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JSPは調整一巡、23年3月期収益拡大期待
- 2022/4/8 09:00
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。変革戦略として循環性の高いビジネスモデルへのシフトを目指し、中期成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進している。22年3月期は原燃料価格高騰で営業・経常減益予想としたが、4月4日には押出発泡ポリスチレン「スチレンペーパー製品全般」の価格改定(5月1日出荷分から)を発表している。23年3月期は需要の回復、高付加価値製品の拡販、製品価格改定効果などで収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く、地合い悪化も影響して年初来安値圏だが、低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■発泡プラスチック製品の大手
発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。
21年3月期セグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業58%、その他5%、営業利益構成比(調整前)は押出事業41%、ビーズ事業57%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
■成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロック拡販などを推進
長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。
基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして欧州の自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。さらにEV用バッテリー梱包材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
22年1月には、新規事業創出を目的としてフランスの子会社がイタリアのGHEPI社に出資(株式35%取得)した。射出成形市場に参入し、発泡技術と射出技術の複合化で技術優位性を構築して事業拡大を推進する方針だ。
■サステナビリティ経営を推進
サステナビリティ経営を推進するため、21年4月にサステナビリティ推進室を新設した。21年12月にはホームページに「JSPのサステナビリティ経営とマテリアリティ」を掲載した。同社の発泡技術を活用して、経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと、提供価値の拡大を推進する方針だ。
また21年12月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明した。
■22年3月期営業・経常減益予想、23年3月期収益拡大期待
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが利益への影響軽微、21年7月30日付で上方修正、22年1月31日付で下方修正)は、売上高が21年3月期比10.1%増の1130億円、営業利益が9.4%減の47億円、経常利益が11.2%減の49億円、親会社株主帰属当期純利益が6.1%増の32億円としている。配当予想は21年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比11.8%増の851億28百万円、営業利益が6.4%増の42億99百万円、経常利益が8.3%増の44億97百万円、親会社株主帰属四半期純利益が7.6%増の32億90百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が12億56百万円減少、売上原価が11億73百万円減少、販管費が56百万円減少、営業利益が26百万円減少、経常利益と税金等調整前四半期純利益がそれぞれ6百万円減少している。影響は軽微である。
自動車分野を中心とする需要回復、ピーブロックを中心とする高付加価値製品の拡販、製品価格改定などで、原料価格高騰の影響を吸収して増収増益だった。特別損失には韓国の連結子会社における火災による損失1億28百万円を計上している。
押出事業は売上高が2.9%増の294億17百万円で、営業利益が9.7%増の24億06百万円だった。食品トレー向けが巣ごもり特需の反動で減少したが、産業資材製品の高付加価値製品が大幅伸長し、製品価格改定も寄与して原料価格高騰の影響を吸収した。
ビーズ事業は売上高が16.1%増の509億11百万円で営業利益が2.0%減の24億96百万円だった。売上面は自動車分野を中心に需要が回復し、ピーブロックの自動車分野での新規採用拡大などで高機能材製品の売上が拡大した。利益面では製品価格改定を進めたが、原料価格高騰の影響をカバーできず小幅減益だった。
その他は売上高が29.7%増の47億99百万円で、営業利益が3.0倍の1億51百万円だった。自動車部品輸送関連などの需要が回復した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高269億82百万円で営業利益15億67百万円、第2四半期は売上高286億91百万円で営業利益14億18百万円、第3四半期は売上高294億55百万円で営業利益13億14百万円だった。
通期連結業績予想は下方修正して営業・経常減益予想としている。半導体などの部品供給不足による納入遅延や原燃料価格の高騰などが影響する見込みだ。修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高75.3%、営業利益91.5%、経常利益91.8%、親会社株主帰属当期純利益102.8%である。
22年3月期は原燃料価格高騰で営業・経常減益予想としたが、4月4日には押出発泡ポリスチレン「スチレンペーパー製品全般」の価格改定(5月1日出荷分から)を発表している。23年3月期は需要の回復、高付加価値製品の拡販、製品価格改定効果などで収益拡大を期待したい。
■株主優待は3月末対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は調整一巡
株価は反発力が鈍く、地合い悪化も影響して年初来安値圏だが、低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。4月7日の終値は1501円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS107円35銭で算出)は約14倍、前期推定配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.3%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2767円26銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約472億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)