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マルマエは上値試す、22年8月期業績予想を上方修正、自己株式取得も発表
- 2022/4/18 08:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開している。4月15日の取引時間終了後に22年8月期業績(非連結)予想を上方修正し、自己株式取得も発表した。また22年3月の受注残高は前月比8.7%増、前年同月比139.5%増となった。受注残高は過去最高を更新して拡大基調である。通期予想は再上振れの可能性が高く収益拡大基調だろう。株価は第2四半期決算発表を機に目先的な売りが優勢になり、戻り高値圏から急反落の形となったが、好業績を再評価して上値を試す展開を期待したい。
■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工およびEBWを展開
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開している。
作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。
■ESG経営を推進
中期事業計画の数値目標は22年8月期売上高70億円、営業利益20億円、資産ベースROIC18%、負債ベースROIC14%、配当性向30%以上、年間最低配当額10円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。設備投資の計画(CFベース)は増産投資および自社使用目的の太陽光発電投資を中心に、20年8月期3.4億円、21年8月期9.1億円、22年8月期10億円としている。
売上拡大戦略として半導体分野では、市場成長も背景として既存顧客からの受注品種拡大、デバイスメーカーの稼働向上に伴う消耗品の受注拡大を見込み、新規顧客獲得も推進する。既存顧客の売上に関しては20年8月期から22年8月期で約26%成長を目指す。新規顧客の売上に関しては2社からの受注を獲得(1社目は20年8月期量産開始、2社目は試作品提供開始)しており、20年8月期の1.2億円から22年8月期には12億円(1社目8億円、2社目4億円)を目標とする。
FPD分野の売上は20年8月期の10.6億円から、22年8月期に16億円を目指す。市場環境として21年8月期は市場縮小、22年8月期に高精細化投資で再拡大を想定し、EBWを活用した新規顧客獲得や、同業他社の撤退などによる市場シェア拡大を見込んでいる。
その他分野ではEBWに続く新技術習得による新分野開拓、リハビリ機器の研究開発などを推進する。
そして市場シェア拡大に向けた能力増強投資や、採用投資(採用増と労働分配率向上)も積極的に実行する方針だ。
また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。再生可能エネルギー活用によるCO2削減を推進するため、30年8月期に年間使用量50%以上を太陽光で自社発電する計画(30年8月期までに合計424百万円を設備投資)としている。さらに、職場環境向上の取り組みではワークライフバランスを整え、女性が継続して働ける職場づくりを目指す方針だ。
21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明した。本提言に沿った情報開示・発信を行うことで気候関連への取り組みを強化する。
■22年3月度の受注残高は前年同月比139.5%増と拡大基調
月次受注残高(速報値ベース)を見ると、22年3月度は半導体分野が19億22百万円(前月比0.3%増、前年同月比155.3%増)、FPD分野が7億12百万円(前月比6.4%減、前年同月比42.7%増)、その他分野が4億30百万円(前月は1億41百万円、前年同月は27百万円)で、合計が30億65百万円(前月比8.7%増、前年同月比139.5%増)となった。
合計ベースの受注残高は30ヶ月連続で前年同月比プラスと拡大基調である。半導体分野は受注と出荷検収が共に高水準に推移した。FPD分野は出荷検収が進んだため前月比では減少だが、前年同月比では大幅に増加した。その他分野は太陽電池製造装置向けの受注が増加した。
今後の動向として、半導体分野は一部の顧客メーカーにおける部材不足に改称傾向が見られ、しばらくは好調が続く見込みとしている。FPD分野もしばらくは現状程度の受注環境が続く見込みとしている。その他分野では太陽電池製造装置向けの受注が続く見込みとしている。
■22年8月期予想を上方修正、さらに再上振れの可能性
22年8月期の業績予想(非連結、収益認識会計基準適用だが影響軽微、前期比増減率は適用前の21年8月期実績との比較)は、4月15日に上方修正して、売上高が21年8月期比54.6%増の83億円、営業利益が90.6%増の23億円、経常利益が90.5%増の22億86百万円、当期純利益が84.8%増の16億67百万円としている。配当予想(2月9日に第2四半期末4円、期末4円、合計8円上方修正)は据え置いて、21年8月期比20円増配の44円(第2四半期末22円、期末22円)としている。
受注が好調に推移して過去最高更新予想である。前回予想に対して売上高は11億円、営業利益は5億円、経常利益は5億06百万円、当期純利益は4億22百万円、それぞれ上回る見込みとした。売上高は半導体分野、FPD分野、その他分野とも前回予想を上回り、修正後の分野別売上高の計画は、半導体分野が43.6%増の60億60百万円、FPD分野が79.0%増の15億円、その他分野が4.4倍の7億40百万円としている。利益面では、受注が生産能力を超過するため外注費が増加するが、増収効果や工場稼働率向上による製造原価率低減が寄与する見込みだ。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比72.3%増の39億62百万円、営業利益が2.8倍の11億75百万円、経常利益が2.8倍の11億71百万円、四半期純利益が2.8倍の8億37百万円だった。受注が好調に推移して大幅増収増益だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価がそれぞれ27百万円減少したが、損益への影響は軽微である。
全社ベースの受注高は前年同期比93.7%増の48億93百万円(分野別には半導体分野が87.7%増の37億31百万円、FPD分野が2.6倍の10億14百万円、その他分野が2.6%増の1億47百万円)だった。分野別売上高は半導体分野が60.2%増の29億96百万円、FPD分野が2.8倍の7億81百万円、その他分野が22.6%減の73百万円だった。半導体分野は良好な市場環境が継続している。FPD分野は市場環境改善とシェア拡大が牽引した。その他分野は太陽電池製造装置部品の受注が増加した。
コスト面では、材料費、外注加工費、労務費、減価償却費、研究開発費などが増加し、第2四半期に受注損失引当金が増加したが、増収効果や稼働率上昇効果で吸収した。売上総利益率は39.1%で8.2ポイント上昇した。販管費は30.5%増加したが、販管費比率は9.4%で3.1ポイント低下した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が19億38百万円で営業利益が5億95百万円、第2四半期は売上高が20億24百万円で営業利益が5億81百万円だった。
受注残高は過去最高を更新して拡大基調である。そして急増する受注への対応や、さらなる市場シェア拡大に向けた設備投資(合計月産7億円を超える生産キャパシティの実現)を実行し、22年1月には22年8月期の設備投資計画の増額を発表している。通期予想は再上振れの可能性が高く収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象
株主優待制度は、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象として、クオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は上値試す
4月15日に自己株式取得を発表した。上限20万株・4億円で、取得期間は22年4月18日~22年5月17日としている。
株価は第2四半期決算発表を機に目先的な売りが優勢になり、戻り高値圏から急反落の形となったが、好業績を再評価して上値を試す展開を期待したい。4月15日の終値は2068円、今期予想PER(会社予想のEPS130円17銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の44円で算出)は約2.1%、前期実績PBR(前期実績のBPS494円20銭で算出)は約4.2倍、そして時価総額は約270億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)