アルコニックスは下値切り上げ、23年3月期も収益拡大基調

 アルコニックス<3036>(東証プライム)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。4月26日には金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品に強みを持つソーデナガノを子会社化(22年11月予定)すると発表した。グループ内のプレス専業子会社と「総合プレス加工グループ」を形成して多種多様な顧客ニーズに対応する。22年3月期は半導体・電子部品関連の需要が高水準に推移して大幅増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響で戻り一服の形となったが、一方では大きく下押す動きは見られず、下値を順調に切り上げている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお5月13日に22年3月期決算発表を予定している。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」

 非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

■製造が利益柱

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 21年3月期のセグメント別構成比は、売上高では商社流通が78%(電子機能材28%、アルミ銅50%)で製造が22%(装置材料12%、金属加工10%)だが、経常利益では商社流通が39%(電子機能材30%、アルミ銅9%)で製造が61%(装置材料6%、金属加工55%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略によって、利益面では製造、特に金属加工が柱に成長している。

■積極投資で「環境親和型ビジネス」の創出にも挑戦

 中期経営計画(22年3月期~24年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、24年3月期の目標値に連結経常利益96億円超、連結純利益67億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0倍程度としている。3年間の投資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円としている。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する。さらに資源循環型・環境配慮型社会の発展に貢献し、新たな「環境親和型ビジネス」の創出にも挑戦するとしている。

 18年12月摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。

 20年3月子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。

 21年12月には、精密コネクタ金属端子部品のプレス加工などを展開する電子部品材料メーカーのジュピター工業(岩手県宮古市)を子会社化すると発表した。株式取得および連結子会社化は22年4月20日予定である。

 また21年12月には投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す。

 22年4月には、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務、経理、総務、労務等の管理業務を集約して行うシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立した。

 また22年4月には、金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化(22年11月予定)すると発表した。EV用バッテリー向けの需要拡大が期待されるほか、グループ内のプレス専業子会社と「総合プレス加工グループ」を形成して多種多様な顧客ニーズに対応する戦略だ。

■22年3月期大幅増益予想、23年3月期も収益拡大基調

 22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用で前期比増減率非掲載だが利益に影響なし、21年8月6日に上方修正、21年11月5日に2回目の上方修正、22年2月9日に利益を3回目の上方修正)は、売上高が1520億円、営業利益が104億円、経常利益が108億円、親会社株主に帰属する当期純利益が78億円としている。また配当予想(21年9月28日に第2四半期末3円、期末3円、合計6円上方修正、22年2月25日に期末4円上方修正)は、21年3月期比10円増配の52円(第2四半期末24円、期末28円)としている。

 第3四半期累計は売上高が1141億76百万円、営業利益が84億30百万円、経常利益が88億05百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が65億37百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価が1118億59百万円減少しているが、利益への影響はない。

 収益認識会計基準適用のため前年同期比増減率は非記載だが、新基準へ組み替え後の前年同期売上高(734億63百万円)との比較で55.4%増収となり、営業利益は2.2倍増益、経常利益は2.1倍増益、親会社株主に帰属する四半期純利益は3.7倍増益だった。半導体・電子材料関連の取扱量が増加し、自動車関連の需要も好調に推移した。営業外収益では受取配当金が増加(前期は2億64百万円計上、今期は4億10百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益2億74百万円を計上し、特別損失では前期計上の関係会社株式売却損7億59百万円が剥落した。

 セグメント別の利益(経常利益)は、商社流通が2.7倍の48億14百万円(電子機能材が2.6倍の31億83百万円、アルミ銅が2.9倍の16億31百万円)で、製造が67.3%増の39億87百万円(装置材料が50.9倍の12億33百万円、金属加工が16.7%増の27億54)だった。

 四半期別に見ると。第1四半期は売上高369億44百万円、営業利益30億46百万円、経常利益34億87百万円、第2四半期は売上高376億28百万円、営業利益は25億75百万円、経常利益25億73百万円、第3四半期は売上高396億04百万円、営業利益28億09百万円、経常利益27億45百万円だった。

 通期予想は新基準へ組み替え後の前期売上高(1056億87百万円)との比較で売上高が43.8%増収となり、営業利益は85.0%増益、経常利益は88.8%増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2.7倍増益となる。セグメント別の利益(経常利益)計画は、商社流通が2.7倍の61億円(電子機能材が2.4倍の40億円、アルミ銅が4.0倍の21億円)、製造が34.6%増の47億円(装置材料が4.2倍の14億円、金属加工が4.4%増の33億円)としている。

 修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高75.1%、営業利益81.1%、経常利益81.5%、親会社株主に帰属する当期純利益83.8%だった。22年3月期は半導体・電子部品関連の需要が高水準に推移して大幅増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値切り上げ

 株価は地合い悪化の影響で戻り一服の形となったが、一方では大きく下押す動きは見られず、下値を順調に切り上げている。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。5月9日の終値は1402円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS259円40銭で算出)は約5倍、前期推定配当利回り(会社予想の52円で算出)は約3.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1709円55銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約434億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る