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ピックルスコーポレーションは売り一巡、23年2月期減益予想だが保守的
- 2022/4/28 09:40
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ピックルスコーポレーション<2925>(東証プライム)は漬物・キムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力向上に伴ってキムチ製品や惣菜製品の売上が拡大し、EC・外食・小売・農業領域への展開も推進している。なお22年9月1日付(予定)で持株会社ピックルスホールディングスを設立し、持株会社が新規上場する。22年2月期は原料野菜価格の安定推移や生産性向上の効果などで増益着地した。23年2月期は収益認識会計基準適用の影響や巣ごもり需要の反動減などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は23年2月期減益予想を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開となった。ただし売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。
■漬物製品の最大手で「ご飯がススム キムチ」ブランド力向上
漬物・キムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力が向上し、キムチ製品や惣菜製品の開発強化と新製品の積極投入、西日本エリアへの販売拡大、量販店惣菜売場・ドラッグストア・配食事業など販売先の拡大、新たな販売チャネルとしてのEC・外食・小売領域への展開を推進している。さらに22年3月には農業事業を開始した。
22年2月期の品目別売上構成比は製品65.8%(浅漬・キムチ41.9%、惣菜22.8%、ふる漬1.1%)および商品(漬物、調味料、その他)34.2%、販路別売上構成比は量販店・問屋等74.5%、コンビニ16.7%、外食・その他8.8%だった。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニが主要取引先である。
収益面の特性としては、天候不順などによる野菜(特に胡瓜と白菜)価格の影響を受ける傾向がある。
■成長戦略として新規事業も推進
22年9月1日付(予定)で、単独株式移転によって持株会社ピックルスホールディングスを設立し、持株会社が新規上場する。現在のピックルスコーポレーションは22年8月30日付(予定)で上場廃止となる。グループ経営の戦略立案機能を強化し、グループ内における経営資源の配分を最適化する。
中期経営目標値(収益認識会計基準適用後)として、25年2月期売上高420億円(浅漬・キムチ176億63百万円、惣菜101億21百万円、ふる漬4億87百万円、商品137億28百万円)、営業利益26億円、経常利益27億30百万円、親会社株主帰属当期純利益18億30百万円を掲げている。設備投資は23年2月期からの3年間で合計60億円を計画している。24年2月期には関東でのキムチ専用工場、25年2月期には関西での工場新築を検討している。
成長戦略として、製品開発の強化(キムチ製品、惣菜、ドライ商品、調味料)、販売エリアの拡大(特に西日本エリアでの販売拡大)、販売先の拡大(ドラッグストア、量販店、配食事業など)、新規事業(ECサイト、ピーネコーポレーション、BtoC事業、農業事業など)を推進している。
製品開発の強化では、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズの新製品、成長分野である惣菜製品の開発に注力する。販売エリアの拡大では全国ネットワークを活かした営業戦略を推進し、特に西日本エリアでの販売拡大に注力する。販売先の拡大では既存分野以外の売場への商品展開を推進する。
新規事業のECサイトについては18年4月に、ピーネ12乳酸菌活用した商品のECサイト「Piene」と、国産・化学調味料不使用にこだわった漬物のECサイト「八幡屋」を開設した。19年4月にはピーネ関連製品を製造する新工場が完成した。さらに22年夏頃を目途に「Piene」と「八幡屋」を統合してECサイトをリニューアル予定である。
またグループ商品を活用してBtoC領域の外食・小売事業に参入し、20年10月に運営子会社OHが、埼玉県飯能市に複合型観光施設として、発酵のテーマパーク「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」を開業した。日本の伝統的な食文化「発酵」を発信していく。
20年9月には地球環境に配慮し、浅漬用に植物由来原料の容器を導入して軽量化と省資源化を図ると発表した。21年1月には浅漬製品のブランドリニューアルを発表した。パッケージデザインを刷新するとともに、包装パッケージに使用するインキを植物性バイオマスインキに順次切り替えて環境負荷低減も推進する。22年2月には「ご飯がススム キムチ」シリーズの「ご飯がススム辛口キムチ」と「ご飯がススムカクテキ」をリニューアル発売し、包装パッケージ印刷に使用するインキも植物性バイオマスインキに切り替えた。
