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ジーニーは調整一巡、23年3月期も収益拡大基調
- 2022/4/27 09:26
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジーニー<6562>(東証グロース)はマーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーを目指し、プロダクトのブランド名を広告プラットフォーム領域のGENIEE Ads Platform、およびマーケティングSaaS領域のGENIEE Marketing Cloudに刷新している。22年3月期はマーケティングSaaS領域の先行投資が完了し、収益拡大フェーズに入って大幅増益予想としている。23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は3月の年初来高値圏から利益確定売りで反落したが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお5月12日に22年3月期決算発表を予定している。
■マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニー
マーケティングテクノロジー領域(広告プラットフォーム領域、企業のDXを支援するマーケティングSaaS領域)のリーディングカンパニーを目指し、集客~販促~受注までを一気通貫で実行・管理できる唯一のセールス&マーケティングプラットフォームとして、利便性に優れて費用対効果が高く、精度も高い総合マーケティングソリューションを提供している。
20年11月に高速・高精度検索エンジン開発のビジネスサーチテクノロジを子会社化、21年8月に顧客獲得・管理チャットポットサービスを開発・提供するREACTを完全子会社化、22年2月にマルジュのWeb広告効果測定やレポート自動作成を支援するSaaS型サービスを承継した新設分割設立会社を子会社化した。
収益面の季節特性として、広告プラットフォーム領域は広告主の予算配分の影響を受けるため、12月および年度末の3月に売上が集中し、全体としての業績も下期偏重型となっている。ただしマーケティングSaaS領域の拡大によって平準化が進む見込みだ。
なお14年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)と資本業務提携し、現在はソフトバンク<9434>の持分法適用会社となっている。ソフトバンクと協業してクロスボーダーサービスの強化・拡大を推進している。
■Purposeを設定してブランド名を刷新
21年3月期の売上高構成比はアド・プラットフォーム事業が80%、マーケティングソリューション事業が10%、海外事業が11%だった。22年3月期からセグメント区分を、インターネット広告に関わる広告プラットフォーム事業、企業のDXを支援するマーケティングSaaS事業、および国内のプロダクトを東南アジア中心に展開する海外事業に変更した。
22年1月には更なる成長に向けてPurpose(存在意義)を設定した。さらにプロダクトのブランド名を広告プラットフォーム領域のGENIEE Ads Platform、およびマーケティングSaaS領域のGENIEE Marketing Cloudに刷新した。
Purposeに関しては、Business Purpose(ジーニーのプロダクトやサービスが実現する世界)で「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」、Corporate Purpose(組織の長期目標・存在意義)で「日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する」とした。
GENIEE Ads Platformのプロダクトは、サブブランドとしてGENIEE SSP、GENIEE DSP、GENIEE DOOH、GENIEE AFFILIATE、GENIEE DMSで構成される。
GENIEE Marketing Cloudのプロダクトは、サブブランドとしてGENIEE SFA/CRM(従来のちきゅう)、GENIEE CHAT(従来のChamo、Engagebot)、GENIEE MA(従来のMAJIN)、GENIEE SEARCH(従来のproboポップリンク・ポップファインド)、および新規プロダクトのGENIEE BIと、GENIEE DATACONNECTで構成される。
■GENIEE Ads Platformは独自アドテクノロジーが強み
GENIEE Ads Platformは、インターネット広告市場において、広告収益を最大化するサプライサイド(ネットメディア向け)のGENIEE SSPが取引実績2万社で国内シェア1位、デマンドサイド(広告主向け)のGENIEE DSPが広告主数500社で国内NO.1のデータ保有量を誇っている。
ネットメディアの広告収益最大化を図る独自のアドテクノロジー(ウェブサイトやスマートフォンアプリ等に各々の閲覧者に合った広告を瞬時に選択して表示させる技術)を強みとしている。ネット広告取引市場においては、RTB(広告枠を自動で瞬時にオークション形式で取引するシステム)によって取引されるが、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムで効果的な広告配信を実現している。さらにビッグデータやAIを活用して広告配信の精度向上や自動化に取り組んでいる。
