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クリナップは調整一巡、23年3月期も収益拡大基調
- 2022/4/12 08:59
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東証プライム)はシステムキッチンの大手で、システムバスルームや洗面化粧台も展開している。22年3月期は需要回復、高付加価値商品投入、原価低減効果などで大幅増益予想としている。原材料高の影響など不透明感もあるが、積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い形だが、一方では大きく下押す動きも見られない。低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)および浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)を展開している。21年3月期の部門別売上高構成比は厨房部門が79%、浴槽・洗面部門が14%、その他が7%だった。システムキッチンの大手で、同社資料によるとシステムキッチンの市場シェアは20年3月期が17.5%、21年3月期が18.5%だった。
中高級品に強みを持ち、厨房部門はステンレスキャビネットキッチンのセントロ、ステディア、システムキッチンのラクエラ、コンパクトキッチンのコルティ、浴槽・洗面部門はバスルームのアクリアバス、ユアシス、洗面化粧台のティアリスなどを主力製品としている。
中高級品市場での更なる競争力強化に向けて、20年6月にKITCHEN TOWN YOKOHAMA(横浜市みなとみらい)をオープンし、旗艦ショールーム全国4拠点(東京、横浜、名古屋、大阪)体制とした。21年10月には福井ショールーム(福井県福井市)を移転オープンした。
販売ルートは工務店の会員登録制組織「水まわり工房」加盟店を主力としている。21年3月期の販売ルート別売上構成比(単体ベース)は、一般ルート(工務店・リフォーム)が80%、ハウスメーカーが15%、直需(マンション)が5%だった。収益面では新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい。
■サステナブルビジョンは「人と暮らしの未来を拓く」
中期経営計画(21~23年度)では、目標数値に最終年度24年3月期の売上高1200億円、営業利益50億円、営業利益率4.2%を掲げている。さらにサステナブルビジョンとして「人と暮らしの未来を拓く」を掲げている。さらに長期ビジョンの目標は30年度に、20年度比で売上高30%増、販管費比率30%以下、営業利益3.5倍としている。
重点施策としては、既存事業の需要開拓と低収益からの脱却、新規事業による新たな顧客の創造、ESG・SDGs視点での経営基盤の強化を推進する。
既存事業に関しては、水回り3品(キッチン、浴室、洗面)事業での安定した収益確保を目的として中高級品の販売力強化、システムバス販売の底上げ、リフォーム需要獲得、水回り3品で培ったノウハウを活かしたサービス・物流分野での外販ビジネスの拡大、生産変革による原価低減、間接業務の効率化などで利益改善を推進する。
システムキッチンの新製品では、21年10月にニューノーマル時代の新生活提案キッチン「HIROMA」の本格販売を開始した。キッチンの要素を極力シンプルにしてダイニングテーブルと融合することで、新しいLDKの在り方や暮らしを提案するキッチンテーブルである。また21年2月には、主力の中高級価格帯システムキッチンのステディアをモデルチェンジして受注開始した。
なお福島県いわき市に生産拠点を構えている。東日本大震災の翌年の12年12月に公益財団法人クリナップ財団を設立し、福島県の復興支援を目的として活動している。21年7月には21年度の奨学生50名を決定した。13年度に開始した奨学支援事業は震災復興支援に有用な人材育成を目指し、9年間で累計奨学生360名となった。
■22年3月期大幅増益予想、23年3月期も収益拡大基調
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが影響軽微、21年11月5日付で上方修正)は、売上高が21年3月期比8.0%増の1125億円、営業利益が22.4%増の32億円、経常利益が32.6%増の36億円、親会社株主帰属当期純利益が31.7%増の23億円としている。配当予想は21年3月期と同額の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比11.4%増の855億76百万円、営業利益が77.1%増の40億90百万円、経常利益が85.0%増の44億62百万円、親会社株主帰属四半期純利益が95.0%増の29億29百万円だった。
収益認識会計基準適用の影響額としては、従来方法に比べて売上高が6億21百万円増加、売上原価が9億50百万円増加、売上総利益が3億29百万円減少、販管費が61百万円減少、営業利益が2億67百万円減少、営業外費用が3億14百万円減少、経常利益が46百万円増加、税金等調整前四半期純利益が46百万円増加している。影響は軽微である。
政府による住宅取得支援策なども背景として新設住宅着工戸数が前年を上回るなど需要が回復傾向となり、高付加価値商品の投入や原価低減などの効果も寄与して大幅増益だった。部門売上高は厨房部門が11.8%増の672億98百万円、浴槽・洗面部門が2.6%増の117億89百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が269億01百万円で営業利益が10億90百万円、第2四半期は売上高が280億36百万円で営業利益が10億76百万円、そして第3四半期は売上高が306億39百万円で営業利益が19億24百万円だった。
第3四半期累計の進捗率は売上高が76.1%、営業利益が127.8%、経常利益が123.9%、親会社株主帰属当期純利益が127.3%で、各利益は通期予想を大幅に超過達成している。原材料高の影響など不透明感もあるが、積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い形だが、一方では大きく下押す動きも見られない。低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。4月11日の終値は517円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS62円35銭で算出)は約8倍、前期推定配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1430円20銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約194億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)