うかいはモミ合い上放れの動き、23年3月期はコロナ禍の影響が和らいで収益回復基調

 うかい<7621>(東証スタンダード)は高級和食・洋食料理店の飲食事業を主力として、物販事業および文化事業も展開している。22年3月期はコロナ禍の影響で厳しい状況が継続したが、影響が想定よりも小さく収まったため前回予想に対して上振れ着地し、21年3月期との比較では赤字縮小した。23年3月期はコロナ禍の影響が和らいで黒字転換予想としている。収益回復基調だろう。株価は小幅レンジでモミ合う形だったが、23年3月期の黒字転換予想も好感してモミ合いから上放れの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。

■高級和食・洋食料理店が主力

 高級和食・洋食料理店の飲食事業を主力として、物販事業(製菓商品製造・販売の「アトリエうかい」の常設店、ECサイトや百貨店催事出店での販売など)および文化事業(箱根ガラスの森美術館)も展開している。飲食事業の22年3月期末時点の店舗数は15店舗(和食が7店舗、洋食が8店舗)である。22年3月には「銀座kappou ukai」をリニューアルオープンした。22年5月には「アトリエうかい高島屋大阪店」をオープンした。

 海外は、17年11月に台湾・高雄市のホテル「シルクスクラブ」内に1号店「うかい亭 高雄」をグランドオープンし、19年1月には台湾・台北市の商業施設「微風南山」内に2号店「ザ・ウカイ・タイペイ」をオープンしている。

 報告セグメント区分は、事業本部(和食事業、洋食事業、物販事業)および文化事業としている。22年3月期の売上高構成比は事業本部が92%(和食部が34%、洋食部が41%、物販事業が17%、その他が1%)で、文化事業が8%だった。収益面では第3四半期の構成比が高い季節特性がある。

■成長に向けた基盤構築のステージ

 経営方針に「日本の食文化の発展に貢献できる企業へ」を掲げ、新たな成長戦略を打ち出した。コロナ禍で大きな影響を受けたため、第1ステージの22年4月~25年3月を中長期成長に向けた基盤構築のステージと位置付けて、人材力強化、収益基盤強化、財務基盤強化に取り組む方針としている。

 人材力強化では、定期採用と中途採用を組み合わせた積極的な人材確保、個々のレベルに合わせた教育・研修の実施と現場のOJTによる機動的かつ柔軟な発想力を兼ね備えた人材の育成、一人ひとりが未来のビジョンを描ける評価制度の再構築、働きやすい職場環境の維持改善を推進する。

 収益基盤強化では、QSCH(クオリティ・サービス・清潔さ・ホスピタリティ)の研鑽による高付加価値化の実現と適正価格の見直し、快適な空間提供のための既存設備の更新、経費のスリム化、ブランドポートフォリオの再構築、収益貢献の高い新たな事業の創出を推進する。

 財務基盤強化では、収益基盤の強化による安定した利益の確保、急激な資金需要や不測の事態に備えた手許流動性確保策の立案・実行、財務基盤強化に資する資金調達手段の検討を推進する。

 財務面では、22年3月に第三者(うかい商事、京王電鉄)割当増資によって約9億99百万円を調達した。またコロナ禍影響が長期化する可能性に備えて、取引金融機関とのコミットメントライン契約を22年4月に締結および更新(合計借入極度額39億円)している。

 なお22年6月24日開催予定の第40回定時株主総会に、資本金および利益準備金の額の減少並びに剰余金処分を付議する。現在生じている繰越利益剰余金の欠損額を補填し、財務内容の健全化を図る。減少する資本金の額の全額をその他資本剰余金に振り替えて、減少後の資本金の額は1億円となる。ただし本件は純資産の部の勘定を振り替えるものであり、純資産の額に変動はない。

■23年3月期はコロナ禍影響が和らいで黒字転換予想、収益回復基調

 22年3月期の業績(非連結、収益認識会計基準適用だが影響軽微)は、売上高が21年3月期比14.5%増の98億15百万円、営業利益が10億83百万円の赤字(21年3月期は11億99百万円の赤字)、経常利益が4億77百万円の赤字(同11億57百万円の赤字)、当期純利益が8億69百万円の赤字(同16億77百万円の赤字)だった。配当は無配とした。

