【編集長の視点】政局流動化のならセカンド・シナリオで労働者派遣法改正案の関連株に浮上を期待=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

台風一過、梅雨明けである。この季節の移り変わりと同時進行しそうな「梅雨明け」相場の重要ポイントは、3連休明けからスタートする3月期決算会社の4~6月期決算の発表である。決算発表とともに業績を上方修正する銘柄がどの程度出てくるか、サプライズはあるのか、これに増配、自己株式取得などの同時発表の補助エンジンも加わって業績相場発進への期待を高めるからだ。これが王道シナリオとするのは、いずれの市場参加者にも異存はないはずだ。

その一方で、この王道シナリオに対して、撹乱要因として政局動向がやや気掛かりとする市場関係者もいる。政局不安は、株価にとっては、外国人投資家が最も忌避する売り材料であり、安倍内閣の支持率が低下、内閣発足以来最低となり、直近の世論調査でも内閣不支持率が50%を超え、支持率と逆転したからだ。「衆参ねじれ現象」による「何も決められない政治」が、その後の連戦連勝により「一強他弱」体制を構築、安倍内閣の「何でも決められる政治」を確立し、ついに戦後70年のフシ目に、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案を衆議院で強行採決したことが響いているものだ。

安全保障関連法案の審議は、参議院に移り、攻防が激化するが、この後の政治スケジュールも、原発の再稼働、戦後70年の首相談話、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉など、国論を二分する政治争点の決断を迫られる案件が目白押しである。整備費が、2520億円まで膨れ上がった新国立競技場の建設計画を白紙撤回しただけで、内閣支持率の低下に歯止めをかけ、上昇へとリバウンドさせることができるかは保証の限りではない。

現に、安全保障関連法案の衆議院での強行採決で、割りを食う法案も出てきた。労働者派遣法改正案である。昨年2014年の通常国会意、同年の臨時国会で2度、廃案となって「呪われた法案」といわれた同改正案は、ようやく6月19日に衆議院で可決され、7月8日に参議院で審議入りとなっていたが、同改正案は、今通常国会の与野党対立法案の一つとなっていただけに、審議の先行きが不透明化した。

ただし、悪材料を先に煽っておいて直ちに否定する「マッチ・ポンプ」のようで恐縮だが、この労働者派遣法改正案の関連株は、この国会審議の動向にかかわらずアップトレンドを続ける可能性がありそうなのだ。3連休前の17日も、NHKの朝のニュースで、審議停滞で同改正案の施行日を9月1日から変更する修正案を検討すると報道されたにもかかわらず、関連株8銘柄が、年初来高値を更新したことが、この有力な証左となる。

景気回復、製造業の国内回帰で有効求人倍率が、23年2カ月ぶり、完全失業率も18年ぶりのそれぞれ高水準にある雇用情勢のひっ迫化するなか、派遣社員の平均自給が、25カ月連続で前年同月を上回りアルバイト・パートの需給も、24カ月連続で前年同月を超え、いずれも過去最高を更新したなどと相次いで伝えられたことが買い材料視されている。

さらに、今年7月15日に5月期決算を発表したパソングループ<2168>(東1)が、今期純利益が、前期比3.5倍にV字回復すると予想した要因に、来年1月から運用開始されるマーナンバー制度向けに労務管理の人材需要が期待できるとしたことも、合わせて買い評価につながった。

もちろん、労働者派遣法改正案の可決・施行は、人材派遣業界の期待材料である。同改正案による派遣労働者のキャリアアップのための教育・研修の財務負担は、業界上位企業の比較優位性を際立たせ、中小事業者を巻き込む業界再編につながるとみられているからだ。追い風をさらに業容・業績拡大の上昇気流に変えられるか各社のガバナンス動向が注目されることになる。だとすれば、業績相場発進の王道シナリオが、もし政局動向で影響でもたつく展開となる際は、セカンド・シナリオとして労働者派遣法改正案の関連株に網を張って置くことも一考余地がありそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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