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フライトホールディングスは有望案件目白押しで中期成長期待
- 2022/4/25 08:56
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
フライトホールディングス<3753>(東証スタンダード)は電子決済ソリューションを主力としてシステム開発・保守なども展開している。4月21日にはAndroid携帯を決済端末として利用できる小・中規模事業者向け「Tap to Phone」の決済ソリューション「Tapion」の公式WEBサイトオープンを発表している。22年3月期は半導体不足に伴う新規顧客向け受注手控えなどが影響するが、キャッシュレス関連、マイナンバーカード関連、無人自動精算機関連など有望案件が目白押しである。中期成長を期待したい。株価は2月の年初来安値圏から切り返して底打ち感を強めている。出直りを期待したい。
■電子決済ソリューションが主力
子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、子会社のイーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。
21年3月期のセグメント別売上高構成比はC&S事業が22%、サービス事業が72%、ECソリューション事業が6%だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。
■サービス事業は電子決済ソリューションを展開
サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。
ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。
Incredistシリーズは、EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドに認定されている。国内電子マネー決済では、19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了し、21年春からは近畿圏でスルッとKANSAI協議会が展開しているPiTaPaにも対応している。
戦略製品として、据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機としてマイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。マイナポイントや健康保険証のマイナンバーカードへの統合などで需要拡大が期待される。
Android携帯を決済端末として利用できる小・中規模事業者向け「Tap to Phone」の決済ソリューション「Tapion(タピオン)」も市場投入予定である。4月12日には「Tapion」において推奨Android携帯を選定する独自認定制度「Tapion検定」の作成と運用開始を発表した。また4月21日には「Tapion」公式WEBサイトオープンを発表した。現在は各種セキュリティ認定および国際カードブラン認定作業に入っており、ハードウェア製造に依存しないビジネスとして注力する。
自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。
■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風
電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となる。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられたため、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となっている。また国策として非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)の普及促進が図られている。さらに非接触が新型コロナウイルス対策としても注目されている。
こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。
18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。さらに22年3月には三菱UFJニコスと対面でのクレジットカード決済における包括的加盟店契約を締結した。
19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始した。GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。
19年7月には、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOVの車内決済システムとしてincredist Premiumが採用された。
またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。
22年3月には、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の規定に基づき、マイナンバーカードを活用した公的個人認証サービスのプラットフォーム事業者として、主務大臣認定(本認定においては総務大臣と内閣総理大臣)を取得した。
■ロボット関連も強化
C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。
ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。
■有望案件目白押しで中期成長期待
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし、2月10日に下方修正)は、売上高が21年3月期比6.0%減の32億円で、営業利益が20百万円(21年3月期は2億69百万円の赤字)、経常利益が0百万円(同2億75百万円の赤字)、そして親会社株主帰属当期純利益が0百万円(同2億82百万円の赤字)としている。
半導体不足の影響を考慮して電子決済ソリューション「Incredist」シリーズの新規顧客向け受注を控えたこと、無人精算機向け「VP6800」の出荷・設置が計画に対して遅れていること、電子マネーに関する検定機関が混み合っているため「Incredist Trinity」の検定が進まなかったこと、ECソリューション事業の大型案件開発スケジュールが遅延して受注損失引当金を計上したことなどが影響するようだ。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比14.4%増の20億26百万円、営業利益が1億08百万円の赤字(前年同期は5億77百万円の赤字)、経常利益が1億08百万円の赤字(同5億91百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億10百万円の赤字(同5億97百万円の赤字)だった。サービス事業の大型案件納品完了などで2桁増収となり、各利益の赤字幅が縮小した。
C&S事業は売上高が40.1%増の6億10百万円で、営業利益(調整前)が3百万円の赤字(同1億91百万円の赤字)だった。前期にプロジェクト損失を計上した反動で赤字幅が縮小した。サービス事業は売上高が5.9%増の12億58百万円で、営業利益が1億41百万円の黒字(同1億86百万円の赤字)だった。顧客都合で前期から期ズレとなっていた電子決済ソリューション「Incredist」大型案件の納品が完了した。ECソリューション事業は売上高が7.6%増の1億57百万円で、営業利益が40百万円の赤字(同6百万円の黒字)だった。大型開発案件の開発スケジュール遅延で受注損失引当金を計上した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が10億67百万円で営業利益が1億84百万円、第2四半期は売上高が5億17百万円で営業利益が1億38百万円の赤字、第3四半期は売上高が4億42百万円で営業利益が1億54百万円の赤字だった。
22年3月期は半導体不足に伴う新規顧客向け受注手控えなどが影響するが、キャッシュレス関連、マイナンバーカード関連、無人自動精算機関連など有望案件が目白押しである。なお「Tap to Phone」の決済ソリューション「Tapion」については、日本初のソリューションのため実用化に向けて関係各所と調整中である。開発を完了しており、23年3月期第2四半期にサービスインの見込みとしている。中期成長を期待したい。
■株価は底打ち
株価は2月の年初来安値圏から切り返して底打ち感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。4月22日の終値は389円、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS45円33銭で算出)は約8.6倍、そして時価総額は約37億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)