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テンポイノベーションは調整一巡、23年3月期も収益拡大基調
- 2022/4/26 08:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テンポイノベーション<3484>(東証プライム)は、飲食業の小規模事業者を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業を主力としている。転貸借物件数の増加に伴って賃料収益を積み上げるストック型ビジネスモデルである。22年3月期はコロナ禍で飲食業界が厳しい状況下でも成約件数・転貸借物件数が順調に増加して増収増益・増配予想としている。23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響で反発力の鈍い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。なお5月11日に22年3月期決算発表を予定している。
■飲食業の出店希望者向け居抜き店舗転貸借事業
首都圏の一都三県(特に東京都)において、飲食業の小規模事業者を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗(造作物が残っており、すぐに営業できる状態の物件)を転貸借する店舗転貸借事業を主力として、不動産売買事業も展開している。また22年4月1日付で子会社の店舗セーフティーを設立し、独自の審査ノウハウを用いて店舗物件専門の家賃保証事業を開始した。
21年3月期の構成比は、売上高が店舗転貸借事業93%、不動産売買事業7%、営業利益が店舗転貸借事業68%、不動産売買事業32%だった。全社売上に占めるランニング収入(転貸借物件からの賃料収入、転貸借契約更新時の更新手数料収入など)の比率は88.6%だった。
店舗転貸借事業は、仲介ではなく、サブリースでもなく、不動産業における第6のカテゴリーと位置付けている。不動産オーナーにとっては賃貸料収入安定、不動産会社にとっては仲介収益機会獲得、店舗出店者にとっては出店費用削減、店舗撤退者にとっては閉店コスト削減というメリットがある。
また、飲食業は他の産業との比較で、開業・廃業による入れ替わりが激しいため市場機会が豊富という特徴もある。さらに造作物(厨房機器、テーブル、床コンクリート、排気ダクトなど)の廃棄量を削減できるという点で、持続可能な社会の実現に貢献するビジネススキームである。
店舗転貸借事業は保有物件数(転貸借物件数)の増加に伴って賃料収益(ランニング収入)を積み上げるストック型ビジネスモデルである。21年3月期末時点の転貸借物件数は20年3月期末比22件増加の1706件だった。
不動産売買事業は、不動産業者とのリレーションシップ強化も目的として、長期保有は行わず一定の資金枠内で資金効率を重視して売買を行う。
またCSR活動の一環として、飲食店舗を活用した子ども食堂を19年6月から開催している。店舗の特性を活かして、子供達への食事提供にとどまらず、地域における居場所づくり、親御さんへの支援といった社会的インフラになることを目指している。コロナ禍のため開催を一時的に中断しているが、順次再開する方針だ。
なおクロップス<9428>の連結子会社だが、営業上の取引はなく経営上の独立性を確保している。
■転貸借物件数29年3月期5500件目標
中期経営計画の目標値は24年3月期売上高141億74百万円、営業利益10億77百万円、成約数520件、転貸借物件数2451件としている。転貸借物件数の長期的な目標は29年3月期5500件(首都圏1都3県の当事業対象店舗数推定約11万件に対するシェア5%相当)としている。
成長に向けた基本方針は転貸借契約件数と賃料差益の最大化、テーマは専門特化・プロフェッショナル化としている。主要施策として営業採用の積極化、居抜き物件・店舗情報サイト「居抜き店舗.com」における物件紹介強化、従業員ロイヤリティの向上を推進する。
営業強化については、新規営業の経験のある人材を年24名程度採用し、営業ノウハウの体系化なども推進して、25年3月期にプロフェッショナル営業100名体制の実現を目指す。
居抜き物件・店舗情報サイト「居抜き店舗.com」はリニューアルによって、コロナ禍を出店チャンスとみる飲食店経営者のニーズを捉えるWEBサイトに進化し、新規会員数が大幅に増加(21年3月期は20年3月期比70.4%増)している。さらに21年7月には動画を活用した物件紹介も開始した。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。28年3月期までに流通株式時価総額のプライム市場上場維持基準適合を図るため各種取組を推進する。
具体的には、継続的な業績向上の実現によって企業価値の向上(時価総額の上昇)を図るとともに、法定開示・適時開示にとどまらない積極的なIRによって市場に情報発信する。また必要に応じて、流通株式比率の向上に向けたテクニカルな取組も検討する。
