ジェイテックは調整一巡、23年3月期営業黒字転換予想で収益回復基調

 ジェイテック<2479>(東証グロース)はテクノロジスト派遣の「技術商社」を標榜し、技術職知財リース事業を主力としている。成長戦略として、テクノロジスト700名体制の早期達成に向けた人材採用・教育の強化など、強固な収益基盤の構築を推進している。22年3月期は、前期比ではコロナ禍の影響で営業赤字拡大したが、前回予想に対しては業務効率化なども寄与して上振れ着地した。そして23年3月期はコロナ禍の影響が和らぎ、大幅増収、営業黒字転換、経常・最終大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は地合い悪化も影響して反発力が鈍く小動きだが、調整一巡して出直りを期待したい。

■技術者派遣の「技術職知財リース事業」が主力

 製造業の開発・設計部門に技術者を派遣する「技術職知財リース事業」を主力として、子会社のジェイテックアドバンストテクノロジは一般派遣およびエンジニア派遣事業を展開している。

 専門教育による知識を基盤として、新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的なエンジニアと区別している。そして「技術商社」を標榜し、テクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。

 上場企業および優良中堅企業160社以上と幅広く取引があり、機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発、建築設計の4分野を柱として、業種別にも幅広く展開していることが特徴だ。

 21年3月期の連結ベースの業種別売上高構成比は、自動車関連が18%、産業用機器関連が22%、電子・電気機器関連が10%、半導体・集積回路関連が6%、情報処理関連が13%、建築関連が21%だった。

 21年3月期の売上上位顧客企業は、ヤマハ、デンソーテン、アイシン・ソフトウェア、本田技術研究所、SUBARU、リコージャパン、三菱電機メカトロニクス、ヤマハ発動機、LIXIL、東レエンジニアリングだった。

 積極的な人材採用で、21年4月1日時点のテクノロジスト数は483名(21年3月期末387名、21年4月入社100名)となっている。

■テクノロジスト700名体制の早期達成目指す

 中期経営計画(22年3月期~24年3月期)では、最終年度24年3月期の業績目標値を、売上高43億80百万円、営業利益1億88百万円、経常利益1億69百万円、親会社株主帰属当期純利益99百万円としている。

 新型コロナ影響が22年3月末まで継続すると仮定するが、テクノロジスト需要は底堅く推移すると見込み、テクノロジスト700名体制の早期達成に向けた人材採用・教育を強化し、強固な収益基盤を構築する。さらに新規事業への積極投資やM&Aも推進する方針としている。

 なお、コロナ禍で22年3月期の新卒テクノロジストの稼働開始が後倒しになったため22年3月期目標値を下方修正したが、テクノロジストの教育・研修を重点的に行い、22年3月末時点で以降2ヶ年の計画達成に向けた稼働人員などの必要条件が揃う見込みのため、23年3月期および24年3月期の目標値については据え置いている。

 21年9月には事業拡大と採用強化に向けた北海道地方の拠点として札幌営業所を開設した。21年11月には東海エリアでの採用強化に向けて浜松営業所を移転・増床した。

 また22年1月には新規事業領域として「まなクル事業」を発表した。長年に亘り蓄積した独自の人材育成カリキュラムや最新技術に関するノウハウを基軸として、法人から個人に至るまで「働くこと」「学ぶこと」を支援するサービスである。事業拠点として全国6店舗でスタートし、順次新規店舗を展開する。

 22年4月には、まなクルによるリカレント教育サービスの拡大、埼玉・神奈川エリアの営業・採用強化を目的として、まなクル大袋・埼玉営業所、まなクル井土ヶ谷・横浜営業所を開設した。

■グロース市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月4日に移行した新市場区分に関してはグロース市場を選択し、新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。

 24年3月期までにグロース市場の上場維持基準を充たすことを目指し、主力の技術職知財事業の持続的成長による収益力の向上、持続的な成長に向けた資本政策の実行、IR活動の強化など各種施策の取り組みを推進する。株主還元については、安定的かつ継続的な配当を基本として、配当性向20%の実現を目指すとしている。なお24年3月期までに時価総額基準を充たすことができなかった場合は、目標を新スタンダード市場への市場区分変更に切り替えるとしている。

■22年3月期営業赤字だが上振れ着地、23年3月期営業黒字転換予想

 22年3月期連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年3月期比7.9%増の29億91百万円、営業利益が1億18百万円の赤字(21年3月期は56百万円の赤字)、経常利益が49.2%増の1億17百万円、親会社株主帰属当期純利益が48.9%増の60百万円だった。配当は21年3月期と同額の1円(期末一括)とした。

 前期比では営業赤字拡大した。技術職知財リース事業のテクノロジストへの需要は旺盛だが、コロナ禍の影響で稼働日数・稼働時間が抑制された。特に新卒テクノロジストの稼働開始が当初計画よりも遅れたため人件費負担が発生した。さらに間接部門の人件費増加や新店舗開設に係る費用の発生も影響した。ただし営業外収益に雇用調整助成金収入2億06百万円を計上(前期は1億20百万円計上)して、経常利益と親会社株主帰属当期純利益は大幅増益だった。

 なお前回予想(21年10月29日に下方修正)に対しては売上高が14百万円、営業利益が51百万円、経常利益が71百万円、親会社株主帰属当期純利益が60百万円それぞれ上振れて着地した。売上高は概ね前回予想水準だったが、業務効率化なども寄与して前回予想に比べて営業赤字縮小した。

 セグメント別に見ると、技術職知財リース事業は売上高が9.1%増の29億58百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が17.5%減の2億60百万円、一般派遣およびエンジニア派遣事業は売上高が43.7%減の33百万円で利益が28百万円の赤字(21年3月期は23百万円の赤字)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億01百万円で営業利益が80百万円の赤字、第2四半期は売上高が7億26百万円で営業利益が50百万円の赤字、第3四半期は売上高が7億82百万円で営業利益が20百万円の黒字、第4四半期は売上高が7億82百万円で営業利益が8百万円の赤字だった。

 23年3月期連結業績予想は、売上高が22年3月期比17.0%増の35億円、営業利益が1億40百万円の黒字(22年3月期は1億18百万円の赤字)、経常利益が32.0%増の1億55百万円、親会社株主帰属当期純利益が54.3%増の93百万円としている。配当予想は22年3月期と同額の1円(期末一括)としている。

 コロナ禍の影響が23年3月末まで続くと仮定しているが、22年3月期との比較ではコロナ禍の影響が和らぎ、大幅増収、営業黒字転換、経常・最終大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株価は調整一巡

 2月28日発表の自己株式取得(上限50万株・1億円、取得期間22年3月1日~22年8月31日)については、22年4月28日時点での累計取得株式総数0株となっている。

 株価は地合い悪化も影響して反発力が鈍く小動きだが、調整一巡して出直りを期待したい。5月20日の終値は189円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS11円72銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS117円52銭で算出)は約1.6倍、時価総額は約16億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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