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WOW WORLDは調整一巡、23年3月期収益拡大基調
- 2022/4/21 09:04
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
WOW WORLD<2352>(東証プライム、旧エイジアが21年7月1日付で社名変更)はメール配信システムの大手である。自社開発e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズをベースとして企業のCRM運用支援を展開している。22年3月期はEBITDAが横ばい、営業利益以下が減益の見込みだが、23年3月期は営業活動の強化やクラウドサービスの成長で収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く年初来安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。なお5月10日に22年3月期決算発表を予定している。
■メール配信などe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力
旧エイジアが21年7月1日付で商号をWOW WORLD(ワオワールド)に変更した。さらにM&Aを加速させるため22年7月には持株会社(仮称:WOW WORLD GROUP)へ移行予定である。
自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズをベースとして、企業のCRM運用支援を行うアプリケーション事業、コンサルティング事業、システム受託開発事業、EC事業を展開している。20年10月には国産クラウドCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)のトップベンダーであるコネクティをグループ化した。
eメールを活用したマーケティングソリューションを強みとしている。メール配信システムのWEBCAS e-mailは、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。22年3月には最新バージョンWEBCAS e-mail Ver.9.1をリリースした。
WEBCASシリーズは、メール配信システムのWEBCAS e-mailを中心とするe-CRMアプリケーションシリーズで、導入企業数は21年9月末時点で7500社を突破している。国内メール送信パッケージ市場シェア1位(ITR発行の市場調査レポート、2020年度ベンダー別売上金額シェア)である。
■クラウドサービスが拡大
21年3月期のセグメント別売上高構成比はアプリケーション事業71%、コンサルティング事業21%、オーダーメイド開発事業0%、EC事業7%、営業利益構成比(調整前)はアプリケーション事業96%、コンサルティング事業6%、オーダーメイド開発事業0%、EC事業▲2%だった。
なお22年3月期からセグメント区分を、エンタープライズ・ソフトウェア事業(従来のアプリケーション事業、デジタル・マーケティング運用支援事業(従来のコンサルティング事業)、EC事業、その他(従来のオーダーメイド開発事業)に変更している。
エンタープライズ・ソフトウェア事業は、マーケティングプラットフォームWEBCASシリーズの開発・販売、および子会社コネクティが展開するエンタプライズCMSのConnecty CMS onDemandの開発・販売である。
デジタル・マーケティング運用支援事業は、WEBCASシリーズを活用するためのコンサルティング、Webサイト制作支援・コンサルティング、および子会社コネクティのCMS運用である。
EC事業は子会社ままちゅがベビー服ECサイト「べびちゅ」を運営している。製品開発を強化するため、ECのマーケティングノウハウを吸収して製品開発のヒントを得る研究的位置付けとして展開している。オーダーメイド開発事業は新規受注を積極的に展開せず、既存の利益率の高い案件のみを継続している。
収益面では下期の構成比が高い特性があり、クラウドサービスの拡大によってストック型構造の特性を強めている。また特定の大型案件の影響を薄めて売上高の平準化を進めている。なお23年3月期からIFRS(国際会計基準)適用予定である。
■クラウドサービスやM&Aで中期成長目指す
中期経営計画の目標値(21年5月に上方修正)は、最終年度23年3月期の売上高38億円、EBITDA11億円としている。顧客のマーケティング活動に対する横断的なソリューションの提供を目指し、M&Aを積極活用して、クラウドサービスを中心とする既存事業の飛躍的成長、グループシナジーの創出、財務戦略の最適化などを推進する。
21年7月にはベビー服ECサイト「べびちゅ」において、世界125ヶ国に向けて多言語対応の越境ECを開始した。21年10月には、子会社コネクティが新開発したCDP(Customer Date Platform)サービスのConnecty CDPの販売を開始した。22年2月には出資先のデジタルアセットマーケッツ(19年11月に出資)が暗号資産ジパングコインの一般利用者向け取引を開始した。
22年3月には従業員のキャリア形成を目的として、新しい働き方「兼業制度」を導入した。従業員の多様な働き方を推進し、さらなる組織の活性化と顧客価値の創造を目指す。また22年4月には一部の部門を対象に、日本全国どこでも居住が可能なフルタイム在宅勤務制度を導入した。
■プライム市場の上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画に基づいて、経営目標の達成に向けて各種施策を着実に進めるとともに、情報開示およびコーポレートガバナンスの充実、株主還元などの取り組みによって企業価値の向上(時価総額の増大)を図る。そして中期経営計画の最終年度となる23年3月期までにプライム市場の上場維持基準適合を目指すとしている。
■22年3月期EBITDA横ばいだが23年3月期収益拡大基調
