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クリーク・アンド・リバー社は上値試す、23年2月期も2桁増益・連続増配予想で収益拡大基調
- 2022/4/28 09:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。22年2月期は日本クリエイティブ分野の好調が牽引して大幅増益となり、過去最高業績だった。そして23年2月期も2桁増益・連続増配予想としている。さらに中期経営計画の目標値も上方修正した。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は好業績を評価して上場来高値を更新した。その後は地合い悪化の影響で小幅反落したが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開
クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。22年2月期の事業割合はプロデュースが36%、エージェンシー派遣が42%、エージェンシー紹介が13%、ライツマネジメント他が9%だった。
プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンピュータサイエンス、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、グループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトを提供している。22年2月期末時点でプロフェッショナルクリエイター34万4440人、クライアント4万4950社のネットワークを構築していることが強みだ。
新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)を展開している。
新規サービスとしては、米国C&R Globalが法務領域コンサルティングサービス、プロフェッショナルメディアが求人メディア運営、VR Japanが中国IDEALENS社製VRゴーグル販売、台湾インツミット社と合弁のIdrasysがAI予測ツール「Forecasting Experience」の開発・販売を展開している。クレイテックワークスはゲームコンテンツ開発・運営を展開し、インタラクティブブレインズの3DCGアバター事業、VR事業、コンテンツ開発事業を譲り受けた。またジェイアール東日本企画と共同でデータドリブンマーケティング事業を推進するJDDLを設立している。
21年4月にはブロックチェーンエンターテインメント事業のシンガポールDEA社に出資した。NFT(非代替性トークン)への取り組みとして、DEA社のプラットフォームにコミックやゲーム等のコンテンツを提供する。将来的には自社でNFTプラットフォームを運営することも視野に入れている。
21年8月には、EPSホールディングス<4282>、ワールドホールディングス<2429>、SBSホールディングス<2384>と共同で、エルダー人材の働き方の多様性を企画・実現する新会社HATARAKUエルダー(EPSホールディングスの連結子会社)を設立した。
22年3月には、アパレル事業を行っていた白井崇文氏と共同で17年12月に設立したforGIFTの株式を取得して子会社化した。アパレル業界における3DCG活用やDXによる新規事業を推進する。
さらに22年4月1日付で農業分野における障がい者雇用促進および農業を基軸とした地域雇用促進を目的とする子会社コネクトアラウンドを設立、グループ内における障がい者雇用促進を目的とする子会社One Leaf Cloverを設立し、22年4月1日現在でグループは22社となった。なお4月26日には、NFTプラットフォーム「ANIFTY」を運営するANIFTYの第三者割当増資を引き受けて子会社化(5月24日予定)すると発表している。
また事業シナジーを見越した資本参加として、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。
■日本クリエイティブ分野が拡大基調
22年2月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野8%、医療分野10%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益が日本クリエイティブ分野72%、韓国クリエイティブ分野0%、医療分野25%、会計・法曹分野3%、その他▲1%だった。
韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。
収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。
■プロフェッショナル50分野構想
中期経営計画では「プロフェッショナル50分野構想」を掲げている。目標数値については、計画初年度の22年2月期営業利益が2期目の23年2月期計画32億円を前倒しで達成し、さらに23年2月期以降も伸長が見込まれるため22年4月7日付で上方修正し、最終年度24年2月期の目標を売上高470億円、営業利益45億円、営業利益率9.5%としている。
基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。
直近の事業トピックスとして、21年12月には、日本最大級のゲーム・XR・Web・映像・漫画・建築の開発スタジオ「C&R Creative Studios」を始動した。このスタジオを核としてコンテンツ開発を推進するため、スタジオのメタバース構想も推進している。また、VR建築展示場「XR EXPO」をオープンした。メタバースを活用して既存の住宅販売モデルの変革を目指す。
22年1月には子会社のVR Japanが医療機関向けVR遠隔同時講義システムを発売した。22年4月にはforGIFTがゲーム3DCG制作技術を活用してアパレル3DCGサンプル開発「sture(ストゥーラ)」を発売した。
■23年2月期も2桁増益・連続増配予想で収益拡大基調
22年2月期連結業績は売上高が21年2月期比12.0%増の417億99百万円、営業利益が39.4%増の34億11百万円、経常利益が37.6%増の34億19百万円、親会社株主帰属当期純利益が35.0%増の22億24百万円だった。配当は21年2月期比4円増配の20円(期末一括)とした。11期連続増配である。
日本クリエイティブ分野の好調が牽引して大幅増益・過去最高益だった。従来予想に対しても上振れて着地した。さらに営業利益は中期経営計画2期目の23年2月期の計画32億円を前倒しで達成した。
日本クリエイティブ分野は売上高が13.1%増の294億44百万円で、営業利益(調整前)が39.6%増の24億78百万円だった。売上面では映像やゲーム関連を中心に伸長し、利益面では第4四半期にTVCMなどの成長投資を実行したが、増収効果やDXによる生産性向上などで吸収した。
韓国クリエイティブ分野は売上高が6.1%増の34億68百万円で営業利益が0百万円(21年2月期は49百万円の損失)だった。TV局への派遣が伸び悩んだが、コンテンツ事業のデジタルコミック(Webtoon)やYouTube関連が伸長した。
医療分野は売上高が12.3%増の44億06百万円で営業利益が20.1%増の8億69百万円だった。医師紹介が好調に推移し、新規事業(クリニック経営支援)投資を吸収した。レジナビFairはコロナ禍の影響でリアル開催をオンライン開催に切り換えて収益化を図った。
会計・法曹分野は売上高が6.2%増の21億09百万円で営業利益が18.3%減の1億18百万円だった。派遣が伸長し、コロナ禍の影響を受けていた紹介も下期に回復基調となった。
その他事業(新規事業)は売上高が12.5%増の23億71百万円で営業利益が32百万円の損失(同1億04百万円の損失)だった。投資段階の事業が多いため全体として営業損失だが、売上面では9社のうち5社が増収、利益面では9社のうち7社の損益が改善した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高105億99百万円で営業利益12億30百万円、第2四半期は売上高104億36百万円で営業利益9億27百万円、第3四半期は売上高102億41百万円で営業利益8億54百万円、第4四半期は売上高105億23百万円で営業利益4億円だった。第4四半期にTVCMなどの成長投資を実行した。また医療分野の収益は上期偏重となる季節特性がある。
23年2月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用で、従来方法に比べて売上高が影響を受けるが、利益への影響は軽微)は、売上高が22年2月期比5.3%増の440億円、営業利益が17.2%増の40億円、経常利益が17.0%増の40億円、親会社株主帰属当期純利益が12.4%増の25億としている。配当予想は22年2月期比3円増配の23円(期末一括)としている。12期連続増配予想となる。
日本クリエイティブ分野の好調が牽引し、新規事業への成長投資を吸収して増収・2桁増益予想としている。グループ子会社の収益拡大も寄与する見込みだ。なお収益認識会計基準適用で売上高が影響を受けるが、この影響を除く従来方法ベースの売上高は22年2月期比10.0%増の460億円となる見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は好業績を評価して上場来高値を更新した。その後は地合い悪化の影響で小幅反落したが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。4月27日の終値は2131円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS112円15銭で算出)は約19倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約1.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS540円83銭で算出)は約3.9倍、時価総額は約490億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)