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インフォマートは売られ過ぎ感、22年12月期は先行投資継続、1Q減益だが進捗率順調
- 2022/5/20 08:45
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東証プライム)はBtoBビジネスを革新するリーディングカンパニーを目指し、国内最大級の企業間電子商取引プラットフォームを運営している。アライアンス戦略で5月19日には日本マルチメディア・イクイップメントとのセールスパートナー契約締結を発表した。22年12月期は積極的な先行投資を継続するため減益予想としている。そして第1四半期は減益だった。ただし進捗率は順調だった。販促費や外注費などの発生が期ズレとなったため、各利益は通期予想を超過達成の形となったが、第2四半期以降に解消される見込みとしている。23年10月開始のインボイス制度なども背景としてDXニーズは高水準に推移する見込みであり、先行投資の成果で中期成長を期待したい。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。
■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム
企業間の商行為を電子化するBtoBプラットフォームを運営している。受発注は従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム、規格書は食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール、請求書は請求書発行・受取業務を電子化したシステム、商談は全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト、契約書は契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステムである。
21年12月期の売上構成比はBtoB-PF FOOD事業(受発注、規格書)が71%、BtoB-PF ES事業(商談、請求書、契約書)が29%、営業利益構成比はBtoB-PF FOOD事業が210%、BtoB-PF ES事業が▲110%だった。
飲食店と食材卸・メーカー間のBtoB受発注を主力として、全業界を対象とするBtoB請求書も拡大している。21年6月にはBtoB請求書が公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電子取引ソフト法的要件認証制度第1号認証を取得した。21年7月には全業界向け受発注のBtoB TRADEをリリースした。
■26年12月期営業利益50億円目標
中期業績目標に26年12月期売上高200億円、営業利益50億円を掲げ、成長に向けた積極投資と収益源多角化を推進している。5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。
将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組んでいる。なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年7月には飲食店向け発注予測クラウドサービスのGoalsに出資している。
20年8月には、電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。21年4月には、DX推進プロジェクト「Less is More.Project」を始動し、本プロジェクトの理念に賛同して共に活動する参画企業の募集を開始した。
■アライアンスを積極推進
アライアンス戦略を積極推進している。21年2月には食品卸企業向け受発注・販促サービスのタノムと資本業務提携、21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携した。
21年10月には串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携し、合弁会社Restartz(リスターツ)設立を発表した。外食産業の店舗運営の生産性向上を目指し、共同で店舗運営プラットフォームアプリ(仮称)等を開発する。
21年12月には、BtoBプラットフォーム請求書と三谷産業<8285>のChalaza(カラザ)とのサービス連携を開始、食品関連事業者とフードバンク活動団体をBtoBプラットフォーム商談でつなぐフードバンクコーナーをオープン、請求書処理の業務プロセス改革を目的として鹿児島県奄美市と電子請求書(BtoBプラットフォーム請求書)の実証実験を開始した。
22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。また、大塚商会<4768>とセールスパートナー契約を締結、野村證券とパートナー契約を締結した。5月19日には日本マルチメディア・イクイップメントとのセールスパートナー契約締結を発表している。建設業界におけるバックオフィス業界のDX化を協働で推進する。
■利用企業数は増加基調
売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数の増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調である。21年12月期末時点の全体の利用企業数は67万9684社、事業所数は130万9477事業所となった。21年1月~12月の流通金額は18兆5006億円だった。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
