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加賀電子は調整一巡、積極的な事業展開で23年3月期も収益拡大基調
- 2022/4/27 08:47
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。中期経営計画では更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。22年3月期は需要が高水準に推移して大幅増益・増配予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開、商社ビジネスとEMSビジネスのシナジー効果で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して3月の戻り高値圏から反落の形となったが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。なお5月12日に22年3月期決算発表を予定している。
■独立系の大手エレクトロニクス総合商社
独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも積極活用して、半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。
富士通エレクトロニクスを19年1月に子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得、20年12月28日付で社名を加賀FEIに変更、22年1月1日付で完全子会社化)した。また19年10月にパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月に旭東電気(20年4月民事再生法適用申請)から新設分割された新:旭東電気を子会社化した。
21年10月には加賀EFIが、太陽誘電<6976>からBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継し、22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入した。
21年3月期のセグメント別売上高構成比は、電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)84%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)11%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)4%、営業利益(調整前)構成比は電子部品事業72%、情報機器事業22%、ソフトウェア事業2%、その他事業4%だった。
中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他事業)とする。21年3月期売上構成比は電子部品事業が62%、EMS事業が24%、CSI事業が11%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が26%、EMS事業が48%、CSI事業が22%、その他事業が3%だった。
■収益力強化や新規事業創出を推進
中期経営計画2024では基本方針にさらなる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。経営目標値は、25年3月期売上高7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益200億円、ROE8.5%以上(安定的に)としている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。
重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。SDGs経営の推進については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指す。
21年7月には、ソフトバンクが設立したソフトバンク5Gコンソーシアムの5G関連パートナーとして参画した。5G関連通信設備・機器の提供などを通じて、5G普及促進とともに、事業を通じた社会貢献を追求するとしている。
22年4月には社長直下にSDGs推進室を新設した。SDGsの取り組みに関するグループ全体の連携を強化し、サステナビリティ経営を推進する。
■ベンチャー投資でイノベーション創出を支援
創立50周年を記念して設立した「50億円ファンド」を通じてベンチャー投資を行い、イノベーション創出を支援している。
出資実績としては、ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONX、前立腺癌生検および治療用システム開発の米HARMONUS、スマートセキュリティサービスのSecual、ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmo、AIソフトウェア開発のハカルス、次世代蓄電デバイス「グリーンキャパシタTM」開発のスペースリンク、動画CM配信プラットフォーム事業やデジタルサイネージ事業CMerTVを展開するSun Asterisk、アジア圏を中心にライブ配信アプリ「17Live」などソーシャルメディアを展開する台湾のM17、医療機器開発ベンチャーのニューロシューティカルズ、シェアリングプラットフォーム「Alice.style」を運営するレンタルサービスベンチャーのピーステックラボなどがある。
20年10月には、独自開発の光触媒技術を活用して各種環境製品を展開するカルテック(子会社化したエクセルがスタートアップ資金を出資)と、光触媒除菌脱臭機「TURNED K」の販売および製造に関わる部品調達で協業した。20年12月には、オンライン診療システム「D―CUBE」などオンライン健康支援事業を展開するリンケージに出資した。
21年5月には株式投資型クラウドファンディング事業者の日本クラウドキャピタルに出資、21年6月にはAI関連技術を開発するカタリナに出資した。21年10月にはドローン等無人航空機の企画・製造・販売を行うVFR(PCメーカーのVAIOの子会社)に出資、21年11月には堆肥化装置や脱臭装置等を開発・販売するミライエに出資した。21年12月には独自AI技術でエナジーインフォマティックス事業を展開するインフォメティスに出資した。
■22年3月期大幅増益・増配予想、23年3月期も収益拡大基調
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが利益への影響軽微、21年11月4日に利益を上方修正、2月3日に売上高・利益とも上方修正)は、売上高が21年3月期比12.5%増の4750億円、営業利益が52.6%増の175億円、経常利益が60.1%増の180億円、親会社株主帰属当期純利益が5.3%増の120億円としている。
配当予想(21年11月4日に特別配当で第2四半期末5円、期末5円、合計10円上方修正、2月3日に特別配当で期末20円上方修正)は、21年3月期比30円増配の110円(第2四半期末45円=普通配当40円+特別配当5円、期末65円=普通配当40円+特別配当25円)としている。
電子部品やEMSの需要が好調に推移し、売上総利益率の改善や経費の抑制も寄与する。営業利益は中期経営計画の目標値(130億円)を超過達成する見込みだ。修正後のセグメント別利益計画は、電子部品事業が81.6%増の148億円、情報機器事業が19.4%減の20億円、ソフトウェア事業が24.1%減の2億円、その他が5.4%増の5億円としている。親会社株主帰属当期純利益は前期計上の負ののれん発生益の剥落で減益予想だったが、一転して増益に転じる見込みとした。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比19.9%増の3526億84百万円、営業利益が95.0%増の146億58百万円、経常利益が105.9%増の148億86百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の負ののれん発生益が剥落して18.2%減の104億14百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が37億23百万円減少したが、利益への影響は軽微である。
電子部品事業は売上高が26.2%増の3114億12百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が140.0%増の130億02百万円だった。半導体や電子部品の需給逼迫が続く中、独立系商社としての調達力の強みを活かし、広範な業界からの旺盛な需要に対応した。EMSビジネスは車載関連、産業機器関連、医療関連が好調だった。M&Aで子会社化した加賀EFIとエクセルも増収効果で営業黒字転換した。
情報機器事業は、パソコン販売における法人向けリモートワーク需要一巡、LED照明機器やネットワーク機器など設備設置ビジネスにおける部品不足による製品供給難の影響などで、売上高が22.5%減の263億01百万円、利益が30.6%減の12億16百万円だった。
ソフトウェア事業は、売上高が8.2%減の18億41百万円で、営業利益が1億09百万円の赤字(前年同期は1億06百万円の黒字)だった。納期対応等で費用が増加した。その他事業は、売上高が13.0%増の131億29百万円で、営業利益が3.2倍の4億73百万円だった。リサイクルビジネスが好調だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1059億49百万円で営業利益が44億52百万円、第2四半期は売上高が1170億60百万円で営業利益が38億48百万円、第3四半期は売上高が1296億75百万円で営業利益が63億58百万円だった。
修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.2%、営業利益が83.8%、経常利益が82.7%、親会社株主帰属当期純利益が86.8%と順調だった。なお21年9月1日付でリリースした「ユーロテックジャパンに対する債権取立不能のおそれ」に関しては、当該棚卸資産や仕掛装備品の評価見直しを行い、その金額を合理的且つ保守的に織り込んでいる。
さらに23年3月期も積極的な事業展開、商社ビジネスとEMSビジネスのシナジー効果で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して3月の戻り高値圏から反落の形となったが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。4月26日の終値は2960円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS449円13銭で算出)は約7倍、前期推定配当利回り(会社予想の110円で算出)は約3.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS3311円24銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約850億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)