さらに22年3月には子会社ピックルスファームを設立し、埼玉県内で農業事業を開始した。所沢工場向けの小松菜や「OH!!!」向けのさつまいもを生産する。野菜の生産に関わることで安全・安心な原料野菜を継続的に調達するとともに、農業を通じた雇用創出や地域活性化にも貢献することを目指す。
■22年2月期は増益着地、23年2月期は減益予想だが保守的
22年2月期連結業績は、売上高が21年2月期比2.2%減の450億06百万円、営業利益が8.5%増の29億42百万円、経常利益が8.5%増の30億68百万円、親会社株主帰属当期純利益が16.2%増の21億28百万円だった。配当は21年9月1日付株式2分割遡及換算後で21年2月期比2円50銭増配の20円(期末一括)とした。
売上面は惣菜が好調だったが、巣ごもり需要の反動減の影響で前回予想(465億円)を下回り小幅減収だった。品目別売上高は製品が1.3%減の296億31百万円(浅漬・キムチが5.5%減の188億58百万円、惣菜が10.8%増の102億64百万円、ふる漬が36.7%減の5億08百万円)で、商品(漬物、調味料、その他)が3.9%の153億74百万円だった。販路別の売上高は量販店・問屋等が2.6%減の335億30百万円、コンビニが5.5%減の75億36百万円、外食・その他が9.1%増の39億38百万円だった。
ただし利益面は、原料の野菜価格が安定的に推移し、生産アイテムの集約など生産効率向上も寄与して前回予想(営業利益28億50百万円、経常利益29億40百万円、親会社株主帰属当期純利益19億円)を上回る増益で着地した。各利益は過去最高を更新した。売上原価率は1.0ポイント低下した。販管費比率は0.4ポイント上昇した。人件費や物流費が増加した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高120億67百万円で営業利益13億26百万円、第2四半期は売上高123億56百万円で営業利益9億06百万円、第3四半期は売上高104億97百万円で営業利益4億55百万円、第4四半期は売上高100億86百万円で営業利益2億55百万円だった。やや減速の形となった。
23年2月期の連結業績予想は、売上高(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、適用前の22年2月期実績は450億06百万円)が407億円で、営業利益が22年2月期比15.0%減の25億円、経常利益が14.3%減の26億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が17.3%減の17億60百万円としている。配当予想は22年2月期と同額の20円(期末一括)としている。
売上高は巣ごもり需要の反動減や乳酸菌ブームの一巡などを考慮し、収益認識会計基準適用の影響を除くベースでは実質4%減収の見込みとしている。新基準での品目別売上高は製品が273億45百万円(浅漬・キムチが172億83百万円、惣菜が95億75百万円、ふる漬が4億85百万円)で、商品(漬物、調味料、その他)が133億54百万円、販路別の売上高は量販店・問屋等が305億99百万円、コンビニが66億39百万円、外食・その他が34億60百万円の計画としている。
営業利益は減収影響で減益予想としている。原料価格は例年の価格を見込み、売上原価率は22年2月期比4.1ポイント上昇、販管費比率は3.8ポイント低下の計画としている。販管費は会計基準変更で物流費が減少する。
23年2月期は減益予想としているが保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年2月末の株主が対象
株主優待制度は毎年2月末時点の100株(1単元)以上保有株主を対象として、商品詰め合わせセットなど(数種類から1点選択、詳細は会社HP参照)を贈呈する。なお21年9月1日付け株式2分割後も100株(1単元)以上を対象として実施しているため、実質的に株主優待制度の大幅拡充となっている。
■株価は売り一巡
株価(21年9月1日付で株式2分割)は23年2月期減益予想を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開となった。ただし売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。4月27日の終値は1244円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS136円93銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1288円57銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約160億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)