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巴工業は上値試す、22年10月期減益予想だが上振れ余地
- 2022/4/25 08:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、および合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。4月12日には脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えたと発表している。22年10月期は売上構成差や経費増加などを考慮して減益予想としているが、第1四半期の進捗率が概ね順調であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。株価は3月の年初来高値圏から利益確定売りで一旦反落したが、低PBRも評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。
21年10月期のセグメント別売上構成比は、機械製造販売事業が27%(機械が8%、装置・工事が3%、部品・修理が16%)で、化学工業製品販売事業が73%(合成樹脂関連が19%、工業材料関連が21%、化成品関連が16%、機能材料関連が8%、電子材料関連が9%、その他が1%)だった。営業利益構成比は機械製造販売事業が31%、化学工業製品販売事業が69%だった。なお22年10月期より化学工業製品事業の工業材料関連から新たに鉱産関連を分離して表示する。
なお欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社として、22年4月20日にTOMOE Advanced Materilsを設立(営業開始22年6月上旬予定)した。
収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。
■22年10月期営業利益26億円目標
中期経営計画(第12回中期経営計画Change For The Future)では目標値として、22年10月期の売上高490億円(機械140億円、化学品350億円)、営業利益26億円(機械9億円、化学品17億円)、経常利益26億円、EBITDA30億円、純利益17億円、ROE(純資産利益率)5.7%を掲げている。
重点施策として、海外事業拡大の継続、さらなる収益性向上、環境負荷軽減、資本効率改善、成長に向けた積極投資、働き甲斐のある職場環境の構築と人材育成、SDGsへの取り組み強化を推進する方針だ。
21年7月には、AIが自律的に遠心分離機の運転制御を行う新しいデカンタ自動運転制御システム「セントニオ(CentNIO)」の販売を開始した。
なお4月12日にはサステナビリティ経営推進基本方針に基づき、脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えたと発表している。
■22年10月期減益予想だが上振れ余地
22年10月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため売上高の増減率は非掲載、利益への影響軽微)は、売上高が396億50百万円、営業利益が21年10月期比16.0%減の23億90百万円、経常利益が17.4%減の24億円、親会社株主帰属当期純利益が7.0%減の19億60百万円としている。配当予想は21年10月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
機械製造販売事業は、売上高が128億円(機械が45億40百万円、装置・工事が14億70百万円、部品・修理が67億90百万円)で、営業利益が収益性の良い部品修理販売の減少と販管費の増加で12.1%減の7億80百万円の計画としている。
化学工業製品販売は、売上高が265億80百万円(22年10月期より工業材料関連から新たに鉱産関連を分離して表示、合成樹脂関連が38億52百万円、工業材料関連が46億50百万円、鉱産関連が40億59百万円、化成品関連が60億35百万円、機能材料関連が37億88百万円、電子材料関連が41億84百万円、その他が2億82百万円)で、営業利益が営業開発関係の販管費の増加で17.7%減の16億10百万円としている。
第12回中期経営計画の最終年度にあたり、計画達成に向けた重点施策として、SDGsへの取り組みを強化するとともに、機械製造販売では海外ビジネス(北南米、アジア・その他地域)の拡大、将来の成長に資するAI制御システムやバイナリー発電装置などの研究開発、コストダウンのための生産改革、化学工業製品販売では耐火物・建材・接着剤向けの販売拡大、建材・樹脂向けフィラーの販売シェア拡大、高機能商材の拡販や新規商材の拡充などを推進する。なお特別利益に社員寮売却益の計上を見込んでいる。
第1四半期は、売上高が99億60百万円、営業利益が前年同期比18.6%減の5億28百万円、経常利益が17.1%減の5億59百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は特別利益(固定資産売却益4億56百万円)を計上して38.6%増の6億89百万円だった。
化学工業製品販売事業が伸長したが、機械製造販売事業が減少したため、全体として営業・経常減益だった。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が14億03百万円減少、売上原価が14億34百万円減少、営業利益が30百万円増加、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ32百万円増加している。
機械製造販売事業は、売上高が19億23百万円(収益認識会計基準適用の影響額として1億82百万円増加、旧基準ベースでは前年同期比38.6%減の17億41百万円)で、営業利益が36百万円の赤字(前年同期は1億10百万円の黒字)だった。国内官需向け機械および装置・工事が伸長したが、国内民需向け機械、海外向け機械、全分野の部品・修理が減少した。
化学工業製品販売は売上高が80億37百万円(同15億85百万円減少、旧基準ベースでは前年同期比23.8%増の96億23百万円)で、営業利益が5.0%増の5億65百万円だった。工業材料関連の建材・耐火物用途、化成品関連の塗料・インキ用途、電子材料関連の半導体製造用途を中心に伸長した。
通期予想は据え置いている。売上構成差や経費増加などを考慮して減益予想としている。ただし第1四半期の進捗率は売上高が25.1%、営業利益が22.1%、経常利益が23.3%、親会社株主帰属当期純利益が35.2%と概ね順調だった。通期予想に上振れ余地がありそうだ。収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は10月末の株主対象
株主優待制度は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、ワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。
■株価は上値試す
株価は3月の年初来高値圏から利益確定売りで一旦反落したが、低PBRも評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。4月22日の終値は2289円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS196円43銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3191円07銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約241億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)