 コロナ禍で厳しい状況が継続しているが、影響が想定よりも小さく収まったため、前回予想(3月9日公表)に対して上振れて着地した。前回予想に対して売上高は1億79百万円、営業利益は1億80百万円、経常利益は2億12百万円、当期純利益は1億91百万円、それぞれ上振れた。

 21年3月期との比較では、本格回復には至っていないが、前年4月~5月に実施した臨時休業の反動増などで2桁増収となり、増収効果や経費削減効果などで営業・経常・最終赤字が縮小した。事業別売上高は事業本部(飲食事業部、物販事業部)が14.5%増の90億70百万円、文化事業(箱根ガラスの森)が14.0%増の7億44百万円だった。なお22年3月期の売上高98億15百万円は、コロナ禍前の19年3月期実績139億12百万円に対して約7割の水準となる。

 営業外収益では助成金収入が増加(21年3月期は63百万円計上、22年3月期は6億17百万円計上)した。特別利益では21年3月期に計上した助成金収入1億75百万円および災害による保険金収入1億23百万円が剥落し、特別損失では21年3月期に計上した臨時休業による損失5億58百万円が剥落した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高20億46百万円、営業利益5億01百万円の赤字、経常利益4億59百万円の赤字、四半期純利益4億63百万円の赤字、第2四半期は売上高が19億78百万円、営業利益5億78百万円の赤字、経常利益1億61百万円の赤字、四半期純利益1億65百万円の赤字、第3四半期は売上高33億28百万円、営業利益2億70百万円の黒字、経常利益3億72百万円の黒字、四半期純利益3億53百万円の黒字、第4四半期は売上高24億63百万円、営業利益2億74百万円の赤字、経常利益2億29百万円の赤字、四半期純利益5億94百万円の赤字だった。

 23年3月期業績(非連結)予想は売上高が22年3月期比34.4%増の131億94百万円、営業利益が5億43百万円の黒字(22年3月期は10億83百万円の赤字)、経常利益が4億92百万円の黒字(同4億77百万円の赤字)、当期純利益が3億05百万円の黒字(同8億69百万円の赤字)としている。配当予想は未定としている。

 コロナ禍の影響が和らいで黒字転換予想としている。前提条件としては、新型コロナウイルス感染症は一定程度の広がりがあるものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによる行動制限を受けないものとして売上高を試算している。コスト面では、人件費につては人員配置の効率化を図りつつ、必要に応じた採用を行うことで微増を見込んでいる。経費全般については、収益に対する変動費の増加を見込むが、これまで実施してきた経費削減を継続するとしている。

 飲食事業の売上高については、来客数の回復はコロナ前水準までは望めないが、段階的な行動緩和により、下期に向けて団体・法人需要が徐々に戻ると想定している。また、品質およびサービス維持を目的として、22年4月からコース料金の見直しを実施する。物販事業については「アトリエうかい」5店舗を維持することで、22年3月期と同水準の売上を確保するとともに、積極的な催事出店によって、さらなる広告・販売促進効果も見込む。文化事業については、団体やインバウンドの来館者数の回復には時間を要するが、個人の来観者数が回復に向かい、お得なスペシャルチケットを閑散期に販売するなどの施策で客単価の上昇を図るとしている。

 速報値ベースの月次売上(前年同月比)を見ると、22年4月(前年の21年4月は20年4月の緊急事態宣言による休業の反動増があった)は全社が124.4%、既存店が122.1%だった。なお参考値として、令和元年台風19号被災(19年10月)およびコロナ禍の影響を受けなかった19年4月との比較で見ると、22年4月は全社が87.0%、既存店が85,2%となる。

 コロナ前の19年3月期との比較では回復途上だが、22年3月期との比較ではコロナ禍の影響が和らいで増収・黒字転換が期待される。収益回復基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末の株主対象

 株主優待制度は毎年9月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じて優待券などを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価はモミ合い上放れの動き

 株価は小幅レンジでモミ合う形だったが、23年3月期の黒字転換予想も好感してモミ合いから上放れの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。5月31日の終値は3075円、今期予想PER(会社予想のEPS54円59銭で算出)は約56倍、前期実績PBR(前期実績のBPS532円23銭で算出)は約5.8倍、時価総額は約172億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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