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アルコニックスは反発の動き、23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調
- 2022/4/20 09:05
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東証プライム)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。22年3月期は半導体・電子部品関連の需要が高水準に推移して大幅増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り一服の形だったが調整一巡して反発の動きを強めている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお5月13日に22年3月期決算発表を予定している。
■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」
非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
■製造が利益柱
報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。
21年3月期のセグメント別構成比は、売上高では商社流通が78%(電子機能材28%、アルミ銅50%)で製造が22%(装置材料12%、金属加工10%)だが、経常利益では商社流通が39%(電子機能材30%、アルミ銅9%)で製造が61%(装置材料6%、金属加工55%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略によって、利益面では製造、特に金属加工が柱に成長している。
■積極投資で「環境親和型ビジネス」の創出にも挑戦
中期経営計画(22年3月期~24年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、24年3月期の目標値に連結経常利益96億円超、連結純利益67億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0倍程度としている。3年間の投資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円としている。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する。さらに資源循環型・環境配慮型社会の発展に貢献し、新たな「環境親和型ビジネス」の創出にも挑戦するとしている。
18年12月摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。
20年3月子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。
21年12月には、精密コネクタ金属端子部品のプレス加工などを展開する電子部品材料メーカーのジュピター工業(岩手県宮古市)を子会社化すると発表した。株式取得および連結子会社化は22年4月20日予定である。
21年8月に発表したCVCファンド(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合)については、所定の手続が完了したため21年12月に投資事業を開始した。21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用する。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す。
なお4月1日付で、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務、経理、総務、労務等の管理業務を集約して行うシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立した。
■22年3月期大幅増益予想、23年3月期も収益拡大基調
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用で前期比増減率非掲載だが利益に影響なし、21年8月6日に上方修正、21年11月5日に2回目の上方修正、22年2月9日に利益を3回目の上方修正)は、売上高が1520億円、営業利益が104億円、経常利益が108億円、親会社株主に帰属する当期純利益が78億円としている。また配当予想(21年9月28日に第2四半期末3円、期末3円、合計6円上方修正、22年2月25日に期末4円上方修正)は、21年3月期比10円増配の52円(第2四半期末24円、期末28円)としている。
第3四半期累計は売上高が1141億76百万円、営業利益が84億30百万円、経常利益が88億05百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が65億37百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価が1118億59百万円減少しているが、利益への影響はない。
収益認識会計基準適用のため前年同期比増減率は非記載だが、新基準へ組み替え後の前年同期売上高(734億63百万円)との比較で55.4%増収となり、営業利益は2.2倍増益、経常利益は2.1倍増益、親会社株主に帰属する四半期純利益は3.7倍増益だった。半導体・電子材料関連の取扱量が増加し、自動車関連の需要も好調に推移した。営業外収益では受取配当金が増加(前期は2億64百万円計上、今期は4億10百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益2億74百万円を計上し、特別損失では前期計上の関係会社株式売却損7億59百万円が剥落した。
セグメント別の利益(経常利益)は、商社流通が2.7倍の48億14百万円(電子機能材が2.6倍の31億83百万円、アルミ銅が2.9倍の16億31百万円)で、製造が67.3%増の39億87百万円(装置材料が50.9倍の12億33百万円、金属加工が16.7%増の27億54)だった。
四半期別に見ると。第1四半期は売上高369億44百万円、営業利益30億46百万円、経常利益34億87百万円、第2四半期は売上高376億28百万円、営業利益は25億75百万円、経常利益25億73百万円、第3四半期は売上高396億04百万円、営業利益28億09百万円、経常利益27億45百万円だった。
通期予想は新基準へ組み替え後の前期売上高(1056億87百万円)との比較で売上高が43.8%増収となり、営業利益は85.0%増益、経常利益は88.8%増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2.7倍増益となる。セグメント別の利益(経常利益)計画は、商社流通が2.7倍の61億円(電子機能材が2.4倍の40億円、アルミ銅が4.0倍の21億円)、製造が34.6%増の47億円(装置材料が4.2倍の14億円、金属加工が4.4%増の33億円)としている。
修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高75.1%、営業利益81.1%、経常利益81.5%、親会社株主に帰属する当期純利益83.8%だった。22年3月期は半導体・電子部品関連の需要が高水準に推移して大幅増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は反発の動き
株価は戻り一服の形だったが調整一巡して反発の動きを強めている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。4月19日の終値は1457円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS259円40銭で算出)は約6倍、前期推定配当利回り(会社予想の52円で算出)は約3.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1709円55銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約451億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)