アイリッジが年初来の高値を更新、フィンテック事業を展開する子会社フィノバレーと慶応大学発スタートアップとの共同展開に期待強まる

■市民参加型合意形成プラットフォームのLiquitous(リキタス)と提携

 アイリッジ<3917>(東証グロース)は5月31日の後場一段高となり、8%高の892円(69円高)まで上げて2日ぶりに年初来の高値を更新し、大引けも7%高の884円(61円高)と本日の高値圏で取引された。

 同日の日本経済新聞・朝刊が「デジタル地域通貨広がる、りそなHD、大阪地域で発行検討」と題した記事を掲載し、その中でアイリッジの連結子会社でフィンテック事業を展開するフィノバレー(東京・港区)の「MoneyEasy(マネーイージー)」を採り上げたため注目されたほか、同日午前には、フィノバレーが慶応大学発スタートアップの株式会社Liquitous(リキタス、神奈川県横浜市)と2022年5月30日に業務提携を実施したとアイリッジが発表し、さらに買い材料視された。

■デジタル地域通貨✕デジタル民主主義で住民参加型のまちづくりを推進

 本提携を通じ、両社は、フィノバレーのデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」とLiquitousの参加型合意形成プラットフォーム「Liqlid」(リクリッド)を組み合わせ、自治体のDXや住民参加型のまちづくりに向けた提案を行っていく。

 フィノバレーでは、日常的に使われる決済アプリ(地域通貨)というインフラを起点として自治体のDXや持続可能なまちづくりを支援しており、デジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」の導入自治体は現在7地域、決済総額は100億円以上となっている。それらの取り組みの中で、キャッシュレスの普及やコロナ禍における商品券事業といった追い風に頼らず、持続的な地域活性化を実現していくためには、地域への関心や愛着を醸成し、広く住民が関われる仕組みを構築することが重要不可欠と考えている。

 しかし現状では、全国的に投票率の減少が続いており、多くの自治体で、有権者の半分の投票数となっている状況がある(総務省選挙部「目で見る選挙」2022年3月)。行政機関が政令、省令などを制定する際の意見公募の仕組みとして「パブリックコメント」の仕組みもあるが、認知度の低さや、内容や手続きの煩雑さから利用が進んでおらず、デジタル庁のパブリックコメントのサイト「e-Govパブリック・コメント」を見ても、1件も意見が集まっていない案件が多数見られる。

■フィノバレーは地域経済への窓口を、リキタスは地域行政への窓口を

 それに対し近年注目を集めているのが、アイデア投稿や議論、投票のDXを通じて市民の行政参加を促進する「参加型合意形成プラットフォーム」(DPPs)だ。これは、ミーティングや提案、議論、情報発信などの搭載機能を組み合わせることで、アイデア集めから議論の活性化、合意形成までを可能にするプラットフォームで、世界的にはバルセロナやストックホルムなどにおいて、参加型合意形成プラットフォームを活用して市議会の決定過程を可視化したり、市の予算の一部を住民が提案し投票したりする事例が知られている。選挙やパブリックコメントと異なり議論の過程が見えることで、自分が出したアイデアが具体的にどうなったのかが見えやすく、関心や参加意欲を高める効果があるとされている。

 Liquitousは国内の参加型合意形成プラットフォームの草分けとして、現在、埼玉県横瀬町・高知県土佐町・東京都府中市・大阪府河内長野市など複数の自治体で「Liqlid」の実証や事業導入を行っており、フィノバレーが目指す世界観の実現に向けた重要なパートナーになると考えたことから、本提携に至った。今後は、「Liqlid」でのデジタル住民投票に参加してくれたユーザーへ「MoneyEasy」による地域通貨でお礼を送るといった連携も視野に入れ、自治体が抱える諸課題の解決を目指す。(HC)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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