億20百万円、一般消耗品分野が4.6%増の177億95百万円、低侵襲治療分野が9.6%増の128億08百万円、専門分野が3.4%増の86億31百万円、情報・サービス分野が16.7%増の47億56百万円だった。

 医療機器製造・販売業は売上高が2億14百万円で利益が80.9%減の12百万円、医療モール事業は売上高が51百万円で営業利益が7百万円の赤字(前年同期は1百万円の黒字)だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が128億85百万円で営業利益が2億02百万円、第2四半期は売上高が144億50百万円で営業利益が4億61百万円、第3四半期は売上高が133億01百万円で営業利益が1億89百万円だった。医療機関の設備投資関連で第2四半期と第4四半期の構成比が高くなる傾向がある。

 修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高74.7%、営業利益102.7%、経常利益101.5%、親会社株主帰属当期純利益109.8%である。各利益は修正後の通期予想を超過達成している。第4四半期の構成比が高くなる傾向なども考慮すれば通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。

■株主優待制度は5月末の株主対象

 株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

 株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。4月7日の終値は2037円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS211円37銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の63円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2969円03銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約52億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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