継続的な業績向上の実現では、市場開拓余地が大きく競合優位性も高い店舗転貸借事業に専門特化し、転貸借契約件数の最大化(29年3月期5500件目標)を通じて、サブスクリプション(ストック)型収益である賃料差益の最大化を推進することで、継続的な業績向上(目途として前期比10%~20%程度の増収増益継続)の実現を図る方針だ。
■22年3月期増収増益・増配予想、23年3月期も収益拡大基調
22年3月期の業績予想(非連結、収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は売上高が21年3月期比9.6%増の113億34百万円、営業利益が11.3%増の8億14百万円、経常利益が3.4%増の8億70百万円、そして当期純利益が3.4%増の5億95百万円としている。営業外収益では助成金収入の減少などを見込んでいる。配当予想(2月3日公表)は3月24日に期末1円上方修正して、21年3月期比3円増配の12円(期末一括)としている。予想配当性向は35.9%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比6.2%増の84億29百万円、営業利益が6.1%増の6億41百万円、経常利益が0.6%減の6億89百万円、四半期純利益が1.2%減の4億67百万円だった。
コロナ禍で飲食業界が厳しい状況下でも成約件数・転貸借物件数が増加して増収・営業増益と順調だった。なお営業外収益で受取補償金が増加(前期は64百万円、今期は88百万円)したが、営業外費用で支払補償費が増加(前期は35百万円、今期は75百万円)したため、経常利益と四半期純利益は微減益だった。
店舗転貸借事業は売上高が6.7%増の76億45百万円、営業利益が51.3%増の5億35百万円だった。新規契約件数および後継契約件数(転貸借契約を解約後に次の転借人と転貸借契約を締結した物件)の合計成約件数は前年同期比79件増加の295件となり、期末時点で転貸借契約が締結されている転貸借物件数は前年同期比211件増加の1888件となった。コロナ禍でも旺盛な個人・小規模飲食事業者の出店ニーズに対応して積極的な仕入を実行した。なお四半期別の成約件数は第1四半期が95件、第2四半期が96件、第3四半期が104件で、第3四半期はコロナ禍前の20年3月期第4四半期(105件)以来の100件超に回復した。
不動産売買事業は売上高が1.5%増の7億84百万円、営業利益が57.7%減の1億06百万円だった。前期の高収益物件売却の反動で減益だが、店舗転貸借事業の推進に向けた不動産業者とのリレーションシップ強化を目的とする事業である。当期は4物件を売却、5物件を取得して、期末時点の保有物件数は3件となった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が27億43百万円で業利益が2億23百万円、第2四半期は売上高が29億24百万円で営業利益が2億18百万円、第3四半期は売上高が27億62百万円で営業利益が2億円だった。
通期予想は据え置いている。店舗転貸借事業の合計成約件数は前期比106件増加の420件、期末の転貸借契約締結物件数は前期末比210件増加の1916件の計画としている。コロナ禍で飲食業界の厳しい状況が継続するが、個人・小規模飲食事業者の出店ニーズの変化に合致した店舗物件の仕入を推進する。
第3四半期累計の進捗率は売上高が74.4%、営業利益が78.8%、経常利益が79.2%、当期純利益が78.6%と順調である。通期予想を据え置いたが、コロナ禍で飲食業界が厳しい状況下でも転貸借物件数・成約件数が増加基調であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。さらに23年3月期(子会社の店舗セーフティーを設立して連結決算に移行予定)も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末
株主優待制度(21年5月に変更)については、毎年3月31日時点で300株以上を保有し、且つ100株以上の保有を1年以上継続している株主を対象として、お食事券ジェフグルメカード5000円分を贈呈(詳細は会社HP参照)する。22年3月末対象から運用開始した。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化の影響で反発力の鈍い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。4月25日の終値は806円、前期推定PER(会社予想のEPS33円39銭で算出)は約24倍、前期推定配当利回り(会社予想の12円で算出)は約1.5%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS166円14銭で算出)は約4.9倍、時価総額は約142億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)