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ゼリア新薬工業は戻り試す、23年3月期も2桁増益で連続増配予想
- 2022/5/30 09:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東証プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。22年3月期は医療用医薬品事業の好調が牽引して前回予想を上回る大幅増益となり、配当を上方修正して増配とした。そして23年3月期も2桁増益で連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお自己株式取得も発表している。株価は小動きだが下値固め完了して徐々に水準を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
22年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業62%、コンシューマーヘルスケア事業38%、その他0%、利益(全社費用等調整前営業利益)構成比は医療用医薬品事業62%、コンシューマーヘルスケア事業36%、その他2%だった。地域別売上比率は日本59%、欧州35%、その他6%だった。
■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども拡大している。20年9月に国内で販売開始した鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクトについては、消化器科・産婦人科を中心に市場構築を推進している。なお20年11月には、アステラス製薬の英国子会社が欧州を中心に販売しているクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)について、欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継する資産譲渡契約を締結した。そして21年6月には欧州テリトリーでの製造販売権承継をほぼ完了した。残る地域についても順次承継予定である。
22年3月期の売上高はアサコールが21年3月期比5.9%増の174億76百万円、ディフィクリアが52億11百万円(21年3月期は2億59百万円)、エントコートが7.0%減の44億80百万円、アコファイドが89.2%増の31億54百万円、その他が0.2%減の66億84百万円だった。エントコートは海外での在庫調整の影響で減少した。アコファイドは単独プロモーションへの切り替え(アステラス製薬<4503>との日本での共同販促を21年3月で終了し、21年4月以降は単独で販促活動)に伴う在庫調整の影響が一巡した。
海外展開については、アサコールは、欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中(21年12月時点でドイツ、フランスをはじめとする19ヶ国で販売中)である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。また21年5月にはMenariniを通じて中国でアサコールの販売を開始した。
アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。
子会社のTillotts Pharma(ティロッツ社、スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。
■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力
コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
なお22年3月期の売上高は、ヘパリーゼ群が21年3月期比17.5%増の77億70百万円(医薬品が18.9%増の43億45百万円、清涼飲料水・栄養補助食品が15.7%増の34億25百万円)で、コンドロイチン群が4.6%減の51億35百万円、ウィズワン群が5.9%減の13億59百万円、その他が12.0%減の81億04百万円だった。コンドロイチン群、ウィズワン群が競合の影響、その他の殺菌消毒薬がコロナ需要の一巡で減少した。
事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。
20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。
西洋ハーブ関連では21年12月に、軽度の静脈還流障害による足のむくみを改善する内服薬「ベルフェミン」(要指導医薬品)を発売した。欧州において下肢の静脈疾患(慢性静脈不全症)の治療に伝統的に使用されてきたセイヨウトチノキ種子の乾燥エキスを主成分としている。また22年3月に過敏性腸症候群(IBS)改善薬「コルペルミン」(要指導医薬品)を発売した。ペパーミントのオイルを有効成分とする医薬品である。ティロッツ社によって開発され、1981年に英国で発売されて以降、スイスやドイツをはじめ十数ヶ国でIBSの諸症状を改善する一般用医薬品として販売されている。国内で実施された過敏性腸症候群患者を対象とした臨床試験において有効性と安全性が確認された。
22年3月には11種類の美容液成分を配合した高機能オールインワンジェル「イオナ スパ&ミネラル エッセンス ジェルEX」を発売した。
22年4月にはOTC点眼薬「ビュークリアHi40アクティブ」(第3類医薬品)を発売した。11種類の有効成分を配合し、年齢・目の乾きによる眼疲労や目のかすみに効果を発揮する。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(22年5月11日現在)は以下の通りである。
潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループ品、アサコール)は、イタリアのMenariniグループの中国現地法人に独占的販売権を供与して、中国で21年5月販売開始した。