21年9月には、Cookie規制への対策としてGENIEE SSPとGENIEE DSPが、DMP最大手であるインティメート・マージャー<7072>の3rd Party Cookieを利用せず、異なるドメイン間で3rd Party Dateの活用が可能な共通IDソリューションIM―UIDと連携し、広告配信検証を開始した。
22年3月にはセンコーグループホールディングス<9069>が提供する動画配信サービス「Goody!TV Web」の広告収益化支援を開始すると発表した。また、ジチタイアド(21年12月に親会社のホープ<6195>から会社分割で広告事業を承継)と共同で、22年度の気象庁ホームページの広告運用事業における広告配信システムの提供ならびに運用を行うと発表した。21年度は親会社のホープと共同で広告配信システムを構築・提供・運用している。
■DOOH分野に積極展開
GENIEE Ads Platformの拡大戦略としては、大型屋外サイネージ、タクシー広告、駅内広告、歯科医院待合サイネージなど、DOOH(自宅以外の場所で接触する屋外デジタル広告)分野に積極展開している。
18年11月タクシー後部座席に設置されたデジタルサイネージ向け広告配信プラットフォームを開発し、19年2月DeNA<2432>のタクシー配車サービスでの本格運用を開始した。19年11月にはメディカルアシストTVと業務提携し、歯科医院デジタルサイネージ向けプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年1月にはヒットと業務提携し、20年2月に首都高速道路沿い大型屋外ビジョン向けプログラマティックOOH広告配信を開始、20年3月に東京・渋谷ハチ公口および大阪・御堂筋沿いにプログラマティックOOH広告配信を開始した。
20年8月にはユニカと業務提携して、DOOH向け広告配信サービスYUNIKA VISION DOOHの提供を開始、20年10月には日本自動ドアおよびYmixと業務提携して、Fast Beautyが運営する全国約88店舗ヘアカラー専門店fufuに設置するタブレット端末へ広告配信を開始した。
21年5月には、デジタル屋外広告プラットフォームGENIEE DOOHがユナイテッドマーケティングテクノロジーのBypassと連携開始した。21年7月にはGENIEE DOOHとSpotX Japanの動画広告配信プラットフォームSpotXが連携した。
22年3月にはGENIEE DOOHがオープンコルクと連携開始した。横浜駅前の大型ビジョンYOKOHAMA VISIONにおけるDOOH広告枠買い付けが可能となる。
■DX支援のGENIEE Marketing Cloudを強化
GENIEE Marketing Cloudは、SaaS型のビジネスモデルで、企業のマーケティング活動のDX化を支援するソフトウェア・ツールを提供している。国内導入実績は1万社以上となっている。
主要プロダクトは、CRM(顧客管理)/SFA(営業管理)システムのGENIEE SFA/CRM、チャット型Web接客プラットフォームのGENIEE CHAT、マーケティングオートメーションツールのGENIEE MA、サイト内検索のGENIEE SEARCHである。さらに新規プロダクトとして、GENIEE BIや、GENIEE DATACONNECTも強化する。
GENIEE SFA/CRMは顧客管理および商談管理に特化したシンプルな設計のクラウド型サービスである。GENIEE CHATは顧客獲得と顧客満足を最大化する国産NO.1のチャットポットである。GENIEE MAは企業のさまざまなマーケティング活動を自動化できるプラットフォームである。GENIEE SEARCHは高速・高精度を実現する独自技術を搭載している。
新規プロダクトのGENIEE DATACONNECTは21年11月に提供開始した。社内にデータエンジニアがいなくても、社内複数システムに存在するデータを簡単に連携・統合できるツールである。GENIEE BIは22年2月に提供開始した。企業のデータによる意思決定・事業力強化を促進する次世代型BIツールである。
■24年3月期IFRSベースでEBITDA27億円~32億円目標
中期目標としては、24年3月期(IFRSベース)の売上高250億円~300億円、売上総利益80億円~90億円、営業利益20億円~25億円、EBITDA27億円~32億円を掲げている。なお日本基準ベースでは営業利益18億円~23億円となる。
マーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーとなるべく、広告プラットフォーム領域を伸ばしながら、マーケティングSaaS領域の急成長を目指す。またプライム市場への上場を目標として、流動性/ガバナンス/経営成績・財政状態の基準のクリアを目指すとしている。会計基準はIFRS適用を検討する方針だ。
■22年3月期大幅増益予想、23年3月期も収益拡大基調
