ミロク情報サービスは調整一巡、23年3月期も収益拡大基調

 ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトを主力としている。成長戦略としてERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォーム構築を目指し、クラウドサービス・サブスクモデルへの変革も推進している。22年3月期は先行投資で費用が増加するが、クラウドサービスの利用社数増加やストック型のソフト使用料収入の伸長などで増収増益予想としている。23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して戻り一服の形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。なお5月13日に22年3月期決算発表を予定している。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 21年3月期の売上高構成比は、システム導入契約売上高57%(システム導入契約時のハードウェア11%、ソフトウェア33%、システム導入支援サービスなどのユースウェア13%)、サービス収入36%(会計事務所向け総合保守サービスTVS7%、ソフト使用料7%、企業向けソフトウェア運用支援サービス16%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入4%、サプライ・オフィス用品など継続的な役務の対価2%)、その他8%だった。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。なお21年11月には、中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」が、矢野経済研究所「2021ERP市場の実態と展望」で09年から12年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得したと発表している。

 収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、21年3月期の新規企業向け売上高比率は5.2ポイント上昇して34.0%となった。

 またAPI契約またはスクレイピング契約により、同社の製品・サービスから連携可能な金融機関は、21年2月時点で国内金融機関1270のうち1118(カバー率88.0%)に達している。

■M&A・アライアンスを積極活用

 M&A・アライアンス戦略では、20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化、21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。

 21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月には、税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携した。21年9月にはアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。AIを軸としたDX分野の新製品・サービスの開発を目指す。

■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進

 中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期の売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。

 既存のERP事業では、デジタルマーケティングを取り込み、サブスクモデル比率を高めて安定収益源確保・継続的成長を実現する。新規事業では、デジタル・非対面時代に誰もが簡単にDXを実現できる統合型DXプラットフォームの国内NO.1を目指す。

 基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。

 クラウドサービス・サブスクリプションモデルへの変革を推進するとともに、企業の売上拡大・企業価値向上を支援するため、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月には中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」の販売を開始した。AI機能を拡充し、業務のDX推進をサポートする。

 21年9月にはクラウド型ワークフローサービス「MJS DX Workflow」の提供を開始した。中堅企業向けERPシステム「Galileopt NX―Plus」とリアルタイムでデータ連携し、中堅企業の業務効率化を支援する。

 21年12月には、連結納税制度から移行されるグループ通算制度(令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用)に対応したシステムを、22年10月から提供開始すると発表している。グループ通算制度に対応した申告書の作成業務効率化を支援する。

 4月19日には子会社DX Tokyoの設立(22年2月設立)を発表した。全国の中小企業を対象にIT専門家シェアリング/サブスク事業を展開する。

■社会全体のDXを推進

 なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。

 20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。

■22年3月期増収増益予想、23年3月期も収益拡大基調

 22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、増減率は適用前の21年3月期実績との比較、pring社株式売却益計上に伴って21年7月13日付で親会社株主帰属当期純利益を14億30百万円上方修正、2月4日付で売上高を9億円下方、営業利益を5億70百万円上方、経常利益を6億円上方、親会社株主帰属当期純利益を5億20百万円上方修正)は、売上高が21年3月期比7.1%増の365億円、営業利益が1.6%増の46億円、経常利益が2.0%増の46億円、親会社株主帰属当期純利益が63.1%増の43億30百万円としている。配当予想(2月4日付で期末7円上方修正)は、21年3月期比7円増配の45円(期末一括、普通配当40円+特別配当5円)としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比9.2%増の272億67百万円、営業利益が5.3%増の37億95百万円、経常利益が5.7%増の38億09百万円、親会社株主帰属四半期純利益が97.3%増の39億15百万円だった。特別利益にはpring社株式譲渡に伴う関係会社株式売却益20億87百万円を計上した。

 ストック型のサービス収入が牽引し、新製品リリースに伴う製品償却費の負担増や人件費の増加など先行投資を吸収して増収増益だった。収益認識会計基準適用の影響額としては、従来方法に比べて売上高が2億22百万円減少、売上原価が2億35百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ12百万円増加している。

 システム導入契約売上高は前年同期比5.4%増の152億08百万円(ハードウェアが16.6%減の23億94百万円、ソフトウェアが12.0%増の93億95百万円、ユースウェアが7.9%増の34億18百万円)だった。

 サービス収入は7.1%増の96億31百万円(会計事務所向けTVSが1.9%増の18億87百万円、ソフト使用料収入が21.5%増の19億91百万円、企業向けソフトウェア運用サービスが6.4%増の41億60百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービスが3.4%増の11億30百万円、サプライ・オフィス用品が7.0%減の4億61百万円)だった。ストック型のソフト使用料収入がサブスクリプションモデル採用なども寄与して大幅伸長した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が87億47百万円で営業利益が9億39百万円、第2四半期は売上高が90億34百万円で営業利益が14億23百万円、第3四半期は売上高が94億86百万円で営業利益が14億33百万円だった。

 通期は先行投資で費用が増加するが、クラウドサービスの利用社数増加やストック型のソフト使用料収入の伸長などで吸収する見込みだ。通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高74.7%、営業利益82.5%、経常利益82.8%、親会社株主帰属当期純利益90.4%と順調である。23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化も影響して戻り一服の形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。4月25日の終値は1285円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS143円55銭で算出)は約9倍、前期推定配当利回り(会社予想45円で算出)は約3.5%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS655円66銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約447億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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