シナネンホールディングスは23年3月期営業横ばい予想だが保守的

(決算速報)
 シナネンホールディングス<8132>(東証プライム)は5月13日に22年3月期連結業績を発表した。天候要因、電力調達コスト上昇、自転車販売特需反動減、販管費増加などで営業減益だが、販売単価上昇や差益改善などで計画に対して上振れ着地した。23年3月期はIT関連投資推進が減益要因となるが、仕入価格上昇分の販売価格への転嫁やシェアサイクル事業の利益貢献などで吸収して、営業利益横ばい予想としている。保守的な印象が強く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値の重い展開だが、一方では下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。

■22年3月期営業減益だが上振れ、23年3月期営業横ばい予想だが保守的

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、利益への影響は軽微)は、売上高が2893億40百万円、営業利益が24億80百万円、経常利益が32億72百万円、親会社株主帰属当期純利益が24億87百万円だった。配当は21年3月期と同額の75円(期末一括)とした。

 収益認識会計基準適用前の21年3月期との単純比較では、売上高は33.3%増収、営業利益は15.6%減益、経常利益は8.2%増益、親会社株主帰属当期純利益は8.5%減益となる。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が101億37百万円減少、売上原価が101億33百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益がそれぞれ4百万円減少している。利益への影響は軽微である。

 LPガス・灯油販売における天候要因、電力調達コストの上昇、自転車販売特需の反動減、販管費の増加などで営業減益だった。ただし販売単価上昇や差益改善などで計画に対して上振れ着地した。韓国での大型陸上風力発電事業の計画遅れに伴い、想定していた営業外費用の発生が翌期以降にズレ込んだことも寄与した。

 営業外収益では保険返戻金が増加、原油価格等の変動に対するデリバティブ評価益を計上、営業外費用では貸倒引当金繰入額が減少した。特別利益では固定資産売却益が減少したが投資有価証券売却益を計上、特別損失では減損損失やのれん償却額を計上した。

 エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)は売上高が731億52百万円(前期は629億94百万円)で、営業利益が10億39百万円(同9億63百万円)だった。売上面では、春先と晩秋を中心に平均気温が前年と比べて高く推移したためLPガス・灯油の販売数量が減少したが、原油価格高騰に伴って販売単価が大幅に上昇した。利益面では、LPガス仕入価格上昇に伴う販売価格への転嫁が遅れたが、棚卸資産の在庫影響などで増益だった。

 エネルギーソリューション事業(BtoB事業)は売上高が1977億15百万円(同1359億98百万円)で、営業利益が5億73百万円(同8億92百万円)だった。売上面は、BtoC事業と同様に販売単価が大幅に上昇し、販売数量も軽油を中心に増加したが、利益面は電力調達コストの上昇などで減益だった。

 非エネルギー事業・海外事業は売上高が180億97百万円(同177億81百万円)で、営業利益が2億01百万円(同2億43百万円)だった。シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS)は利用回数増加、環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク)は取引高増加、抗菌事業(シナネンゼオミック)は抗菌需要の増加、システム事業(ミノス)は電力自由化に対応した顧客情報システム(電力CIS)の伸長、建物維持管理事業(タカラビルメンなど)は感染消毒清掃の新規受注などで順調だった。自転車事業(シナネンサイクル)の自転車販売は前年の特需の反動減や部品メーカーの供給不足などで低調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高493億59百万円、営業利益4億17百万円、経常利益5億78百万円、第2四半期は売上高511億59百万円、営業利益4億59百万円の赤字、経常利益2億55百万円の赤字、第3四半期は売上高822億01百万円、営業利益6億44百万円、経常利益7億64百万円、第4四半期は売上高1066億21百万円、営業利益18億78百万円、経常利益21億85百万円だった。なおLPガス・灯油販売は冬場が需要期となる。

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比7.1%増の3100億円、営業利益が0.8%増の25億円、経常利益が14.4%減の28億円、親会社株主帰属当期純利益が16.6%増の29億円としている。配当予想は22年3月期と同額の75円(期末一括)としている。

 売上面は現状の原油価格・プロパンCPの水準を前提として増収を見込んでいる。利益面は、経営基盤整備に向けたIT関連投資推進が減益要因となるが、仕入価格上昇分の販売価格への転嫁やシェアサイクル事業の利益貢献などで吸収して、営業利益横ばい予想としている。経常利益はデリバティブ評価益減少などで減益予想、親会社株主帰属当期純利益は固定資産売却益計上で増益予想としている。保守的な印象が強く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は下値固め完了

 株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが、一方では下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。5月18日の終値は3310円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS265円89銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約2.3倍、時価総額は約432億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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