22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため売上高の前期比増減率は非記載、利益への影響なし)は、売上高が134億25百万円~137億39百万円、営業利益が6億40百万円~8億40百万円(21年3月期比3.3倍~4.3倍)、経常利益が6億20百万円~8億20百万円(同4.2倍~5.5倍)、EBITDAが12億59百万円~14億59百万円(同2.1倍~2.5倍)、親会社株主帰属当期純利益が5億26百万円~6億65百万円(同5.2倍~6.5倍)としている。収益認識基準を適用しない場合の売上高予想は150億49百万円~153億63百万円(21年3月期比7.0%増~9.3%増)となる。配当予想は未定である。
第3四半期累計は、売上高が103億84百万円、営業利益が4億円(前年同期は37百万円)、経常利益が4億17百万円(同2百万円)、EBITDAが8億32百万円(同3億円)、親会社株主帰属四半期純利益が3億07百万円(同23百万円の赤字)だった。
広告プラットフォーム事業、マーケティングSaaS事業とも伸長して大幅増益だった。収益認識会計基準の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価がそれぞれ10億80百万円減少しているが、利益への影響はなかった。会計基準変更影響を除く従来基準ベースの売上高は12.9%増の114億64百万円だった。先行投資が完了して収益拡大フェーズに入り、第3四半期の利益は過去最高となった。そして第3四半期累計時点で各利益は21年3月期通期実績(営業利益1億95百万円、経常利益1億49百万円、EBITDA5億87百万円、親会社株主帰属当期純利益1億01百万円)を上回る水準に拡大した。
セグメント別(調整前、22年3月期から区分変更して一部組み換え、および収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載)に見ると、広告プラットフォーム事業は売上高が82億08百万円(前年同期は87億66百万円)で、利益(全社費用等調整前営業利益)が12億12百万円(同7億43百万円)だった。Web動画リワード広告フォーマットの提供開始、気象庁ホームページの広告運用事業における広告配信システムの提供開始、DOOH領域での広告配信拡大などにより、第3四半期の売上総利益は前年同期比29%増加して過去最高だった。
マーケティングSaaS事業は売上高が7億94百万円(同4億10百万円)で、利益が36百万円(同53百万円の赤字)だった。各プロダクトの機能強化や拡販などで有料アカウント数が増加基調である。なお新商品「GENIEE DATA CONNECT」の提供を開始した。
海外事業は売上高が14億45百万円(同10億58百万円)で利益が1億13百万円(同67百万円)だった。リセラーおよびパートナーシップの強化を推進した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が29億68百万円、営業利益が50百万円、EBITDAが1億93百万円、第2四半期は売上高が34億90百万円、営業利益が1億22百万円、EBITDAが2億62百万円、第3四半期は売上高が39億26百万円、営業利益が2億28百万円、EBITDAが3億77百万円だった。第3四半期の営業利益とEBITDAは過去最高だった。なお広告プラットフォーム事業は第3四半期と第4四半期が繁忙期となる季節特性がある。
通期予想は据え置いている。22年3月期はマーケティングSaaS領域の先行投資が完了して収益拡大フェーズに入り、成長軌道に乗って大幅増益予想としている。そして第3四半期累計時点で利益は21年3月期通期実績を上回る水準に拡大した。
通期レンジ予想上限値に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.6%、営業利益が47.6%、経常利益が50.9%、EBITDAが57.0%、親会社株主帰属当期純利益が46.2%だが、第3四半期の営業利益とEBITDAが過去最高だったこと、広告プラットフォーム事業で第3四半期と第4四半期が繁忙期となる季節特性があることなどを勘案すれば、通期予想に上振れ余地がありそうだ。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度を導入、22年3月末対象から実施
22年1月に株主優待制度導入を発表(詳細は会社HP参照)した。毎年3月末現在3単元(300株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じた優待ポイントを「ジーニー・プレミアム優待倶楽部」で商品と交換する。22年3月末対象から実施する。
■株価は調整一巡
21年8月13日発表の自己株式取得(上限35万株・3億50百万円、取得期間21年8月16日~22年8月15日)については、22年3月31日時点の累計取得株式数が27万5600株となっている。
株価は3月の年初来高値圏から利益確定売りで反落したが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。4月26日の終値は1028円、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS147円12銭で算出)は約7.0倍、時価総額は約186億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)