Z-338(自社品、アコファイド)は、日本では小児機能性ディスペプシア患者を対象として第3相段階、食道胃接合部通過障害を適応症として第2相(九州大学で医師主導治験)段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。なお導出では、メキシコで機能性ディスペプシアを適応症として承認となり、チリ、コロンビア、ペルー、エクアドル、タイ、インドネシアで、それぞれ導出先が機能性ディスペプシアを適応症として承認申請中である。
高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第3相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。
■アサコールやエントコートの拡大などを推進
収益拡大に向けた重点施策として、医療用医薬品事業ではアサコール高用量製剤の海外販売国拡大、フェインジェクトやエントコートの市場浸透、ティロッツ社の営業体制強化、コンシューマーヘルスケア事業では主力製品に次ぐ製品群の育成、西洋ハーブ剤など特徴ある製品群の市場認知度向上による事業拡大を推進している。
また持続的成長に向けて、消化器領域および既存事業との親和性の高い領域の薬剤導入、M&A、自社製品の海外導出を推進する方針としている。
■22年3月期は大幅増益で増配、23年3月期も2桁増益で連続増配予想
22年3月期の連結業績は収益認識会計基準を遡及適用した前期実績との比較で、売上高が12.8%増の595億32百万円、営業利益が83.2%増の63億66百万円、経常利益が85.0%増の59億35百万円、親会社株主帰属当期純利益が26.0%増の39億61百万円だった。配当は期末1円上方修正して21年3月期比1円増配の35円(第2四半期末17円、期末18円)とした。
医療用医薬品事業が牽引して、前回予想(売上高600億円、営業利益53億円、経常利益52億円、親会社株主帰属当期純利益37億円)を上回る大幅増収増益だった。なお特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期3億75百万円、今期14百万円)し、前期計上の債務取崩益6億81百万円が剥落した。
医療用医薬品事業は売上高が23.6%増の370億06百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が97.7%増の69億11百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤アサコールは国内が薬価改定の影響を受けたが海外が伸長した。欧州主要国での製造販売権を承継したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアや、アステラス製薬との共同販促終了に伴う在庫調整が完了した機能性ディスペプシア治療剤アコファイドも増収に貢献した。炎症性腸疾患(IBD)治療剤エントコートはカナダやスペインなど一部地域における在庫調整の影響を受けた。
コンシューマーヘルスケア事業は売上高が1.2%減の223億70百万円で、利益が14.0%減の40億38百万円だった。ヘパリーゼ群が増収だったが、コンドロイチン群、ウィズワン群が競合品の影響を受け、殺菌消毒薬などの衛生用品がコロナ需要の一巡で減少した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高135億48百万円、営業利益12億51百万円、経常利益20億81百万円、第2四半期は売上高150億58百万円、営業利益14億21百万円、経常利益10億35百万円、第3四半期は売上高164億98百万円、営業利益28億23百万円、経常利益24億97百万円、第4四半期は売上高144億28百万円、営業利益8億71百万円、経常利益3億22百万円だった。
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比10.9%増の660億円、営業利益が10.0%増の70億円、経常利益が17.9%増の70億円、親会社株主帰属当期純利益が41.4%増の56億円としている。配当予想は22年3月期比1円増配の36円(第2四半期末18円、期末18円)としている。連続増配となる。
2桁増収増益予想としている。主力製品が堅調に推移し、研究開発費(4.4%増の50億円)や広告宣伝費(47.7%増の29億円)の増加を吸収する見込みだ。医療用医薬品事業は、国内ではアサコールが薬価改定の影響を受けるが、アコファイドやフェインジェクトの伸長、海外市場ではアサコールとディフィクリアの伸長、エントコートの在庫調整からの回復を見込んでいる。コンシューマーヘルスケア事業は、積極的なプロモーション活動などでヘパリーゼ群やコンドロイチン群の伸長を見込んでいる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈している。なお22年3月末対象から、株主優待品コース内容を変更(旧Dコースのコンドロイチン配合夜間集中美容液を、新Dコースとしてスパ発想のオールインワン化粧品に変更、詳細は会社HP参照)している。
■株価は戻り試す
なお5月11日に自己株式取得を発表した。上限80万株・18億円で、取得期間は22年5月16日~22年11月4日としている。
株価は小動きだが下値固め完了して徐々に水準を切り上げている。週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて基調転換した可能性があり、戻りを試す展開を期待したい。5月27日の終値は1982円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS126円10銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の36円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1236円09銭で算出)は約1.6倍、時価総額は約1053億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)