21年12月期末時点の利用企業数の内訳を見ると、BtoB-PF FOOD事業の受発注買い手企業数は20年12月期末比316社増加の3439社、買い手店舗数は6310店舗増加の6万6010店舗、売り手企業数は2652社増加の4万120社となった。規格書の買い手機能は86社増加の892社、卸機能は12社増加の709社、メーカー機能は487社増加の8599社となった。
BtoB-PF ES事業の請求書は有料契約企業数が1192社増加の6528社(受取モデルが678社増加の4192社、発行モデルが514社増加の2336社)で、請求書ログインは15万7488社増加の67万528社となった。契約書ログインは1万3870社増加の2万7296社となった。電子帳簿保存法改正による請求書電子化や「脱ハンコ」による契約書電子化の流れで、請求書と契約書が急増している。商談は142社増加の9043社(買い手企業が138社増加の7615社、売り手企業が4社増加の1428社)となった。
21年11月にはNEC<6701>にBtoBプラットフォーム請求書が採用された。また東京商工リサーチが実施した調査でBtoBプラットフォーム請求書が請求書クラウドサービス市場において国内シェアNO.1を獲得した。22年3月には三井住友フィナンシャルグループ、ワコールにBtoBプラットフォーム請求書が採用された。そしてBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数が70万社を突破した。22年4月にはトヨタファイナンスにBtoBプラットフォーム請求書が採用されたと発表している。大企業での採用も進展している。
■22年12月期は先行投資継続、1Q減益だが進捗率順調
22年12月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが影響なし)は、売上高が21年12月期比11.7%増の109億86百万円、営業利益が90.3%減の1億円、経常利益が96.0%減の41百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が92.0%減の43百万円としている。配当予想は21年12月期比1円25銭減配の18銭(第2四半期末9銭、期末9銭)としている。
セグメント別計画は、BtoB-PF FOOD事業の売上高が8.8%増の76億19百万円でセグメント利益(調整前営業利益)が12.0%減の19億03百万円、そしてBtoB-PF ES事業の売上高が18.8%増の33億67百万円で利益が17億96百万円の赤字(21年12月期は11億37百万円の赤字)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比11.4%増の25億60百万円、営業利益が52.1%減の1億83百万円、経常利益が57.8%減の1億69百万円、親会社株主帰属四半期純利益が61.3%減の1億10百万円だった。利用企業数が順調に増加して2桁増収だが、将来の売上成長に向けて積極的な先行投資を実行し、データセンター費や販促費などが増加したため大幅減益だった。
BtoB-PF FOOD事業は売上高が9.0%増の18億06百万円でセグメント利益(調整前営業利益)が19.1%減の4億89百万円だった。新規契約数の増加でシステム使用料売上が増加した。コロナ禍影響緩和で食材流通額が増加し、売り手企業の従量制システム使用料が増加したことも寄与した。受発注の買い手企業数は21年12月期末末比70社増加の3509社、買い手店舗数は1193店舗増加の6万7203店舗、売り手企業数は453社増加の4万573社となった。
BtoB-PF ES事業は売上高が17.3%増の7億54百万円で利益が3億09百万円の赤字(前年同期は2億21百万円の赤字)だった。受取モデル・発行モデルとも新規有料契約企業数が増加したことに加えて、大手企業を中心に稼働(請求書電子データ化)が進展してシステム使用料売上が増加した。請求書の有料契約企業数は443社増加の6971社(受取モデルが243社増加の4435社、発行モデルが200社増加の2536社)となった。ログイン社数は3万6640社増加して70万7168社となった。契約書の利用企業数は「脱ハンコ」による契約書電子化の流れも背景に4048社増加の3万1344社となった。
通期の連結業績予想は据え置いている。新規契約企業数の増加や食材流通額の回復などで2桁増収だが、売上成長の加速を優先して積極的な先行投資を継続するため、データセンター費、ソフトウェア償却費、人件費、販売促進費などが増加して減益予想としている。そして23年12月期以降の売上成長拡大と利益の再上昇の実現を目指すとしている。
第1四半期の進捗率は売上高が23.3%、営業利益が183.0%、経常利益が410.8%、親会社株主帰属当期純利益が255.9%だった。販促費や外注費などの発生が第2四半期以降に期ズレとなったため、各利益は通期予想を超過達成の形となったが、第2四半期以降に解消される見込みとしている。
外食産業における受発注の電子化、企業における請求書の電子化、23年10月開始のインボイス制度なども背景としてDXニーズは高水準に推移する見込みであり、先行投資の成果で中期成長を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。5月19日の終値は461円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS19銭で算出)は約2426倍、今期予想配当利回り(会社予想の18銭で算出)は約0.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円59銭で算出)は約9.3倍、時価総額は約1196億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)