WOW WORLDは下値固め完了、23年3月期は実質大幅増収増益で連続増配予想

 WOW WORLD<2352>(東証プライム)は、自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズをベースとして企業のCRM運用支援を展開している。なお、単独株式移転で持株会社WOW WORLD GROUPを設立し、持株会社が新規上場予定(22年10月3日予定)である。22年3月期は大幅増収、EBITDA増益で着地した。23年3月期(IFRS任意適用のため前期比増減率非記載)は、実質大幅増収増益で連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く年初来安値圏でモミ合う展開だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。

■持株会社WOW WORLD GROUP設立予定(22年10月)

 旧エイジアが21年7月1日付で商号をWOW WORLD(ワオワールド)に変更した。更なるM&A推進などグループ成長に向けて、単独株式移転の方法によって持株会社WOW WORLD GROUPを設立し、持株会社が新規上場予定(22年10月3日予定、現WOW WORLDは22年9月29日に上場廃止予定)である。

 M&A・アライアンス関連では、18年9月にハモンズからベビー服ECサイト事業「べびちゅ」を譲り受けた。19年11月には暗号資産関連を展開するデジタルアセットマーケッツに出資した。20年10月には国産クラウドCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)のトップベンダーであるコネクティを子会社化した。

 22年5月には、スペースシップが設立(22年7月予定)する新会社ニューストリームに出資して子会社化すると発表した。デジタル・マーケティング支援体制を強化する。また、データ分析サービス開発を展開するデータビークルが実施する第三者割当増資を引き受けて資本業務提携(出資比率9.13%)した。データ利活用支援体制を強化する。

■e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力

 22年3月期のセグメント別構成比(22年3月期からセグメント区分変更、消去・全社費用等調整前)は、売上高がエンタープライズ・ソフトウェア事業67%、デジタル・マーケティング運用支援事業28%、EC事業4%、その他0%、営業利益がエンタープライズ・ソフトウェア事業107%、デジタル・マーケティング運用支援事業▲5%、EC事業▲2%、その他0%だった。

 エンタープライズ・ソフトウェア事業は、マーケティングプラットフォームWEBCASシリーズの開発・販売、および子会社コネクティが展開するエンタプライズCMSのConnecty CMS onDemandの開発・販売である。

 自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズをベースとして企業のCRM運用支援を展開している。WEBCASシリーズは、メール配信システムWEBCAS e-mailを中心とするe-CRMアプリケーションシリーズである。国内メール送信パッケージ市場シェア1位で、導入企業数は22年3月末時点で8000社を突破している。メール配信システムWEBCAS e-mailは、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性を強みとしている。

 22年3月にはメール配信システムWEBCAS e-mailの最新バージョンを発売した。22年5月にはCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)ソリューションの新製品WOW engageを発表(22年夏発売予定)した。

 デジタル・マーケティング運用支援事業は、WEBCASシリーズを活用するためのコンサルティング、Webサイト制作支援・コンサルティング、および子会社コネクティのCMS運用である。

 EC事業はベビー服ECサイト「べびちゅ」を運営している。製品開発を強化するため、ECのマーケティングノウハウを吸収して製品開発のヒントを得る研究的位置付けとして展開している。その他のオーダーメイド開発事業は新規受注を積極的に展開せず、既存の利益率の高い案件のみを継続している。

 21年7月にはベビー服ECサイト「べびちゅ」において、世界125ヶ国に向けて多言語対応の越境ECを開始した。21年10月には、子会社コネクティが開発したCDPサービスのConnecty CDPの販売を開始した。

■クラウドサービスやM&Aで中期成長目指す

 中期経営計画の目標値(21年5月に上方修正)は、最終年度23年3月期の売上高38億円、EBITDA11億円としている。顧客のマーケティング活動に対する横断的なソリューションの提供を目指し、M&Aを積極活用して、クラウドサービスを中心とする既存事業の飛躍的成長、グループシナジーの創出、財務戦略の最適化などを推進する。

 22年3月には従業員のキャリア形成を目的として、新しい働き方「兼業制度」を導入した。従業員の多様な働き方を推進し、さらなる組織の活性化と顧客価値の創造を目指す。また22年4月には一部の部門を対象に、日本全国どこでも居住が可能なフルタイム在宅勤務制度を導入した。

■プライム市場の上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画に基づいて、経営目標の達成に向けて各種施策を着実に進めるとともに、情報開示およびコーポレートガバナンスの充実、株主還元などの取り組みによって企業価値の向上(時価総額の増大)を図る。そして中期経営計画の最終年度となる23年3月期までにプライム市場の上場維持基準適合を目指すとしている。

