【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ピックルスコーポレーションは第1四半期営業減益を嫌気した売りが一巡して切り返す動き

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

ピックルスコーポレーション<2925>(JQS)は漬物やキムチ製品の最大手である。第1四半期(3月~5月)は野菜価格高騰の影響で営業減益だったが16年2月期会社予想を据え置いた。株価は戻り高値圏から急反落したが素早く切り返しの動きを強めている。目先的な売りが一巡したようだ。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRなど指標面の割安感は強い。中期成長力を評価する流れに変化はなく5月の上場来高値1411円を目指す展開だろう。

■漬物製品の最大手、主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力向上

漬物・浅漬・キムチなど漬物製品の最大手メーカーである。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニエンスストアが主要取引先であり、ブランド力の向上、新製品の積極投入、成長市場である惣菜製品の強化などを推進している。主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力向上とともに収益力も大幅に高まっている。

事業エリア拡大や供給能力増強に向けた動きも加速し、中・四国エリアでは広島新工場(ピックルスコーポレーション関西)、北海道エリアでは札幌新工場(ピックルスコーポレーション札幌)が稼動している。

15年6月には青果市場を運営する県西中央青果(茨城県古河市)の株式を取得して子会社化した。主要な原材料である国産野菜の調達方法の多様化を図るとともに、国産野菜の産地における生育状況や取引価格動向などの情報収集の強化を図る。

■16年2月期は増収増益予想

15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)68億18百万円、第2四半期(6月~8月)73億04百万円、第3四半期(9月~11月)63億18百万円、第4四半期(12月~2月)63億65百万円、営業利益は第1四半期3億83百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億13百万円、第4四半期1億66百万円だった。原料野菜の価格動向が利益変動要因となりやすい。

また15年2月期の配当性向は17.3%だった。ROEは14年2月期比1.3ポイント低下して7.3%、自己資本比率は同9.4ポイント低下して41.5%だった。

7月3日に発表した今期(16年2月期)第1四半期(3月~5月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.7%増の76億83百万円で、営業利益が同29.8%減の2億69百万円、経常利益が同32.5%減の2億72百万円、そして純利益が同99.4%増の1億59百万円だった。

キムチ製品や惣菜製品の販売が好調に推移して2桁増収だったが、原料産地における日照不足など天候不順の影響で、白菜や胡瓜などの原料野菜の仕入価格が高騰したため営業減益、経常減益だった。経常利益は営業外での持分法投資損益の悪化も影響した。純利益については特別利益での補助金収入計上や、特別損失での減損損失の一巡が寄与して大幅増益だった。

通期の連結業績予想は前回予想(4月15日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.0%増の281億50百万円、営業利益が同14.3%増の12億07百万円、経常利益が同13.2%増の12億43百万円、そして純利益が同39.3%増の7億01百万円としている。配当予想についても前回予想を据え置いて前期と同額の年間15円(期末一括)としている。予想配当性向は10.0%となる。

キムチ製品や惣菜製品のブランド力向上、全国の製造・販売拠点を活用した営業活動、積極的な広告宣伝・販売促進活動、新製品開発・投入や他の食品メーカーとのコラボレーションなどの効果で、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓が一段と進展する。

コスト面では天候不順の影響による原料野菜の価格高騰が利益変動要因となるが、増収効果に加えて、ピックルスコーポレーション札幌の収益性改善、特別損失における固定資産減損損失という一過性要因も一巡して増収増益見込みだ。

通期予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が27.3%、営業利益が22.3%、経常利益が21.9%、純利益が22.7%である。利益進捗率がやや低水準であり、引き続き原料野菜の価格動向に注意が必要だが、第2四半期(6月~8月)以降の挽回が期待される。

さらに、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのリニューアル、積極的な新製品の開発・投入、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓、事業エリア拡大と供給能力増強、契約栽培拡大や6月の県西中央青果の子会社化などによる原料野菜の安定調達、原材料購買方法の見直しなどの戦略を着実に推進している。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は第1四半期の営業減益を嫌気したが素早く切り返し

なお14年11月実施のTOBによる自己株式取得によって、第1位株主の東海漬物の保有割合が27.20%に低下して親会社に該当しないこととなった。親会社の経営戦略の影響を受けずに、当社独自の経営判断で企業価値向上を図ることのできる体制を構築する。

そして15年5月には、第三者割当による自己株式の処分(処分株式数34万2000株、処分価格1329円)を実施した。割当先は武蔵野銀行<8336>、三菱商事フードテック、味の素<2802>など8社で、いずれも長期保有の方針としている。

株価の動きを見ると、7月3日の戻り高値1388円から急反落して9日には1061円まで調整する場面があった。第1四半期の営業減益が嫌気されて全般地合い悪化も影響したようだ。ただしその後は素早く切り返しの動きを強めて22日には1285円まで戻した。目先的な売りが一巡したようだ。中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

7月22日の終値1285円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS149円47銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1394円19銭で算出)は0.9倍近辺である。

日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で長い下ヒゲをつけて切り返した。サポートラインを確認した形だろう。1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRなど指標面の割安感は強い。中期成長力を評価する流れに変化はなく5月の上場来高値1411円を目指す展開だろう。

 

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