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イトーキは下値固め完了、構造改革推進して22年12月期増収・2桁増益予想
- 2022/4/20 09:06
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具の大手で、物流機器などの設備機器関連も展開している。22年12月期は中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進し、新製品・新ソリューションの投入などで増収・2桁増益予想としている。4月19日には素材の自由度を活かしたクリアな吸音パネルの開発を発表している。働き方改革による企業の職場環境改善の流れもなども追い風であり、需要回復やDX高度化戦略推進で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが一方では下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。なお5月13日に22年12月期第1四半期決算発表を予定している。
■オフィス家具の大手で物流機器関連も展開
オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器などの設備機器関連も展開している。製販一貫体制が特徴である。
21年12月期のセグメント別(21年12月期から区分変更)売上高構成比はワークプレイス事業が70%、設備機器・パブリック事業が29%、IT・シェアリング事業が2%、セグメント利益(営業利益)構成比はワークプレイス事業が77%、設備機器・パブリック事業が38%、IT・シェアリング事業が▲15%だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。
ワークプレイス事業は、従来のオフィス関連事業のオフィス家具・営繕・FMPMコンサル、および設備機器関連事業の内装・建材、その他事業の家庭用家具で構成する。設備機器・パブリック事業は、従来の設備機器関連事業の内装・建材以外、およびオフィス関連事業の公共施設関連で構成する。IT・シェアリング事業は、従来のオフィス関連事業の什器レンタル・オフィスシェア関連サービス、メンバーシップ事業、およびソフトウェア開発関連サービスで構成する。
■本社オフィスのITOKI TOKYO XORKでオフィス空間を提案
本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。20年10月にはITOKI TOKYO XORKを改装し、withコロナの「働く場の基準」に基づいた感染防止対策を取り入れた。
21年5月には、公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化してアート関連事業を開始した。21年10月にはワークプレイス事業において、在宅勤務が制度化された法人・企業を中心に、従業員の在宅ワーク環境整備のための家具やインテリアを提供するオンラインショップ「ITOKI IN―HOUSE SALES SHOP」をオープンした。
22年2月には、米国のパートナー企業との協業で17年7月に設立した連結子会社のGlobalTreehouseを解散(22年3月解散予定、22年6月清算結了予定)すると発表した。
海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。
■ポストコロナの働く環境づくりをリード
中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。
目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。
基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。
21年12月には、木の温もりが実感できる独自開発の新素材を活用した大型テーブル「silta(シルタ)」を発売した。東北地方の森林産地や木材市場と協働することにより、国産材活用やカーボンニュートラルの促進に貢献する。
22年1月には「暮らしに寄り添い、日々の生活をアップデートする」をコンセプトに、新ブランド「ITOKI HOME」ブランドを立ち上げた。22年3月には、働く人があらゆる枠を超えて学び合うことができる越境体験プラットフォーム「OpenWorking」サービスを4月に開始すると発表した。またグループ会社のエフエム・スタッフが矢板市(栃木県)と「矢板SLOW WORK推進コンソーシアム」を設立し、地域共創型シェアオフィス「スローワーク矢板」を4月4日に開設すると発表した。
4月12日にはNTTコミュニケーションズおよびNTTドコモと共同で、ニューノーマル時代の新たなコミュニケーションサービス「office surf」の実証実験を開始した(22年6月30日まで)と発表した。4月13日には日産自動車と共同開発した、後部座席スペースで快適にテレワークができるモバイルオフィスカー「MOOW(ムーウ)」を発表した。22年度内の発売を目指す。4月19日には視聴触角のデジタルイノベーションを推進するピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)と共同開発した、素材の自由度を活かしたクリアな吸音パネル「iwasemi HX―α」を発表した。22年夏頃発売を予定している。
■構造改革プロジェクトを推進して企業価値向上と持続的成長を図る
20年7月にはアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。
なお、テレワークの導入・活用を進めて実績を積んだ企業として総務省が実施する令和3年度テレワーク先駆者百選に選定されている。さらに、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人2022大規模法人部門(ホワイト500)に認定されている。オフィス家具事業を展開する企業としては初の6年連続認定である。
■22年12月期増収・2桁増益予想
22年12月期連結業績予想は売上高が21年12月期比3.6%増の1200億円、営業利益が18.3%増の30億円、経常利益が19.0%増の29億円、親会社株主帰属当期純利益が20.0%増の14億円としている。配当予想は21年12月期と同額の15円(期末一括)としている。
中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進し、ポストコロナの「働く環境」つくりでリードしていくための商品・サービスの展開を本格化する方針だ。更なる利益率改善も寄与して増収・2桁増益予想としている。セグメント別の計画は、ワークプライス事業の売上高が3.6%増の835億06百万円で営業利益が2.4%減の19億円、設備機器・パブリック事業の売上高が4.0%増の348億42百万円で営業利益が9.2%増の10億64百万円、IT・シェアリング事業の売上高が6.0%減の16億52百万円で営業利益が36百万円の黒字(21年12月期は3億85百万円の赤字)としている。IT・シェアリング事業はGlobalTreehouseの事業清算で赤字が解消する。
重点施策として、ワークプレイス事業では構造改革実行による高収益化、Smart Officeコンセプトに基づく新たな価値の提供、海外(中国・ASEAN)におけるコストを踏まえたボトムラインを意識した経営の徹底、次なる成長に向けた新収益源の掘り起こし、設備機器・パブリック事業では物流施設関連における戦略的投資による商品力・サービスの強化、公共施設関連における営業・設計・業務・生産の効率化、サイネージ関連におけるインバウンド需要復活を視野に入れた製品の機能向上、特殊扉関連における供給体制の拡大、研究施設関連における営業力・商品力・供給力・アフタービジネスの強化、IT・シェアリング事業ではIT関連におけるビジネス発展に役立つ商品・サービスの提供、シェアリング関連における環境や社会と価値を共有するシェアビジネスによる新たな市場の醸成を推進する。
コロナ禍で感染リスクの少ないワークプレイスの確保、テレワーク化によるオフィス縮小、メインオフィス以外のワークプレイスの活用など、オフィス関連事業を取り巻く環境が大きく変化している。働き方改革による企業の職場環境改善の流れなども追い風であり、需要回復やDX高度化戦略推進で収益拡大基調だろう。
■株価は下値固め完了
株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが一方では下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。4月19日の終値は340円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS30円96銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の15円で算出)は約4.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS992円89銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約155億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)