松田産業は調整一巡、23年3月期も収益拡大基調

 松田産業<7456>(東証プライム)は、貴金属・環境・食品分野のソリューション提供企業として貴金属関連事業および食品関連事業を展開し、成長戦略として事業領域拡大やグローバル展開加速などを推進している。22年3月期は需要拡大などで大幅増収増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開

 貴金属・環境・食品分野のソリューション提供企業として、貴金属リサイクル(貴金属事業)や産業廃棄物処理(環境事業)などの貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。21年3月期の売上高構成比は貴金属関連事業が66%、食品関連事業が34%、営業利益構成比は貴金属関連事業が85%、食品関連事業が15%だった。

 貴金属リサイクルは、金・銀・白金族などの貴金属製品やめっき用化成品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属をリサイクルする。粉砕・焼成する前処理工程から、貴金属を分離・抽出する製錬・精製工程までを一貫して行い、得られた高純度の金・銀・プラチナ・パラジウムなどから地金、各種加工品、化成品を製造する。海外はベトナム、タイ、フィリピン、シンガポール、中国・蘇州、マレーシア、台湾に展開している。

 産業廃棄物処理は、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。また太平洋セメントと共同でセメント製造設備を利用した大型リチウムイオン電池リサイクル事業を展開している。

 21年4月には、電池サプライチェーン(電池の材料、部品およびその原料に関わる産業)の健全な発展や国際競争力強化を推進することを目的として新たに設立された一般社団法人電池サプライチェーン協議会に正会員として参加した。設立時点の会員は関連企業約50社である。

 21年5月には子会社のゼロ・ジャパンが低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物の無害化処理に関して環境省の大臣認定を受けた。21年4月には韓国に現地法人の韓国松田産業を設立(21年6月営業開始)した。

 22年3月には、連結子会社の松田資源利用(蘇州)有限公司を解散すると発表した。中国における貴金属関連事業拡大を目的として07年4月に設立したが、現地の許認可制度による取引上の制約などから、今後の持続的な事業拡大が望めないと判断した。現地法令に従った手続きが完了次第、清算結了となる。連結業績に与える影響は軽微である。

 食品関連事業はグローバルネットワークで食材(水産品、畜産品、農産品)の調達・販売を展開し、新たな販売市場の開拓および現地における仕入強化を推進している。海外は中国、タイ、ベトナムに展開し、19年10月には中華民国(台湾)市場において新規展開を開始した。

 収益面では、半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向、貴金属および食品市況の影響を受けやすい特性がある。

■事業領域拡大やグローバル展開を加速

 中期経営計画(19年度~21年度)では目標値、22年3月期売上高2200億円、営業利益55億円、営業利益率2.5%、ROE6.0%を掲げている。

 貴金属関連事業では、基幹事業の基盤強化、資源循環ビジネスをはじめとする顧客価値提案強化と営業体制整備、自動車関連市場・化学関連市場・海外市場の拡大、E-スクラップ・高機能材料・LiBリサイクル等の事業領域拡大を推進する。食品関連事業では、基幹事業の基盤強化、強い商品づくりのための開発・品質保証・生産管理支援機能強化、顧客ニーズに応じた商品ラインナップ拡大、グローバル展開加速を推進する。

 20年11月には固定資産取得(北九州市、土地、21年10月1日引き渡し)を発表している。中長期的な業容拡大に備えて、物流・生産拠点の充実に向けた拠点整備を図る。21年10月には埼玉150周年記念事業キャンペーンの賞品などとして「埼玉150周年記念金箔図書カード」(総数200枚)を贈呈した。

 22年2月には、中長期的な業容拡大に備えて生産・物流機能の充実に向けた拠点整備を図るため、固定資産(土地・建物、埼玉県入間市、取得価額約70億円、物件引渡22年4月)の取得を発表した。取得資金については自己資金および銀行借入を予定している。

 22年4月には、CSR活動推進に向けて、既存のIR部を改称してCSR・IR部とした。また、静岡営業所(金属・環境営業本部静岡営業所、食品事業部名古屋営業所静岡出張所)を設立した。

■22年3月期大幅増収増益予想、23年3月期も収益拡大基調

 22年3月期連結業績予想(収益認識会計基準適用だが利益への影響軽微、21年8月11日に上方修正、21年11月5日に2回目の上方修正)は、売上高が21年3月期比12.3%増の2600億円、営業利益が51.8%増の122億円、経常利益が55.3%増の130億円、親会社株主帰属当期純利益が49.2%増の91億円としている。配当予想(11月5日に第2四半期末1円、期末1円、合計2円上方修正)は、21年3月期比6円増配の44円(第2四半期末22円、期末22円)としている。4期連続増配となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比18.8%増の2036億34百万円、営業利益が66.4%増の104億63百万円、経常利益が76.9%増の112億69百万円、親会社株主帰属四半期純利益が69.0%増の79億円だった。貴金属関連事業、食品関連事業とも好調に推移して大幅増収増益だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が138億76百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ47百万円増加している。利益への影響は軽微である。

 貴金属関連事業は、売上高が29.1%増の1427億94百万円で、セグメント利益(営業利益)が57.4%増の82億86百万円だった。一部の貴金属相場下落の影響を受けたが、主力顧客であるエレクトロニクス業界の生産活動が回復し、貴金属リサイクル取扱量および産業廃棄物処理受託が増加した。金製品・銀製品の販売量も増加した。

 食品関連事業は、売上高が0.0%増の608億96百万円で、利益が2.1倍の21億76百万円だった。顧客ニーズに応えた商品の開拓、調達力を活かした安定供給を推進し、水産品、畜産品、農産品の販売量が増加した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高701億20百万円で営業利益41億89百万円、第2四半期は売上高659億21百万円で営業利益30億80百万円、第3四半期は売上高675億93百万円で営業利益31億94百万円だった。

 通期予想は据え置いている。期後半に向けて、貴金属関連事業における部品不足に伴う主要顧客の一時的減産の影響、白金族など貴金属相場下落の影響、食品関連事業における原燃料価格上昇の影響、サプライチェーン混乱に伴う輸入コスト上昇の影響などを見込んでいる。

 ただし第3四半期累計の進捗率は売上高が78.3%、営業利益が85.8%、経常利益が86.7%、親会社株主帰属当期純利益が86.8%と高水準である。通期予想は3回目の上振れ余地がありそうだ。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末の継続1年以上保有株主が対象

 株主優待制度は毎年3月31日現在、1単元(100株)以上を継続1年以上保有する国内在住株主を対象として株主優待品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化も影響して反発力の鈍い展開だが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。5月9日の終値は2283円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS348円84銭で算出)は約7倍、前期推定配当利回り(会社予想の44円で算出)は約1.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2510円64銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約660億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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