■23年3月期は実質大幅増収増益で連続増配予想

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年3月期比20.2%増の28億33百万円、EBITDAが4.9%増の5億93百万円、営業利益が11.9%減の3億62百万円、経常利益が14.0%減の3億65百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.1%減の2億13百万円だった。配当は21年3月期比5円増配の30円(期末一括)とした。

 なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が10百万円減少、売上原価が11百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益がそれぞれ0百万円増加している。

 グループ会社における人件費の一時的な増加、コネクティの連結子会社化に伴うのれん償却、ストックオプション発行に伴う償却負担などの影響により、営業・経常・最終減益だが、クラウドサービスWEBCAS SaaSスタンダード版の伸長や、コネクティの新規連結などで13期連続増収となり、EBITDA増益で着地した。なお、カスタマーサクセス関連費用やIFRS準備対応などの一時的コスト影響を除く調整後EBITDAは16.4%増の6億58百万円だった。

 エンタープライズ・ソフトウェア事業の売上高は13.6%増の19億10百万円だった。クラウドサービスWEBCAS SaaSスタンダード版の伸長に加えて、コネクティのCMSも寄与した。売上総利益率は68.6%で4.0ポイント上昇した。前期に発生した大型案件対応に伴う外注費が減少したことも寄与した。

 デジタル・マーケティング運用支援事業の売上高は59.0%増の8億02百万円だった。コネクティのWEB関連が寄与した。売上総利益率は24.1%で8.4ポイント低下した。子会社FUCAがコロナ禍の影響や人件費の増加で減益だった。

 EC事業(子会社ままちゅ)の売上高は28.8%減の1億17百万円だった。コロナ禍でターゲット層の「お出掛け需要」が減少した。売上総利益率は24.1%で8.4ポイント低下した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高6億77百万円、EBITDA1億47百万円、営業利益1億円、第2四半期は売上高7億11百万円、EBITDA1億70百万円、営業利益1億16百万円、第3四半期は売上高7億20百万円、EBITDA1億49百万円、営業利益85百万円、第4四半期は売上高7億25百万円、EBITDA1億27百万円、営業利益61百万円だった。

 23年3月期連結業績予想(IFRS任意適用のため前期比増減率非記載)は、売上高が34億40百万円、EBITDAが7億30百万円、営業利益が5億10百万円、親会社株主所有者帰属当期純利益が3億20百万円としている。配当予想は22年3月期比3円増配の33円(期末一括)としている。連続増配予想となる。

 なお23年3月期から開示セグメント区分を変更し、エンタープライズ・ソフトウェア事業(コミュニケーションプラットフォームがWOWのSaaS・オンプレ、CMS・CGPがコネクティのCMS・CDP)、大規模Web開発事業(コネクティの構築・運用)、コミュニケーション支援・コンサルティング事業(コミュニケーションがWOWのメール運用支援・コンサルティング、子会社FUCA、子会社ニューストリーム、CDPがコネクティのCDP運用・コンサルティング)、その他事業(受託開発、ベビー服EC販売)とする。

 既存事業およびコネクティの伸長に加えて、ニューストリームの新規連結(スペースシップの新設分割会社を子会社化、22年7月予定)も寄与して21.4%増収、23.0%EBITDA増益、40.6%営業増益、49.9%最終増益の実質大幅増収増益予想としている。

 売上面では、主力のエンタープライズ・ソフトウェア事業のコミュニケーションプラットフォームが2桁伸長(22年3月期比14.6%増の19億20百万円、うちWEBCASクラウドが18.7%増の16億04百万円)と好調に推移する。コスト面では、販売体制強化やリブランディングなどの投資費用、減価償却費などが増加するが、増収効果やコネクティの利益率改善などで吸収する見込みだ。

 23年3月期連結業績予想値は、コロナ禍の影響で中期経営計画目標値(21年5月に上方修正、23年3月期売上高38億円、EBITDA11億円)に対して未達の形になるが、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は3月末と9月末の2単元以上保有株主対象

 株主優待制度は、毎年3月31日および9月30日時点の2単元(200株)以上保有株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて株主優待ポイントを進呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 株価は反発力が鈍く年初来安値圏でモミ合う展開だが、3月の年初来安値を割り込むことなく推移して下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。5月27日の終値は1088円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS82円76銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の33円で算出)は約3.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS385円57銭で算出)は約2.8倍、そして時価総額は約44億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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