綿半ホールディングスは上値試す、23年3月期も収益拡大基調

 綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は、ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。中期ビジョンでは「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げている。22年3月期は増収増益で、7期連続最高益更新予想としている。小売事業の22年3月の既存店売上は3ヶ月連続で前年比プラスと堅調だった。さらに積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調だろう。株価は小幅レンジでのモミ合いから上放れの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。

■小売事業、建設事業、貿易事業を展開

 ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。21年3月期のセグメント別売上高構成比は小売事業が70%、建設事業が24%、貿易事業が5%、その他が0%、営業利益構成比(調整前)は小売事業が56%、建設事業が21%、貿易事業が20%、その他が3%だった。なお小売事業に含まれていた木造住宅分野を22年3月期から建設事業に変更した。

■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進

 小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込み、平日・土日の平準化を図っていることが特徴である。

 M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。

 M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネットを子会社化(20年6月綿半ドットコムに社名変更)、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店を子会社化(19年11月綿半三原商店に社名変更)、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にはヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化した。

 なお4月1日に、建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を連結子会社化した。不動産情報の集約、物件管理機能の強化を図る。また、綿半パートナーズの子会社である藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。家具・インテリアの仕入機能やネット通販のノウハウを融合し、家具販売事業の効率化と収益性向上を図る。

 22年春には綿半スーパーセンター権堂店(長野市)を出店予定である。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗として初の出店となる。

 小売事業の月次売上(速報値)を見ると、22年3月は全店が101.1%、既存店が101.9%だった。既存店は3ヶ月連続の前年比プラスだった。気温低下で園芸・DIY用品が低調だったが、新生活用品が好調だった。21年4月~22年3月累計では全店が97.6%、既存店が97.6%となった。

 なお22年2月には、21年6月販売開始したオリジナル商品「ビタミンちくわ」の累計販売数が33万個を突破した。また22年3月には、21年4月販売開始したオリジナル商品「初めてでも育てやすい培養土」の累計販売数が5万個を突破した。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「ステージW」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。

 21年2月に引き渡し完了したSUBARU矢島工場従業員専用立体駐車場の建設工事、および工場と駐車場を繋ぐ連絡橋工事では、駐車場屋上階に自走式駐車場発電設備として日本最大級規模の太陽光発電システムを設置した。21年7月には、新宿駅東口「クロス新宿ビジョン」が設置されているクロス新宿ビルに、自社オリジナル製品の超大型大開口サッシ「GLAMO」が採用されて竣工した。21年11月には(仮称)門真市松生町商業施設計画に併設される大型立体駐車場2棟の建設工事を受注し着工した。

 なお19年8月に戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県)を子会社化、21年8月に戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化した。また21年6月には長野県高森町に鉄構工場を新設すると発表している。飯田第1工場の機能を新工場に移転・集約する。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売

 貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。

 ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。

 なお21年12月には、海外市場への販売拡大に向けてAlibaba.comに自社サイトを掲載し、自社原料商品の取引を開始した。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。なお20年6月には長野県SDGs推進企業に登録された。

 中期経営計画では安定・成長性のある事業構造を創り上げることを目指し、目標値に22年3月期売上高1200億円(小売事業790億円、建設事業350億円、貿易事業58億円、その他2億円)、経常利益32億円を掲げている。

 小売事業は既存店売上を維持しながら、M&Aも積極活用してネット通販など販売手法の多様化を推進する。コスト面では新決済システムや物流改革による効率化を推進する。新規出店は3年間で売場面積4500坪拡大を目指す。建設事業は新製品開発や工場ロボット化による生産性向上、貿易事業は天然原料の新製品投入や販路拡大で収益力向上を目指す。

■22年3月期増収増益・7期連続最高益更新予想

 22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期比4.5%増の1200億円、営業利益が2.7%増の33億71百万円、経常利益が0.6%増の35億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%増の21億円としている。配当予想は21年3月期比1円増配の21円(期末一括)としている。

 セグメント別の計画は、小売事業の売上高が前期並みの799億円で利益も前期並みの23.7億円、建設事業の売上高が11.5%増の340億円で利益が7.7%減の10.6億円、貿易事業の売上高が5.7%減の57.3億円で利益が15.3%減の7.8億円としている。

 小売事業では生鮮食品を導入してスーパーセンター化した店舗(富士河口湖店、八田店)や、医薬品を導入した改装店舗(千曲店、中野店、箕輪店)が好調に推移する見込みだ。物流効率化(パッキング・検品機能集約、青果センターの機能拡大、市場からの直接仕入拡大など)も寄与する。建設事業では受注環境が改善し、木造住宅分野が大幅伸長している。鉄骨分野のFA化も加速する見込みだ。貿易事業は、コロナワクチン副反応対策で解熱鎮痛用途の需要が増加し、食品分野への進出も寄与する見込みだ。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比4.4%減の849億43百万円、営業利益が50.7%減の16億59百万円、経常利益が41.1%減の21億19百万円、親会社株主帰属四半期純利益が24.6%減の16億11百万円だった。小売業における巣ごもり特需の反動減などで減益だった。

 営業外収益では出資金運用益1億40百万円、特別利益では負ののれん発生益1億97百万円を計上した。収益認識会計基準適用の影響額としては、従来方法に比べて売上高が10億35百万円減少、売上原価が8億36百万円減少、販管費が1億98百万円減少している。

 小売事業は売上高が3.1%減の582億26百万円で営業利益が33.7%減の15億03百万円だった。店舗改装効果による売上増で減収は小幅にとどまったが、前年のコロナ禍に伴う巣ごもり特需の反動減による衛生用品や利益率の高いDIY商品の売上減、店舗改装費用などで減益だった。

 建設事業は売上高が5.8%減の222億67百万円で営業利益が67.6%減の3億47百万円だった。コロナ禍による前期の受注減少、資材価格高騰、納期長期化などが影響した。ただし第3四半期(10月~12月)は前年同期比24.8%増収と回復している。

 貿易事業は売上高が13.0%減の42億37百万円で営業利益が39.9%減の5億51百万円だった。前年のコロナ禍に伴う医薬品安定供給確保のための在庫積み増し特需の反動減、原料価格・輸送価格上昇、為替影響などで減収減益だった。

 なお全体業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が260億23百万円で営業利益が3億36百万円、第2四半期は売上高が278億11百万円で営業利益が4億16百万円、第3四半期は売上高が311億09百万円で営業利益が9億07百万円だった。第3四半期は回復基調となった。

 通期予想は据え置いている。巣ごもり特需の反動減などを吸収して、小幅ながら増収増益で、7期連続最高益更新予想としている。第3四半期累計が減収減益となり、利益進捗率もやや低水準(営業利益49%、経常利益60%、純利益77%)の形だが、小売事業の22年3月の既存店売上は3ヶ月連続で前年比プラスと堅調だった。さらに積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象

 株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈している。なお新たに300株以上の優待区分を新設し、21年9月末対象から実施(詳細は会社HP参照)した。

■株価は上値試す

 株価は小幅レンジでのモミ合いから上放れの動きを強めている。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。4月11日の終値は1303円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS105円98銭で算出)は約12倍、前期推定配当利回り(会社予想の21円で算出)は約1.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS884円81銭で算出)は約1.5倍、そして時価総額は約259億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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