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、1月31日に下方修正)は、売上高が21年3月期比20.5%増の28億40百万円、EBITDAが0.8%増の5億70百万円、営業利益が10.1%減の3億70百万円、経常利益が13.0%減の3億70百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が16.9%減の1億85百万円としている。配当予想は21年3月期比5円増配の30円(期末一括)としている。連続増配予想である。
前期比では大幅増収だが、エンタープライズ・ソフトウェア事業のCRM、デジタル・マーケティング運用支援事業のCMS、およびEC事業の売上高が従来予想を下回る見込みだ。コスト面では、グループ子会社において外注費や派遣社員の人件費が急増していることも考慮した。各利益は従来の大幅増益予想から一転してEBITDAを横ばい、営業利益以下を減益予想としている。なお特別損失にコネクティの移転に伴って固定資産除却損を計上する。
第3四半期累計は売上高が前年同期比28.6%増の21億08百万円、EBITDAが29.6%増の4億66百万円、営業利益が14.9%増の3億01百万円、経常利益が9.2%増の2億99百万円、親会社株主帰属四半期純利益が0.4%減の1億67百万円だった。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が76百万円増加、売上原価が17百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ59百万円増加している。
全体として計画を下回ったが、前年同期比ではクラウドサービスWEBCAS SaaSスタンダード版の伸長や、コネクティの連結(21年3月期第3四半期から連結)などで増収、EBITDA・営業・経常増益だった。人件費の増加、のれん償却費の増加、カスタマーサクセス関連費用やIFRS準備費用の増加などを増収効果で吸収した。EBITDAマージンは22.1%で0.1ポイント上昇した。親会社株主帰属四半期純利益は実効税率が上昇して法人税等が増加したため微減益だった。
主力のエンタープライズ・ソフトウェア事業(旧アプリケーション事業)の売上高は17.1%増の14億28百万円だった。オンプレミスの売上高は12.3%減少して2億49百万円だったが、既存のCRMの伸長(13.8%増の10億07百万円)に、コネクティのCMS(3.5倍の1億69百万円、前年は第3四半期のみ計上)も寄与して、クラウドサービスの売上高が25.9%増の11億76百万円と大幅伸長した。売上総利益率は5.5ポイント上昇して68.6%となった。
デジタル・マーケティング運用支援事業(旧コンサルティング事業)の売上高は、2.1倍の5億86百万円だった。既存のCRMの伸長(6.0%増の1億84百万円)に、コネクティのCMS(3.7倍の4億01百万円、前年は第3四半期のみ計上)も寄与した。売上総利益率は2.1ポイント低下して23.9%となった。EC事業(子会社ままちゅ)の売上高は29.2%減の93百万円だった。コロナ禍の長期化でターゲット層の「お出掛け需要」が減少した。売上総利益率は1.1ポイント上昇して41.2%となった。
なお第3四半期のクラウドサービス継続契約数は、CRMのSaaSプラミアム版が前年同期比8増加の240、SaaSスタンダード版が216増加の1347、CRIが8増加の37となった。コロナ禍での企業のDX需要も背景として増加基調である。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高6億77百万円、EBITDA1億47百万円、営業利益1億円、第2四半期は売上高7億11百万円、EBITDA1億70百万円、営業利益1億16百万円、第3四半期は売上高7億20百万円、EBITDA1億49百万円、営業利益85百万円だった。
通期の売上高計画は、エンタープライズ・ソフトウェア事業が12.4%増の18億89百万円(内訳はクラウドサービスが19.6%増の15億81百万円、オンプレミスが14.3%減の3億08百万円)、デジタル・マーケティング運用支援事業が63.4%増の8億22百万円、EC事業が24.4%減の1億25百万円としている。
重点施策として、既存顧客のロイヤリティ向上に特化するカスタマーサクセスチームを営業組織内に新設し、解約抑制と定着化の促進、アップセルやクロスセルによる顧客単価向上などを推進する。そして第4四半期以降には、営業支援システムの全面刷新の完了、営業およびカスタマーサクセス人員の採用・育成強化を推進する方針としている。
22年3月期はEBITDAが横ばい、営業利益以下が減益の見込みだが、23年3月期は営業活動の強化やクラウドサービスの成長で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は3月末と9月末の2単元以上保有株主対象
株主優待制度は、毎年3月31日および9月30日時点の2単元(200株)以上保有株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて株主優待ポイントを進呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は調整一巡
株価は反発力が鈍く年初来安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。4月20日の終値は1106円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS47円03銭で算出)は約24倍、前期推定配当利回り(会社予想の30円で算出)は約2.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS438円87銭で算出)は約2.5倍、そして時価総額は約44億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)