ジェイエスエスは下値固め完了、23年3月期も収益改善基調

 ジェイエスエス<6074>(東証スタンダード)はスイミングスクールを全国展開し、スイミングスクール特化型企業では首位の施設数を誇っている。成長戦略として新規出店や商品開発強化などを推進するとともに、スイミングにとどまらず健康運動への取り組みも推進している。22年3月期はコロナ禍の影響が和らいで大幅増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は反発力が鈍く年初来安値圏だが、大きく下押す動きは見られず下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■スイミングスクール運営首位

 スイミングスクールを直営と受託で全国展開している。21年3月末現在の事業所数は直営62ヶ所、受託21ヶ所、合計83ヶ所(うちコンパクトプール15か所)である。スポーツ施設運営企業として8位規模だが、スイミングスクール特化型企業では首位の施設数を誇っている。

 21年3月期の種類別売上高は、スイミングスクール収入が59億88百万円(直営事業収入が52億77百万円、受託事業収入が6億02百万円、企画課外収入が1億08百万円)、商品売上が4億69百万円、その他の営業収入が36百万円だった。また21年3月期末の会員数は子供会員が20年3月期末比6.5%減の8万331人、大人会員が11.3%減の9998人、合計が7.0%減の9万329人となった。21年3月期はコロナ禍の影響で会員数が減少し、売上高も大幅減少した。

 選手強化の実績として、東京2020オリンピックにおいて、競泳では渡辺香生子選手、五十嵐千尋選手、白井璃緒選手、飛込では玉井陸斗選手、荒井祭里選手、板橋美波選手、伊藤洸輝選手が出場した。

 スクール事業の強みには、総合フィットネスクラブとの比較で景気に左右され難いという点がある。入会から四泳法習得まで2~3年の安定した在籍が期待され、ベビーからの入会や選手コースへの進級で長期在籍の可能性も高まる。大人会員は高齢者が中心で、生涯スポーツ化も期待される。

 20年3月には、ニチイ学館<9792>との資本業務提携を解消し、日本テレビホールディングス<9404>と業務資本提携した。日本テレビホールディングスのグループ会社でフィットネスジムを展開するティップネス(関東エリアを中心に全国170店舗を展開、スポーツ施設運営企業として3位規模)と協業してシナジーを創出する。

■新規出店や商品開発強化を推進

 中期経営計画(21年6月にローリング)では目標数値として、最終年度24年3月期の売上高91億円、経常利益4億37百万円、当期純利益2億76百万円、EPS71円24銭を掲げている。コロナ禍を乗り越えて成長基調への回帰を目指す。

 成長戦略として、新規出店や商品開発強化などを推進するとともに、スイミングにとどまらず健康運動への取り組みも推進している。

 重点施策として、事業戦略では年間2事業所程度の着実な出店、中高年層をターゲットとしたプログラムの開発、水泳指導技術を活かした商品開発の強化、物販の拡大(JSS会員向けの会員グッズ販売、グループ外スクールに対する水中運動マシンなどのスイミング用品販売)、選手強化、業務受託および業務提携など事業パートナーとの連携、人事戦略では教育・研修の充実、評価制度・昇給制度の改革、女性社員の職域拡大と活用の高度化、財務戦略ではコロナ以前の業績回復、東証市場区分見直しへの対応を推進する。

 WEB強化への取り組みとしては、動画「ペン太のスクール探訪!」「JSSメッセージリレー」「お家でトレーニング」の配信を推進している。ティップネスとの協業としては、オンラインフィットネス「トルチャ」や、地域健康支援合同企画「JSSキッズファミリープラン」などを開始している。オリジナルプログラムとしては、元気の出る水中運動「バイポリンW」を新発売している。

■新市場区分の上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはスタンダード市場を選択した。そして新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書を作成・開示している。

 中期経営計画で掲げた経営戦略および重点施策を着実に実施することで、業績の向上および企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、25年3月期までにスタンダード市場の上場維持基準を充たすよう各種取組を進めるとしている。

■22年3月期大幅増益予想、23年3月期も収益改善基調

 22年3月期の業績(非連結、収益認識会計基準適用だが損益への影響は軽微)予想は、売上高が21年3月期比18.6%増の77億円、営業利益が3.4倍の2億79百万円、経常利益が3.2倍の2億87百万円、当期純利益が2億01百万円の黒字(21年3月期は4億40百万円の赤字)としている。配当予想は50銭増配の11円(第2四半期末5円、期末6円)である。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比22.8%増の57億51百万円、営業利益が4.1倍の3億10百万円、経常利益が4.0倍の3億07百万円、四半期純利益が1億64百万円(前年同期は2億13百万円の赤字)だった。

 コロナ禍の影響が継続しているが、前年同期との比較で影響が和らいで大幅増収、大幅営業・経常増益となり、最終利益は黒字転換した。全事業所合計の第3四半期末会員数は前年同期比0.8%増の9万4583人となった。なお特別利益では前期計上の助成金収入1億84百万円が剥落した。特別損失では新型コロナウイルス感染症による損失が減少(前期は5億22百万円計上、今期は65百万円計上)した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が18億07百万円で営業利益が57百万円、第2四半期は売上高が19億64百万円で営業利益が1億43百万円、第3四半期は売上高が19億80百万円で営業利益が1億10百万円だった。

 通期ベースでもコロナ禍の影響が徐々に和らいで増収を見込み、これに伴って利益も回復する見込みとしている。新規施設については、既存施設の新築移転を含めて2店舗程度の開設を計画している。ディップネスとの協業も本格化する見込みだ。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が74.7%、営業利益が111.1%、経常利益が107.0%、当期純利益が81.6%で、営業利益と経常利益は通期予想を超過達成している。通期予想を据え置いたが上振れの可能性がありそうだ。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株主優待制度は3月末と9月末の年2回

 株主優待制度は毎年3月31日および9月30日の年2回、1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。保有株式数に応じて優待券(詳細は会社HP参照)を贈呈する。

■株価は下値固め完了

 株価は反発力が鈍く年初来安値圏だが、大きく下押す動きは見られず下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。4月19日の終値は406円、前期推定PER(会社予想のEPS51円97銭で算出)は約8倍、前期推定配当利回り(会社予想の11円で算出)は約2.7%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS615円21銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約16億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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